古典的な和だけ考えた「日本」ではなく、東京や近代、現代を中心に置いた和の「日本」をテーマにコレクションを発表。
デザイナー自身も活動しているアート&パフォーマンスユニット「HETEROPHONY」で行っている個展、空間演出を元に作り上げられた今回のコレクション。会場中心に神社の境内にある樹木をイメージした網目で筒状の物体。空間の神様として神秘的な雰囲気を醸し出す。光を反射する網目にはおみくじのように括り付けられたパステルカラーのリボン。神社の境内にある樹木という古き神様のイメージに近代的な素材をあえて組み合わせる。
水彩画のようにぼやけた色を纏い、人の形をした神様が樹木の周りを流動的に舞い始める。遅いテンポで歩くモデルを後ろから追い抜くモデル、そのモデルたちを決して邪魔することなく舞い続ける神様。空間も時間軸さえもぼやけてくる。
曖昧な色、存在の神様、空間に対して、明確な色、アイテムを纏ったモデルたち。ウエスト部分でおみくじのように縛られたトレンチコート、足元にはエナメルシューズ。袴に似た不完全なチェック柄のセットアップには筆で落書きしたようなパステルカラー。シンプルなアイテムの襟や袖、切り替えの部分は立体的に。所々に現代性を持たせる。一方で、深いスリットが入ったスカート、着物のようにうなじが見える襟ぐりからは和にしかない女性の色気を感じる。
後半からエレキベース、ピアノの生演奏が行われ、神様は舞を激しくする。フィナーレ前には姿を消し、幻であったかのような空気を残す。
無縁そうな和と近代を足し合うことにより、さらに神秘性を増した「日本」を感じる。また、近代を中心に置くことによって、和を客観視でき、改めて和の魅力、美しさに気づかされるコレクション。