Fashion Show

NOZOMI ISHIGURO Haute Couture

テーマは「TABOO」。テーマを裏付けるパウル・ツェランの詩。発表の場に選んだのは、新宿歌舞伎町のキャバレー「ニュージャパン」跡地。

花柄ベルベットのソファが置かれた、高揚感を駆り立てるピンク色に染まる空間。梅津和時氏によるサックスの音が響き渡る中、ジップを施したシワ加工レザー、古本のアメコミのようなパターンテキスタイル、墨でペインティングをしたようなフレアドレスが登場。
ツイードハーフパンツは、バックにフェイクファーをあしらい余裕を持たせることで、スカートのようにも見える。

パンツの裾が大きく広がったヒッピーパンツにフリンジニット、身体を包み込むようなオーバーサイズが印象的な毛足の長いニットジャケットなど、70年代を想起させるボリューム感が目を惹く。
今回ポイントとなったのは、「縫い目を見せる服」。ただ布を重ねたりボロボロにするのではなく、糸調子を狂わせて出来上がったはしご状の縫い目などを、ディテールに落とし込んでいる。調子をそろえることが困難な状態で、いかに美しく作れるかを追求。ラクダ色のファーとウールの変形コートや危なっかしい印象を与える、表面が凹凸のニットボレロ。定規を使用せず、自由曲線から生まれたパターンも取り入れている。

「何ヶ月も不安を感じながら生活をしていて、大切なものが毎日危険にさらされている。その状況から逃げたい。けれど人には事情がある。」デザイナー、石黒氏にとってタブーである”逃げる”こと。自らの現在の心境をそのままコレクションに反映させた。

フィナーレでは、三上寛「夢は夜ひらく」が流れる。ショーで使いたかったが、歌詞の内容により今までタブーとされてきた曲である。配布された缶ビールには、「NOZOMI ISHIGURO haute couture ni yarisuginankanai」と書かれたリボンが結ばれていた。

Photo:Koji Shimamura Text:Tomoka Shimogata

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