「非日常の中にある日常」。広々とした空間に流れるうっすらと靄のかかる馴れない空気。ブラックのセットアップや薄手のレザージャケット、白やグレーのフリンジマフラーなどスタンダードな色合いとクリーンなシルエットを中心に、ブランドのコンセプトである「少年性」を感じる、シャツにショートパンツのルックが多く見られる。ふくらはぎ丈のスリムパンツやゆとりあるストレートパンツ、グレーとホワイトの混色ニットなど装飾を省いたデザインの日常着から想起されるシンプルな生活。
「洋服を作る人も、会社員も、どんな人であれ毎日が日常であり誰にとっても特別な日常はない。」という考えのもと、あえて日常着をランウェイショーで見せることによって、非日常的な印象を持たせた。色々な人と関わる中でみんなが辛いことがあっても「それが日常でしょ」という感覚を服に落とし込んでいる。
スカートのように広がったチェックのショートパンツや後ろ丈の長いカットソー。あくまでもスタンダードなその装いを、「傍観者として見てほしかった」とデザイナーの松井氏。フィナーレでは、アイルランドのバンド”team me”の16-stepという曲になぞり、辺りをぼんやりと染める一筋の真っ青なライトの下、その先から白一色で身を包んだモデルたちが一斉に登場。その瞬間、非日常の世界から目が醒め、何事もなかったように日常に戻ったかのようであった。