Fashion Show

JUN OKAMOTO

JUN OKAMOTOによる初のインスタレーションが渋谷パルコPart-1 公園通り広場で開催された。物語の一場面を切り取ったような作品を展開。映像とモデルのディスプレイでテーマである「3つの手品」を繊細なタッチで表現した。

3つの章に分けられた今回のインスタレーション。1章は好きな女の子のために手品で喜ばせてあげたいと思う男の子の内情を表現。2章はグレングールド好き講じて、実際にグレンチェックを纏ってしまうという回。3章には花束をコートの裏に隠し、実際に手品をするという構成。

この世界観をアイテムにも表現。グレンチェックや、コートの裏地が花柄になっているものなど一連のストーリ性服の中に落とし込む。

また今回の映像を担当したのはアーティストのNao氏。バルーンをスクリーンにして流された今回の映像は甘く、柔らかなハッピーな世界観。

Photo:Yukako Tomita Text:Fumiya Yoshinouchi

[story]

朝のゆっくりとした時間の中、窓の外には雪が降っていた。
ベットに座ったまま、膝を抱え、コーヒーを飲みながら、彼女は雪を見て涙した。

「雪のにおいが嫌い。」

黄色の花に満たされた部屋は、春の匂いで埋め尽くされていた。

僕は雪の匂いを少しでも消すために、もう一度コーヒーを淹れる。

そして僕は、いつものように彼女の好きなグレングールドのレコードをかける。
そして彼女は、いつものようにハミングを始める。

本棚にはグレングールドに関する本やレコードが乱雑に積み上げられていた。

彼女がうちに転がり込んできた時に持ってきたものと言えば、大量のグレングールドの本とレコードだった。

彼女は本棚を見つけると、その前に行き、最初に僕の本やなんかをそっくり取り除き、持ってきた大量の本やレコードを並べはじめた。
僕は驚くというよりも、彼女が大量の本やレコードを乱雑に、けれど美しく重ねていく様子があまりにも見事だったので、とりあえずワインを開けて眺めている事にした。
彼女はようやく並べ終わり、僕のワインを一口飲み、最後に本棚の隅に居心地の悪そうに置いてあった骨のかたちをしたぬいぐるみを犬に渡した。
彼は珍しくそれを受け取り、自分のお気に入りの場所に持って帰った。

「素敵なグレンチェックね。」

彼女はそう僕に話しかけてきた。
僕は少し戸惑ったけど、自分がグレンチェックのガウンを着ていた事を思い出し、お礼を言った。
そして彼女もグレンチェックのワンピースを着ている事に気がついた。
けれど僕は素敵なグレンチェックにではなく、僕の財布の色と同じ真っ青な色をしたワンピースについて褒めた。

「ありがとう。」

そう言って、彼女は足元にいた僕の犬を触りだした。
そのまま彼女は目の前のテラスを指差し、僕らを誘った。

彼女はワインを飲みながら、よく話した。
グレングルードの音楽が好きで、グレンチェックが好きだと言う事について。
僕が少しだけ笑うと
「みんな大抵そうやって笑うのよ、でも本当なんだから仕方ないの。」
そう言いながら犬の頭を撫で続けた。

それが僕らの出会いだった。

カーテンを開け春の暖かい光を浴びる。
(それから暖房をいれる)
グレングールドのレコードに針を落とす。
(ほんとはパソコンを開き、iTunesを開く)
年代物のエスプレッソマシーンでコーヒーを淹れる。
(ほんとはペーパーフィルターをきれいに折り、お湯を注ぐ)
彼女のおでこにそっとキスをする。
(ほんとはドーナツを齧る)

[ 花束・マジック・グレングールド ]
1- トランプをよく切って、相手にいちばん上のカードが何のカードか憶えてもらいます。
2- そのカードをトランプの真ん中にさしこみます。
3- おまじないをかけます。
4- いちばん上をめくると、先ほどみてもらったカードが出てきました。
難易度 : ★☆☆☆☆
僕はそれを眺め、それから種明かしの方も眺める。
そうやって、自分にも出来そうな手品を見つけ出し、透き通った冬の空気のようにピンとした真新しいトランプをカットし始める。
とても注意深く、そして自然に、僕は一連の作業を繰り返す。
「あなたの選んだカードはこれですね?」
僕は彼女の代役の犬に向かってそう言い、一番上のカードをめくる。
犬は出されたカードのにおいを真剣に嗅いでいたが、食べ物じゃないとわかるとどこかへ行った。
そして僕は、クスクスと笑う彼女の事を想像しながら、練習を繰り返し、おまじないの言葉を考える。
           ☆
雪が降り出すと、彼女はいつも涙する。
いつものように、僕はそっとグレングールドのレコードをかける。
彼女は自然とグレンのピアノにあわせてハミングする。
ドアベルが鳴る、ハミングは当たり前のように鳴り止まない。
かわりに僕がドアへと向かう。
雪とピアノに心を奪われていた彼女が、花の香りに気がついて僕を見る。
気がついた彼女に向かい、僕は微笑みかけ、花束を差し出す。
彼女も少しだけ微笑んで、花束を受け取ろうとする。
僕は、
微笑んだまま、
花束をコートの中に隠した。
彼女は少し驚いた。
「ワン・ツー・スリー」
僕はそう言ってコートをめくると、花束は消えて、コートの一部になっていた。
雪はもうやんでいたのに、彼女はまた少しだけ泣いた。
僕はまた彼女に微笑みかけた。
彼女はようやく微笑んだ。

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