1970〜1980年前半に英国で生まれたカウンターカルチャーを表現したジャンル、「パブ・ロック」。その発端となったバンド”ブリンズリー・シュウォーツ”が引き起こした大失敗劇、「Fillmore Hype」をテーマとし、現代の合理化された商業主義に対してのアンチテーゼを表現した。
ドラムの力強いサウンドに打たれながら、ロックを匂わせるコンパクトシルエットのルックが次々と登場。ゴールドのジップがアクセントとなったデニムジャケットや、グレーのハーフパンツとジーンズを組み合わせた切り替えパンツなど、前かんを全て手作業で取り付けた手の込んだアイテム。リーゼントヘアで腕捲りをし、気取った雰囲気を醸し出す。
商業主義へのアンチテーゼの象徴として、使用されたマス見本。生地屋がサンプル生地として作るもので、縦糸と横糸をマスのように色分けするため手間を要する。この生産性のない生地による3ピースは、ベージュを軸にクラシカルでレトロな印象。足首から赤いレオパード柄ソックスを覗かせて、パンキッシュなムードをプラスしている。
ムートンベストやテーラードジャケット。裏地にもパブを連想させるオリジナルプリントを施した。
会場となったロック喫茶「B.Y.G」。”ブリンズリー・シュウォーツ”と時を同じくして1969年に設立されたロックミュージックに根付いた伝説の場所。古きパブを想起させる薄暗い空間に、彼らのパブでのドサまわりライヴが投影される。
モノの本質ではない部分で取り上げられることばかりになった時の、先にある感性の衰退への危惧。逆境の中、自らの行動を貫く人間のひたむきさに思いを馳せたコレクション。