FACTOTUMが2012 A/W collectionを発表した。
アメリカの作家ジャック・ロンドンの小説「火を熾す」からインスピレーションを受け、ホワイトホースを旅したと語るのはデザイナー有働幸司氏。
今回のショーはその旅での経験がふんだんに詰まったコレクションとなっている。
ショー会場は幻想的な空間を演出。ランウェイには雪が積もった後を表現し、壁にはペインティングで描かれた満月とコテージ。自然と人工物をより人工的な手法でメタ化し、ファンタジーの世界まで領域を膨張させた空間デザインが印象的だ。
ショーの始まりと終わりに無音の時間が用意されていた。無音の中最初に登場したのが、星が流動していくさまを撮影した写真をインクジェットでプリントし、ワークなスタイルに落とし込んだルック。
そして音楽がスタートしてからは、同色でトーンを変えたもの、同トーンでカラーを変えたものを中心としたスタイルを提案。特に今回はタートルネックインナー、シャツ、ジャケット、コートといったように幾重にも重ねたヘビーレイヤードを強く提案する。
防寒に重んじた旧来のワークスタイルを現代に落とし込むため、袖丈を短く、またパンツは全て7分丈。素材もインナーには綿100%のものを使用されるのが一般的だが、綿とレーヨンの混紡を使いよりフィット感がでるようにデザイン。レイヤードに適するために計算されたデザインがそこでも読み取る事ができる。
色味はベージュ、グレー、ネイビー、シルバーを基調とし、そこに指し色として赤をさりげなく忍び込ませる。レイヤードが可能にする“さりげなさ”と、“さりげなさ”を作り出すために素材からデザインまでトータルで計算された思考とアイディアが、今コレクションでは一貫して表現されていた。