Fashion Show

Masaya Kushino

ZERO FIRST DESIGNのスタジオ、STUDIO Le.caveにて、Masaya Kushino『Queen』展が行われた。

 これまでは『再生』や『環境』といった社会的なキーワードを靴に落とし込んでいたデザイナーの串野真也氏。今回の『Queen』はこれまでの社会的なテーマとは全く異なり、誰が見ても「かっこよく」、なおかつ「綺麗」といった、より「一般的な靴のデザイン」に近いアプローチで制作された靴を発表した。それぞれの靴は『Queen』の名にふさわしく、各々特徴的な女王のイメージが付けられている。また日本の伝統的技術を使い海外に配信する事を一つのこだわりに上げる串野氏の靴は、和を洋にMIXといったものではなく、洋をベースにしたものに、日本の根源とも言える京都発信の和を取り入れている。

女性が子どもの頃から憧れる、純白のドレス。そして花婿にしか見えないベールの中。靴全体を刺繍やビーズが施されたウェディングのベールで包む。以前から登場していた金色のポニーテールが後部に施され、シチュエーションに合わせてスタイリングをする事で花嫁も表情を変える。
 京都の焼き箔とエイ革、和洋の素材を組み合わして作られた靴。エイ革には黒いイミテーションが施される。またバックのヒールラインには天然石を一つ一つ砕き、研磨してあわせられたものが施されている。和と洋、鉱物と人工物の対比によって作られたこの靴は、固く重厚な印象を与える。
 オーストリッチの黒革で作られ、女王の冠が施された靴。そのヒールの高さから気高さをも感じる。絶対的権力の象徴にして、他の何よりも煌びやかで華麗な姿を求められる女王の冠からインスパイアを受けた、足首部分の輪。そこには、光を反射し歩く度に光り輝く無数のイミテーションが付けられている。
 非常に大きなスワロフスキーが付けられた作品。シルエットからは、他の作品と比べると男性的な力強さを感じる。岩のような表情の革と、いくつもの光を閉じ込める大きなスワロフスキーとの差は男性にも負けない強さを求められながらも、全女性のトップに立つ女王を表している。
 炎のような赤。普段は使わない固いワニ革に、燃えているかのような赤に染毛したものを十字型に施す。歴史的に強さや正義の明かしとして使われてきた十字。女性が身につける事で、かのジャンヌダルクをイメージさせる力強さと気高さを醸し出す。

デザインを考えるうえで足と頭をシンクロさせる。幾つもの作品に繰り返し用いられる「髪」は、普通の髪の毛と同じようにアレンジする事で靴全体から串野氏すら想像もつかない表情が生まれる。
「ハイヒールはそれだけでセクシャリティを醸し出すと思うんです。高ければ高いほど。歩いた時のアンバランスさは女性らしさを表し、また現代ではハイヒールを履く事自体が女性の象徴と特権になっていると思います。」

Photo &Text:Yoshiaki Miyahara


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