ずっとずっと
いろをさがしてきました
ようやく
いろという言葉と意味を
紡ぐことができる人に出会いました
桜の花びらのように薄く半透明の色紙が幾重にも重なる。ガラスの瓶に入ったいろの欠片、1枚のパレットから飛び出したいろの痕跡。春風に吹かれ踊る季節の色が時間を止めたかのように、 色紙の束が宙から吊り下げられている。
「まっしろな むじゅん色」、「月が星をつれて一直線に泳ぐ色」、「夜より ずっと前のよるの色」…。 下駄の音を軽快に鳴らし、生まれたての”いろ”が自己紹介の挨拶をするようにその名を語る。淡く滲み出る桃色や海色、紫陽花色が混ざり合い独特な色を作り出したのは、透明水彩画を表現の媒体とする植田志保氏。彼女の水彩画をプリントしたドレスやシフォンレースブラウス、ドレープドレス。光沢を押さえた上品なサテン地が、プリントの透明度を上げる。
シフォンスカートドレスや、チュールの裏に色紙を仕込んだベージュのワンピース、降り注ぐ六角形の太陽光を受け止めるようにスカート部分に色紙を縫い付けたロングレイヤードドレスなど目に映るその姿は魔法がかけられているようで、一瞬触れるのをためらう夢と現実の境界線に立っているように感じる。
”いろ”を見つけた時すっと染み入る言葉、言葉を見つけた時脳裏をよぎる”いろ”。透き通る純粋無垢な”いろ”が22色誕生した。
Photo:Ayako Masunaga Text:Tomoka Shimogata