「BLOOM -百花譜-」。草花に見る優美な曲線美の象徴、アール・ヌーヴォーとその背景にあるジャポニズム。
真っ白なトレンチコートに淡いベージュ、襟付きパフスリーブドレス、レーススカートなど花の精霊、鳥、昆虫などがたたずむ世界観を映し出す刺繍を中心としたテキスタイル。
植物の葉の繊維が咲き始めるのをイメージした艶やかな手編みニットセットアップ、ペールブルーのシルクサテンドレスなどは水気のある透明感と、生命力が満ちあふれるようなピュアなカラーパレット。アール・ヌーヴォーを代表するアルフォンス・ミュシャや葛飾北斎のディテールを想起させるイラストレーションを手掛けたのは、フリーイラストレーターのKITAJIKO氏。コレクションのために描き下ろしたという植物の精霊を描いた美人画や植物彩画をドレスやパンツ、シフォンブラウスなどに色鮮やかなプリントや刺繍で細密に表現。
身体を包み込む繊細な描写力。「西洋と東洋の中間の融合に試みた」とデザイナーの廣川氏。江戸時代の絵師、伊藤若冲の「老松白鳳図」からインスパイアされたグラフィックや浮世絵に影響を受けた要素を取り込んでいる他、江戸時代の植物図鑑から切り出したようなタッチのパターンを、生地全体の総柄刺繍やケミカルレースとして展開。
オーガンジーのテープカットロングスカートは、足を踏み出す度に光の粒子を輝かせ、やさしくそよ風に揺られる。そっと手を差し伸べてくれるような花々の誘いに、心許すように高まる鼓動と色彩の旋律が同時に奏でる穏やかな空気。
クロード・モネの作品「ラ・ジャポネース」のようなコーディネートを目指し、色や柄のバランスを実験的に図っている。「日本美術は世界一面白いのではないかと思うほど、こんなに日本に興味を持った自分自身もすごく新鮮だったので、まだまだ調べ足りない所を掘り下げてみたいです」と廣川氏。今後いかなる切り口で表現されていくのか期待したい。
Photo:Tomohiro Horiuchi Text:Tomoka Shimogata