セントマーチンズを卒業後、2006年にメンズウェアでデビューを飾ったカナダ人デザイナーのTodd Lynn。贅沢なファーやレザーを織り交ぜたシャープでアンドロジナスなテーラリングを得意とし、そのロックンロールなデザインはU2やThe Rolling Stones、Courtney LoveやP.J. Harveyといったミュージシャン達にも愛用されている。
今回のインスピレーションは、西洋植民地主義を描いたジョゼフ・コンラッドの小説『闇の奥』と、それを原作にコッポラが映画化した『地獄の黙示録』、そしてアフリカの人々や動物の暮らしを描き続けた冒険家兼アーティストのピーター・ビアードの作品群。
動物の鳴き声や小鳥のさえずりなどジャングルを感じさせる効果音から始まったショーでまず登場したのは、ショルダーとポケットが誇張されたグラディエイターのようなサファリスーツ。その後続いた鮮血のようなレッド、イエローやグリーンのパターンは、印画紙を用いることで水性塗料がシルクにプリントされた。終盤のブラックのルックも、シェイプや部分的なボリューム、バックやショルダーのスラッシュにより、ダークなエレガンスを見せた。
神秘的な野生の地の、美しさと恐ろしさが表裏一体で描かれたコレクション。
Photo:Takahito Sasaki Text:Yasuyuki Asano