ブランドの代表的カラーであるブラックを中心としたコレクションから一転、鮮やかでかわいらしいカラーリングが目を引くコレクションを披露した John Rocha。

インスピレーションソースは、フランスのプロヴァンス地方にある Chateau Lacoste という街。 Chateau Lacoste は、豊かな太陽の日差しと温暖な気候から、古くより有名なワインの産地でもあり、また有名アーティストの作品を数多く所有・展示する、アートと建築の総合施設 Arts Center がある事でも知られている街である。
のどかな自然の風景の中に突如表れる Arts Center のモダンなデザインのオブジェや彫刻、無機質で直線的な建物は、自然と人工という異なるテイストによる、独特な「二面性」を生み出した。今回は、この二面性を、カラーリングとデザインに落とし込み、ブランドイメージである「優しさと力強さを併せ持つ女性像」を表現した。

ポイントとなったのは、今までのコレクションと印象をがらりと変えたカラー使い。定番とも言える、ブラックとクリームのカラーパレットに加えたのは、やわらかなプロヴァンスの風に揺れる、自然に咲く花々を想像させる様な、スカーレットやローズピンク、淡いラベンダーにイエロー。さらに爽やかなライトブルーとブライトホワイトといった、明るく優しい印象のもの。黒の存在感が増したコレクション後半は、シルクのシースルーや刺繍をはじめ、レースやレザーなどの素材感を変化させる事で、得意のデザインバリエーションを披露した。
細かく重ねられたフリルやシースルーのデザインをはじめ、レースや刺繍、大きなヘッドピースなど、花のモチーフが多く見られ、ハイウエストからヒップに広がるラインは、まるでワインボトルの様。フェミニンな曲線のラインがメインの中、時おり登場するシャープな直線のラインは、まるで無機質な Arts Center の建物そのものの様なイメージ。

新鮮なカラーリングと、John Rocha ならではの、美しいフォルムへのこだわりが印象的なコレクションだ。

Photo:Takahito Sasaki Text:Yukari Inatomi