イギリスの映画監督であるテリー・ギリアムの「ローズ・イン・タイドランド」からインスパイアされたコレクションのテーマは”Garden”。ドラッグ中毒の両親二人を持つ幼い少女に焦点をあてている。両親のドラッグ注射を手伝ったり、二人が亡くなった後も人気のない田舎で純真無垢に生活していく彼女のイマジネーションの世界を描き出したように、原っぱが突然海に変わったり不思議な住人が登場したりと、現実と非現実の間を往来するような描写に着目している。
ペールグレーやベージュの優しい印象のチェック柄のワンピースやメッシュ編みとの切り替えカーディガン。チェック生地はカジュアルな素材でカントリー調を出すのではなく、薄いマイクロオーガンジーにフラッパープリントを施したハイテク素材を利用している。カジュアルな小花柄のシャツワンピースにチェック生地をレイヤードすることで、コントラストすらもぼやかしている。
クリーンな印象の魚や草、ドクロなど様々な要素を混ぜたプリントショートパンツやエプロンを巻いたようなワンピースは春のような軽やかな印象だが、ベルベットのワンピースや手編みのようなモヘアニットを挟みことで季節感を醸す。
「考えることが少なくなった情報化社会のなかで、考えることや想像力を働かせることがすごく魅力的で、イマジネーションによって現実と非現実のボーダーラインを動かして行くことが出来る女性がたくましく生きているし、繊細だけど弱さではなく、影もありつつぼやかして生きているような女性像に惹かれました。」と岩田氏。
今回French For RabbitsのBrooke Singerに歌ってもらったという音楽は、ショー開始前からエンドレスに流し続けることで、扉に入ったところからファンタジックな世界に入るような演出をしたということもあり、その空間にいることがごく自然なことかのように夢のように時間が流れていた。
Photo:Tomohiro Horiuchi Text:Tomoka Shimogata