昨年はパートナー企業との契約中断により活動休止が囁かれたり、Christian Diorのデザイナー候補に挙げられるなど、ビジネス面でのニュースがファッション界を賑わせたRaf Simons。
財政面が未だ不安視される中今回のショーで発表されたのは、スリムなショーツとオーバーサイズ・テーラリングのトップスにより新しいプロポーションがアプライされたストリート・フューチャーなスクールボーイ達のコレクション、「RUN FALL RUN」。
サイズが合っていない大きめの服を着るということは、成長の余白を残していたり父や兄のワードローブを拝借することから生まれるティーネイジャーの象徴的な行為。またヒップホップスタイルに代表されるように、ストリートファッションの特徴でもある。
今回Raf Simonsはテーラードアイテムにそのようなサイズ感を持ち込み、スリムなショーツと対比させることにより、制約が多くクラシカルな要素が根深いメンズファッションに新しいシルエットを提起。特にブラックやホワイトに加えバーガンディやグリーン、そしてノイズのような小花柄で展開されたドロップショルダーのオーバーサイズシャツは、アウターとして使われたり、他のシャツとレイヤードされるなど新たな役割が与えられた。
ユースカルトなムードを更に強めるのはアイコニックなディティール。襟元から垂らされたカラーヘアがバックスタイルを彩り、足元にはランニングシューズ、そして頭部を包み込む独特のシルエットのキャップは、婦人帽のようにシックでありながらフードを被っているようなストリート感を生む。
そしてブルー、バーガンディ、イエロー、グリーンなどの色使いや風合いのあるテクスチャーが、若さ溢れるコレクションをクリーンに、少しフューチャリスティックに仕上げる。
メンズクラシックにユースカルチャーのレファレンスを持ち込んだスタイルから始まり、未来的なシルエットや新素材への興味、そして近年のサルトリアエレガンスの追求を経て、数シーズン前から再び若者のムードが色濃くなりつつあったRaf Simons。已然トラッドベースの着やすいアイテムが好まれるメンズファッションシーンにおいて、テーラード技術を用いた新しいシルエットをユースカルトなエナジーで提案した今回のコレクションは、彼のメンズファッションの可能性を広げるファッションフォワードな姿勢を力強く示した。