TOPSHOPとの2回にわたるコラボレーションや間もなく公開されるVersus Versaceのカプセルコレクションなど、活動の場を広げますま注目が集まっているJ.W. Anderson。独自のミニマリズムに基づいた詩的なムードに加え、近年は男女の境界線を曖昧にするワードローブが彼のシグネチャースタイルとなっている。
過去最もフェミニンであった前回のコレクションから更なる進化を遂げ、究極的に女性のワードローブを取り入れた今回のコレクション、「Mathematics of Love」。ブルジョアの変態性と貴婦人の強情をテーマに、人間の内なる欲望をワードローブを通して肉体に投射した。
端正な男性達が身に纏うのは、随所にラッフルが施されたトップスとキュロット、そして乗馬ブーツ。前シーズンのウィメンズやプレフォールをベースにしながらも、各アイテムは更にフェミニンな仕上がりを見せる。
それらのルックはメイド服や制服をも想起させ、一見女装やコスプレのようなインパクトを持ちながらも、コレクションが進むにつれて徐々に感じられたのが、マスキュリンな要素も取り入れながら新しい男性のプロポーションを追求する姿勢。ワンピースのように着こなされているピンストライプのチェスターフィールドに、ボディコンシャスなニットウェア類、そしてチューブトップはポケットにより極めて男性的な腕のポジショニングを生む。
メンズファッションへの大胆な提案から人々の思考を呼び起こす、J.W.Andersonのひとつの到達点とも言えるコレクション。
Photo:Takahito Sasaki Text:Yasuyuki Asano