3度目のMAN選出となったAstrid Andersen。注目を集めた3年前のロイヤルカレッジオブアート卒業ショーからシーズンごとにその美学は研ぎ澄まされ、独自のスポーツラグジュリースタイルを確立してきた。
今まで一貫して打ち出してきた男性の力強さから更に深く歩を進め、前回のコレクションでは強固な肉体に潜む繊細な精神世界を表現したAstrid。そして今回のテーマとなったのは、ボディビルダーの孤独。短距離には時間、重量挙げにはウエイトという挑戦の対象が存在するのに対し、ボディビルダーにあるのはただ自らを映す鏡のみ。鍛え上げられた美しき肉体の強さと、鏡で自分を見続ける繊細さのコントラストから見いだした、エクストリームなスポーツの空虚。
ゆっくりと何かを確かめるように登場した2体のファーストルックは、強さのゴールドと繊細なラベンダーパープル。このカラーコンビネーションと、ブリンブリンとフローラルを組み合わせたプリントが今回のテーマを象徴する。
初挑戦となったニットアイテムに加え、シルクや高級ナイロン、そしてミンクやフォックスのファーといったラグジュリーな素材をスポーツウェアに落とし込むスタイルは今回も健在。ヒップホップ色の強いデニムを多く取り入れながらも、縦長シルエットの絶妙なサイズ感とレイヤードを駆使して、従来のオーバーサイジングとは異なる洗練を見せた。
Photo:Takahito Sasaki Text:Yasuyuki Asano