アルゼンチン、ブエノスアイレス出身のAitor Throupは、2006年に見せたロイヤルカレッジオブアートの卒業コレクション、『When Football Hooligans Became Hindu Gods』で瞬く間に注目を浴びることとなった。イラストレーションは独特のタッチを見せ、Stone IslandやCP Companyでもプロジェクトの携わり、また人気バンドKasabianのアートディレクションも手がけるなど活動は多岐に渡り、2010年ワールドカップのイングランド代表のユニフォームを手がけたのも彼である。
前回のLCMで開催されたプレビュー、デザインマニフェストのアナウンスメント(http://changefashion.net/fashionshow/2012/07/24192422.html)から半年、約6年の歳月を経て初のフルレディトゥウェアコレクション「New Object Research」を発表した。
キングスクロスのギャラリーで開催されたプレゼンテーションは、KasabianのSergio PizzornoのライブミュージックをBGMに、Aitorを象徴する黒のマネキンやスカルが至るところに吊るされている異様な空間。
じっくりと各ルックを観察できる展示方法でありながら、それぞれ異なるコンセプトから生まれた各ルックは、凝視してもわからないほど複雑な構造を持つ。
例えばミュージシャンのプロテクションを表現したルックは、アーマーのようなスカーフがトランペットケースに変型でき、またタイが楽器を取り付けるストラップになっている。またヘリンボーンウールのロングコートは、ウエスト周辺のパネリングが乗馬をする際のサドルになり、フードがヘルメットの役目を果たす。
他にもメッシュとウォータープルーフ素材の二重構造になったミリタリージャケット、各部に施されたホールからコードでインナーと連結できるデニムジャケット、そして足の裏まで覆う足袋のような形状をしながらも折り返して実際に着用できるパンツなど、全てのデザインやデザインの構成要素には理由(機能性やコンセプトなど)があるべきという哲学に基づいたピースが並ぶ。
難解なパズルのように複雑な仕組みを持ちながらも、一見にしてその革新性を感じさせるオーラを放つそれらのピースは、実際に着用してその謎を解きたいという男性の思いを掻き立てる。
なお、彼のシグネチャーアイテムである小型のスカルバッグ(SHIVA SKULL BAG)は、DSM LONDON、DSM GINZA、Atelier NY、I.T HONGKONGなどで既に先行発売されている。
Photo:Yukari Inatomi Text:Yasuyuki Asano