2011年12月10日11日に東京大学総合研究博物館小石川分館にて東京大学服飾団体fabによるショウが行われた。
東京大学服飾団体fabは、ファッションやデザインに関心を持つ東京大学の学生を中心に他10校からメンバーが集まり組織された団体。近年は、東京大学総合博物館と協働し、同館長西野嘉章の掲げる「モード&サイエンス」という新しい概念に依り、特任教授・デザイナー滝沢直己の指導のもと、服飾作品制作とファッション・イヴェントの開催に向け、クリエイションの更なる追求を試みている。
今回のコンセプトはvia1.43。数字は人の眼の水晶体の屈折率を示し、viaとはそれを経由するという意。水晶体を経由して、3次元情報をもつ光は網膜に投影されると2次元に圧縮され、脳内で3次元に再現される。視覚と認識の差異。視覚の偏差をテーマに掲げることで、われわれが普段何気なく行なっている「見る」という行為について考えるコンセプトだ。
演出ではグラフィックや映像も丁寧に準備され、また東京大学総合研究博物館小石川分館というレトロな博物館の情緒溢れる空間がショーを盛り上げる。トリムマークを描いたグラフィックヴィジュアルは普段捨ててしまう無駄なトリムマークの外に眼を向けて視点のずれや差異を感じてほしいという想いが詰まる。
ショーピースは全部で23体。上記のコンセプトを元にそれぞれ独自のテーマを設け、様々な素材を使ったアイテムを披露した。
慶應義塾大学在学中のT.Sorita氏はレディメイドをテーマにファストファッションで買ったというカーディガンを値札付きのままで使用。またロールされた状態の生地や、綿花を使ったアイテムを披露した。
東京大学在学中のSaya Koyama氏はモダニズム絵画からインスピレーションロジックを展開。遠近法という手法を崩した2次元的手法キュビズム。そこからジャクソン・ポロックの焦点の合わない「オール・オーヴァー」な絵画へと派生させ、ペインティングで抽象的でフラットな模様をワンピースドレスで表現している。
東京藝術大学在学中のSAYO TOMIKAWA氏はプリズム仕様で幾何学デザインが特徴のアイテムを発表。プリズムを通してみると皮膚の視覚情報は異なり、視覚レベルでは見慣れた皮膚はそこには存在しない。視覚と認識の差異という本コンセプトとリンクさせたテーマで洋服をデザインしている。
Amazing・School・JURに所属するizumi ohtsuka氏は普段特殊メイクの製作を手がけているということを活かし、石膏の型にニットなどの模様を付け、液体ゴムを流し込み、ワンピースを作り上げた。縫製を一切しておらずゴム素材独自の張りと弾力ある動きが身体と相まって不思議な作用を齎す。
東京大学在学中のYoshiyuki Ohmori氏は靴を除く全ての衣服を体が支えるのではなく、服が支えることができるようにデザイン。身体と衣服の間に空間ができ、自立する衣服は従来の概念からコペルニクス的転回を図る。また線と面の関係性に着目したアイテムも披露。連続する線は1つの面と認識してしまうという視覚のトリックを服で表現した。