過去数年サブカルチャーとファッションのコラボレーションにより女性的な男性を描き出してきたMIKIO SAKABE。蛍光やパステルの鮮やかなカラーリング、レース、リボンといったこれまで女の子の象徴とされたモチーフを男性モデルが身につけている。
強く印象に残るそのスタイルにはどんな考えが根付いているのか、またそこから見えてくる先にある時代の姿とは何か。これまでのコレクションを振り返りながら次世代のファッションについて伺った。
→MIKIO SAKABE 2013 S/S Collection
→MIKIO SAKABE 2013 S/S Collection Backstage Photos
―10月のショーではバンドじゃないもん!とのコラボレーションで行われました。コラボレーションに至った経緯を教えていただけますか?
衣装制作の話が(所属している)PR会社を通じてあったと思うのですが彼女達のポジショニングが面白いなと。アイドルなのかよくわからない感じなのにアイドルって言ってるところやバンドじゃないもん!という名前にしているからバンドじゃない、なんだかよくわからないジャンルレスな感じが面白いと思いました。
ただあのショーを彼女達とやる必要性があったのかと考えたら正直わかりません。根本にあったのは前シーズンの引き続きですので男性の女性性を見せるということ。女性を中心にした男性像だから今っぽい女性像が誰だろうかと思ったらバンドじゃないもん!があてはまるのかなと。楽しそうに歌っているし、論理的ではない女性観があったからそれを中心に男性像を作ればそれを取り巻く(男性だけど女性性を持っている)バンドじゃないもん!はいけるのかなと。アイドルなのか、バンドなのかどっちなのかよくわからない感じが今回のコレクションにはちょうどよかったんです。
―2012-13A/Wからメンズモデルで見せています。メンズでコレクションを提案しているのはなぜなのでしょうか?
ここ最近自分の中でメンズにはまっているからです。
―メンズをデザインすることによって何かレディースの頃と変化はありますか?
メンズをデザインすることによって逆にデザインが少し可愛くなっています。レディースをデザインしていた頃のほうがクールなものをデザインしていました。
それはイメージする男性像とイメージする女性像の差です。
―MIKIO SAKABEがイメージする男性像は可愛い男性ということでしょうか?
女性性を持った男性ということです。次世代を考えると男性が女性化していくことは間違いありません。
近い将来おそらく今よりかは東洋文明が中心になっていくと思います。(今までの)西洋文明から東洋文明に変わることによって何が一番が変わるかといえばただ単に経済の中心地ということではなく価値観もともに変わると思います。そして宗教です。キリスト教や仏教、神道など。宗教観はどの国にとってもその国の価値基準に大きく影響しています。西洋文明のキリスト教というところから東洋に変わっていく。キリスト教や西洋文明はよく言われていますが男性的思想でした。論理的だしいろいろ思考で重ねて考えていく。一方の東洋文明はもちろん一概には言えませんがかなり感覚的、感情的、「意味がよくわからないけどいいじゃん」みたいなもの。
そうなったときに男性のポジションを考えたら、そんなに男性的な、論理的な人よりももっと感覚的な男性像があってもよいのではないかというのを前回(2012-13A/W)のコレクションから提案しています。
自分自身の興味の対象という点でいえば自分自身森ガールやフェアリー系の洋服には今まではあまり興味がありませんでした。でもメンズを作るようになってからメンズとして考えたらそこら辺の洋服が凄く面白いと感じ急に興味を持ち始めました。そういったイメージをそのまま女の子にしたらつまらない、でもそれがメンズとして考えたら面白いと思ったんです。だから前回は女装に近い話でした。今回は森ガールの男性版みたいなものを徐々に入れています。コレクションにもMIKIO SAKABEの服だけでなくthe Virgin Mary(http://the-virgin-mary.com/)に協力してもらいスタイリングで使わせてもらっています。そういう要素をあえて男性に取り入れたかったんです。
―例えばどういう服をスタイリングで使用されたのですか?
ネグリジェみたいなものが混ざっているのですがそれは全てthe Virgin Maryのものです。今回のコレクションにはMIKIO SAKABE以外の服もかなり混ざっています。the Virgin Maryの男性版みたいな服を作ってみたかったんです。そこにすごく興味があった。でもあくまで男性服としての提案です。
―色合いも通常の色味より凄く女性的に感じました
色味も凄く意識しました。妖精っぽくしたかったので男性モデルのすね毛まで縫っていますし。妖精のすね毛の色が黒だと嫌だったんで。
―全体的に前回よりさらに女性的な服に感じました。
それはそうだと思います。ただ前回はセーラー服を出したからそれが象徴的なアイテムとして残ったと思います。今回はそういった象徴的なもので押すのではなく色合いとかで魅せることを考えました。そういう男性像には興味ありやっていると面白いのですがもう一度それをやろうか悩んでいます。
―レディースでコレクションを提案している頃は男性のファンも多く、実際に着ている方は男性の方が多いように感じました。ここ2シーズン提案している洋服はメンズで見せていますが街では女性の方が落とし込みやすいのかなと感じました。実際コレクションを購入される方はどちらの方が多いのでしょうか?
確実なことはわかりませんがメンズでコレクションを発表するようになってからは逆に女性のファンが増えたと思います。そこは本当に面白くて今の若い子達にはそれが起こるんです。東京コレクションでショーを発表しているブランドの中にもイメージ作り(ショー発表)はレディースでして、実売はメンズで売っているブランドもあります。今の若い女の子に洋服を売るには逆に男性像を作っていくことが必要なのではないかと感じています。女の子がモデルであるよりも男性がモデルのほうがよりリアルなものとして着たいとなるのではないかと。
―男性服をデザインしながらも女性が着れる男性服をイメージしてデザインしている部分もあるのでしょうか?
それはそうですね。基本的には男性も女性も着れる服を考えています。そうでなければただのメンズ服になってしまう。そこに女性性が入っていないといけないと思っています。メンズ服の要素はあるけど女の子も着れるほうがいい。凄く大きい捉え方で言うとユニセックスという考え方でも構いません。
―先程前回のコレクションの象徴的なアイテムとしてセーラー服があったとおっしゃいましたが、それと同時にメンズコレクションを提案するにあたりここ2シーズンニットのアイテムも力を入れているように感じます。
コレクションで強く見せてきたのもあるのですがMIKIO SAKABEと言えばTシャツとトレーナーというイメージが少し定着しすぎていた感じがしていて自分の中でこれはいけないなと思ったんです。勿論そういったイメージが定着することによって店側も提案がしやすくなった、それ以降売り上げも一気に伸びたのですがそういうアイテムばかりがデザイナーとしてピックアップされ続けるのはどうなんだろうと。だから前回はそういうアイテムをほとんど作らなかった。それだけではなく新しいものを提案できるようにと考えて力を入れてデザインしたのがニットでした。女性的な男性服という意味でもニットというものに興味を持ったんです。