“ファッション業界はまた伸びると思っています。ファッションは非論理的なところの構成要素がほかの分野に比べて多い、だからこそその部分が伸びると思います”
―でんぱ組 .incや最前ゼロゼロ、Chim↑Pom、今回のバンドじゃないもん!と過去数年何度も異業種とのコラボレーションをファッションで提案してきました。MIKIO SAKABEといえばそういったイメージも強いと思いますがそういった部分についてはどう考えているのでしょうか?
過去数年にわたりサブカルチャーとファッションで魅せることをやってきました。でも正直サブカルチャーでファッションを魅せることにある種の限界も感じます。今のやり方だけではファッションとしての新鮮味を感じられなくなってきています。サブカルチャーを取り入れると本質にかすることは出来ますが深くまで行き着けない部分もあります。
次はもっと精神的なものになってくると思います。今の時代何とコラボしても当たり前になってきていますし、同じものとしてしか捉えられません。だからサブカルと組んで何かを発表するというやり方はもういいかなと思っています。
だからこそ洋服だけで見せたい。でももっと本質的なものを作りたいと思っています。
―そう聞くと次回のコレクションでは大分イメージを変えるのかと感じてしまいますが。
でもこの女性的な男性を続けたい気持ちもあります。そこを続けつつ本質的なことをやったほうがいいか、ガラッと変えたほうがいいかで今悩んでいます。
―最初はMIKIO SAKABEがあってのJenny Faxのようにも見えましたが、過去2シーズンくらいでブランドとしての知名度もイメージも浸透してきたと感じます。Jenny Faxのイメージが確立されてきたことによってMIKIO SAKABEに何か変化はあるのでしょうか?
Jenny Faxはガーリーな女性像を提案しているのでそこの差別化でのMIKIO SAKABEという意味合いはあります。自分はデザインには関わっていませんがショーのディレクションや方向性には関わったりしますので以前より忙しくなりました。Jenny Faxはジェンファンにしかできないデザインですし、Jenny Faxの良さは男性にはわからない何かがあります。男受けより女性受けのほうが全然良いんです。
ただデザインの面で何か変化があったのか、そこでは自分では特に何も感じていません。
―先程も少し話をしてもらいましたが今後ファッション業界はどう変わっていくと思いますか?
ファッション業界はまた伸びると思っています。
ファッションは非論理的なところの構成要素がほかの分野に比べて多い、だからこそその部分が伸びると思います。思考が東洋になっていくということは西洋文明のあまりにも論理的なところに対して人は飽きてきているということなんです。
―具体的にファッションのどこのマーケットが伸びていくと感じているのでしょうか?
ハイファッションの部分です。でもヨーロッパとは違う形のハイファッション、アジア独自のハイファッションが確立されていく。ハイファッションが日本だけではなくアジアを中心に伸びていくと思います。勿論それを消費するマーケットもアジアですし、ゆくゆくはインドも含め、アジアでしかない価値が絶対に生まれるはずです。その価値が生まれてからのハイモードがまた出来ていく。
ヨーロッパのヒエラルキーから来るハイファッションは10年後には存在感は変わっていると思います。
―2030年と考えると坂部さんも50歳を超えています。ファッションは移り変わりが激しく10年以上続くブランドも多くありません。その頃までMIKIO SAKABEというブランドを続けるイメージはできていますか?
もちろん続けていると思います。
今の50代が経験してきた時代とは違うと感じています。今の50代はバブルの時代を経験してきている。価値観が僕らとは違います。
僕らのように2000年代後半以降に出てきて自分の資本でブランドをやっていたらそんなに簡単には消えないと思います。資本が自分の分だけ以前よりは続けられるかなと思います。その分最初は難しいとは思いますが。ただ続けることも自分次第ですので。今はデザイナー自身も経営者にならないといけないですし求められる役割が全然違うと思っています。
これからは価値の構造も変わっていきますし、もうすでに変わってきている。昔より会話が抽象的になってきている。
アートはコンセプチュアルすぎるし、究極的に西洋な発想だからそれほど変化はないかと思いますがファッションの価値自体も変わっていきます。
―そういった時代性を読んでファッションで落とし込んでいるブランドはありますか?
MIKIOSAKABEです。そういった時代性は常に考えながらデザインをしています。
これからは女性中心の世界になっていくと思っています。それは人類が始まってから一度も行われなかったことです。男性社会から女性社会になっていく。
―それを先にMIKIO SAKABEで提案していくと。
そうですね。非論理的な社会をコレクションに落とし込んでいこうと。
―今後もファッションショーは続けていくのでしょうか?
そうだと思います。
ショーをやるところの面白いところって意外とどんなショーをやっても好きな人がいるんですよ。結局自分達が思っている以上にショーというもののパワーは落ちていない。費用対効果を考えたらそれは勿論意味がないとなってしまう。でも今の時代にしか提案できないことがあるし、それをショーでしかできないこともある。だからこそショーは魅力的だと思っています。そういうものを今後もショーで提案していけたらと思っています。