Interview

Shaun Samson 2/4

2、『何かに適合しようとするけれど、まだ成長過程で、自らを見失って迷っている。だからこそタトゥーやピアスをするんだ。』

→Interview with Shaun Samson 1/4

—次に、デザインする過程について。いつもどこからコレクションが始まって、どのようなプロセスでデザインを進めていくの?

まず、異なるファブリックの実験から始めるんだ。素材でまだやったことのないことを探求する。
例えばメキシカンブランケットのコレクション(SS12)では、あの素材は今まで使った事がなかったし、僕はカラフルなタイプではなかったから、あのような鮮やかなカラーの使い方はしたことがなかった。だからあのカラフルなブランケットは実験だったんだ。
そのあとのAW12コレクションでは、ああいうアクリルやファーの使い方が実験だった。
今回のSS13では、テクニックももう一度模索して、よりウェアラブルにしようと思ったんだ。
僕のスタイルは、カジュアルで、わかりやすくて、スポーツシャツやチュニックとかのトップスによいパンツ、みたいなところにアティテュードがある。だからこそ、ファブリックやテクスチャーを毎回模索するんだ。

—ではその最新コレクションのSS13について。僕もショーンのコレクションはどれも大好きなんだけど、特に今回は個人的に今までで一番好きなんだ。MA後の2つのコレクション(SS12&AW12)で描かれていたのは、強くて、タフな少年像だったと思うんだけど、、、

強いというより、荒っぽい感じかな。

—そう荒っぽい感じ。でもSS13では、今までの荒っぽさではなくて、もっと少年達の繊細な側面を描いているように感じたんだけど、それで合ってる?

そう、僕はいつも逆の事をしたくなるんだ。SS12ではメキシカンブランケットでカラフルにしたから、AW12ではダークに、ハードでマスキュリンに。だから今回はその逆でソフトに仕上がったんだ。前回のコレクションからのレスポンス、っていう感じ。

—今回のコレクションでテーマになっているのは、少年の「成長」についてで、その少年像は今までより少し大人で、実際にサイズ感も少しフィット気味になっているね。

前回のAW12はアーバンストリートキッズをレファレンスしていて、すごくオーバーサイズで、シルエットも誇張されていて。
まだ2、3回しかコレクションをしていないけど、人々は今、僕がどんなデザイナーか、どんな人に向けてデザインをしているのか判断しようとしていると思うんだ。
そこで、このSS13のコレクション。今回は成長していく、物事を知っていくっていうことをテーマにしていて、今までのコレクションとは全く違うけれど、これもShaun Samsonなんだ。
例えば、今回のTシャツは今までと同じシルエットも使っているのだけど、ファブリックが違うから、見た目は全然違って見えるんだ。

—初のウィメンズルックもあったと思うけど、あれはどうしてなの?

あれはウィメンズウェアではなくて、あくまでメンズウェアを着た女性。実は、多くの人がウィメンズウェアコレクションはしないのかって言ってくれていたから。

—確かに、前回のオーダー会の時もショーンの服は女のコ達にもすごく人気だったもんね。

そうなんだ笑。それで僕はいつもウィメンズウェアはしないって言っていたんだけど、女のコが僕のメンズウェアを着るのは全然アリだと思うんだ。
それで今回、マシュー(Matthew Josephs、ショーンのコンサルタントを務めるスタイリスト)と相談して、女のコが着たらどういう風に見えるのかっていうのを示すために、ウィメンズのルックを入れたんだ。

—なるほど。じゃぁウィメンズのルックの服も、決してウィメンズやユニセックスウェアとしてつくっている訳ではないんだ。

そう、全部メンズウェアなんだ。

—更にSS13コレクションについて。何かのインタビューで、ショーン自身がこれは「ストーナー・ロック」であって、「グランジ」ではあるけれど、「ニルヴァーナではなくてウィーザー」って言っていたと思うけど、これは正確にはどういう意味?

ウィーザーはカリフォルニア出身で、オタクっぽいグランジ。ニルヴァーナはワシントン出身で、まさにグランジで、なんていうか、より汚い感じ。
そういうグランジはSS12コレクションのとき少し参考にしたのだけど、今回のメインはオルタナティブミュージック。カリフォルニアではウィーザーのような音楽はオルタナティブって呼んでいたんだ。他のところではどう形容しているのかわからないけどね笑。オタクっぽいスウェットとか、バンドTシャツとかね。

—コレクションではそういう繊細な少年の、将来を憂いたりする気持ちを描いているのだよね?

そう、大人になっていくっていうこと。前回のコレクションは、ギャングみたいに、友人達とストリートで自らの社会をつくっていくことについてだったのだけど、今回の少年達は高校に通っていて、何かに適合しようとするけれど、まだ成長過程で、自らを見失って迷っている。だからこそタトゥーやピアスをするんだ。

—だから今回のコレクションは、すごくティーネイジで、アドレッセンスなムードがあるのだね。そういう要素って、ラフシモンズとかが追い求めていたことでもあるよね。

実はすごくラフシモンズを尊敬しているんだ。彼がいかにユースカルチャーのレファレンスをハイファッションに持ち込んだか。更に今はクチュールもしているし、本当に素晴らしいデザイナーだと思う。
特に彼のシグネチャーラインは大好き。(ショーンと同じく)メンズウェアだけで、ウィメンズウェアラインはまだしていないしね笑。

—確かに笑。ではまた今回のコレクションの話に戻って、他に重要な要素となっているのが、日本のカルチャーからのレファレンスだよね?

そう、ネオンのカラーリングは日本のデコトラトラックから来てるんだ。

—あとこの猫のグラフィックはハローキティとか?

そう。それだけじゃないんだけど、日本とかアジアのキュートなアニメキャラクターを参考にして、Tシャツのグラフィックにしたかったんだ。
そこでこの猫をデザインしたのだけど、まだキュートすぎる気がしたから、少しハードにするためにもピアスとかスタッズとかを付けて、白黒で冷たい感じにしたんだ。

—どうしてそのようなアジアのカルチャーを組み込んだの?

アメリカのオルタナティブカルチャーとかハイスクールをリサーチして、何かになろうとする少年像を考えているうちに、辿り着いたんだ。
例えば、ロンドンの人々はギャングじゃなくてもギャングウェアを着るよね。それに多くの日本の人も、アメリカンカルチャーをスタイルのインスピレーションとして見ていると思う。
そういう感じで、もしマシューが日本に住んでいたらどんな服をきるだろうって考えたんだ。

—なるほど。ショーンは日本に来たことある?

まだ行った事がないんだよ。友達も沢山いるし、僕のコレクションをストックしてくれているショップも沢山あるのだけど。
あまりホリディで他の国へ行く事がなくて、いつもビジネストリップばっかりなんだけど、まだ日本にはそういう機会がなくて。でも間違いなく、行く必要があると思っているよ。

—是非来てほしいね。あと、この猫のグラフィックとかエクストリームなピアッシングとか、どこかHarajukuスタイルに通じるものがあると思うのだけど、ショーンはそういうクレイジーな東京のファッションシーンについてどう思う?

もちろんHarajukuスタイルについては知っているけれど、それを語るのは少し気をつけないといけないね。なぜなら僕は実際にそこに言った事がないからね。そのシーンを知っているふりはできないよ笑。
僕は生まれ育った街だからカリフォルニアのカルチャーをよくレファレンスするけれど、もしHarajukuスタイルをもっと大胆にレファレンスしてデザインしても、実際に行ったことがないからリアルにはならないと思う。
今の段階での僕の原宿のイメージは、何かひとつで形容できるものじゃなくて、色々なカルチャーが全部あるって感じかな。

—日本にはショーンのコレクションをストックしているショップが沢山あって、特に日本で人気だと思うんだ。それはどうしてだと思う?

ただ、日本の人々が着る事を恐れないからじゃないかな。実験的なもので、自分の興味を示すっていうことを恐れていない。全体的にアメリカとかヨーロッパの人々はもう少し保守的だと思うね。

Photo:Takahito Sasaki

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