Interview

SHUN OKUBO 4/4


“チームで仕事するという姿勢が好きで一人でやるということには興味がないんです”

―ジュエリーデザインではどの部分に一番重点を置いていますか

元々のコンセプトは都市に生きる女性とか都市に生きる女性の為のジュエリーということなんですけどもう一つのコンセプトを言うと安定したものより不安定なものを作りたいというのがあるんです。落ち着くものよりも不安を煽るものだったり、驚きだったりとか僕はそっちの方が興味があるんです。ファインジュエリーというものは心の安心だったり、地金自体がお金みたいなもので価値を持っているものなので(ずっと戦争してきた欧米などでは)それを持っていることでいつ攻められても逃げられたり、お金に換算出来るものなので安心したりもするんですけど僕はもっともっとみんなの不安を煽りたいんです。今までのファインジュエリーというのは凄く調和のとれた形をしているんですけど僕はわざとバランスを崩すとかわざと痛そうなものを作ったりとか。それって時にアートに繋がっていたりすると思うんです。僕は驚きを見る人や付ける人にいかに運ぶか、そこに興味がありますね。付けて女性を安心させたりとかそれはあまり考えないですね。

―ブランド名のShun Okubo & AsscociatesのAssociatesは何を意味するのでしょうか

ブランド名は全てShun Okuboに統一して会社名をShun Okubo & Associatesにしたんです。僕は勘也さんのところにいたり、Haiderのところにいたりしたんですけどそれってみんなチームの仕事なんですよね。マルジェラもMaison Martan Margielaにしてたり自分がオピニオンリーダーになることは凄く大事なことなんですけどチームの仕事で何かを成し遂げたいという思いの方が強いんです。それでAssociatesにしました。チームで仕事するぞって言う姿勢が好きで自分が一人でやるということにはほとんど興味がないんです。まだまだ一人の時が多いんですけど。

―自分が得意としている素材はありますか

パールですかね。今シーズンはシルク素材とメタルを組み合わせてジュエリーを作りました。僕は元々洋服の畑にいたのでこれからは洋服で使っていた素材とファインジュエリーで使ってきた素材を組み合わせてジュエリーを作っていきたいなと思っています。単なるファッションジュエリーではなく高いレベルでジュエリーと服のマテリアルを組み合わせていきたいですね。

―再び洋服をやりたいという気持ちはありますか

ありますね。でもいきなりコレクションをやるという感じではなく、例えば凄くラグジュアリーなコットンだったりカシミヤだったりシルクを用いたシャツだったりセーター、ニットだったり何か小さいピースから、いきなりジャケットやイブニングドレスではなくて高級素材を使った小さいアイテムから始めたいですね。

―それはアクセサリーの延長の洋服、またはアクセサリーを付ける人の為の洋服という感じになるのでしょうか

そうですね。そういうものが多くなるとは思います。例えばジュエリーとジョイント出来るとかそういうことは常に考えていますね。

―毎シーズンテーマを決めてやっているのですか

決めてやっています。考えることは無限にあるのでどこに焦点を絞るのかというのと、テーマを決めておくと出来上がった時にプレゼンしやすいんですよね。

―どのようにテーマを決めているんですか

色々なんですけど本を読んでいて気になることがあるとデッサンをしてみる。それでいけそうだなとなるとそこ
から始まったりもします。今回は秋に三越さんに声を掛けてもらって三越の企画でジーンズというお題を出してもらって色んなクリエイターに物を作ってもらうということをやったんですね。そういうお題があったのでそこからスタートしました。人から振られるのは自分が思い浮かばないことから始めることが出来るので結構好きなんです。自分だったらジーンズとメタルをいきなり組み合わせようとは思わないんですけど、「ジーンズを使ってジュエリー作ってください」となると面白いですよね。

―新しいシーズンの発表をする時は今までのアイテムは出さないんですか

端の方ですけど出しています。コレクションとして独立させてやりたいですけどジュエリーって洋服よりももっとサイクルが遅いというか下手すれば100年後でも付けることが出来る。その辺はジュエリーの良いところですよね。だからそういう部分は生かしていきたいんです。

―ジュエリーにも流行はあるのでしょうか

ほとんどないと思います。素材の面ではあると思うんですけど。最近面白いと思ったのはフランクゲーリーがTiffanyと組んでジュエリーを作っていること。建築家が作るジュエリーが多くなってきたのかなって思いますね。

―建築家がジュエリーをデザインするというのは凄く自然な流れの気もしますね

やっぱりファサード作る時とかそういう感性は必要なのかなと思いますね。建築家とのコラボレーションは流れとしてこれからもっと増えていくのかなというのは最近凄くありますね。建築というのはスケールが大きいので色んな文脈というのが入ってきますよね。ジュリーってもう少しシンプルというか身体とメタルの関係性としてはシンプルですよね。1対1の部分が多いというか。

―ジュエリーは自分自身で作られているんですか

デザイン画を渡して職人さんに作ってもらっています。簡単なことは自分でもしますけど技術的なことは素人なので。いずれは僕が作った造形やジュエリーも作りたいと思っています。

―自分自身のスタイル、特徴というのはどういったものだと思いますか

禁欲的ですね。

―それってある意味矛盾していますよね。ジュエリーって本来はラグジュアリーなものであるはずなのに

そうかもしれないですね。あまりキャッチ―すぎるものが好きじゃないのでそういうのはファインジュエリーの方に任せて、僕はあえてそういうジュエリーの華やかさをなくしたいというのはありますね。

―生物をモチーフにしているジュエリーが多い印象でしたが

あれは都市と野性というコンセプトなので自然というワイルドなものと女性を並べてみているという引用的な意味はありますね。メタファーとしての自然というのは一つですね。球体をなぜ作ったかというと京都の5条に河井寛次郎記念館があるんです。その庭にある丸い石が本当に好きで、寛次郎氏自身もその石で遊んだりしていたみたいなんですけど、作った時に球体だけじゃ駄目だと思って何か緊張感を出すようなオブジェクトが乗っていた方がいいんじゃないかと思ってその石に止まっている蟻とか虫を想像して球体につけたんです。

―デザインの考え方としては洋服を作られていた頃と同じような考え方で作られているんですか

学校を出てデザイナーさんについて僕の中で凄く変化があったと思うんですよ。もし服を作ったら今みたいな考え方はすると思いますけどスケールも違いますし、指輪とかよりも洋服ってもっと決まりごとが多いというか人間の形が決まっている。そこからどうやってボリュームを付けるとか、シルエットを作っていくのか、そういうことになると思うし、全く素材も違うので何ともいえないですね。何かしら考えながら直感的なところだけではなくて何かを引用しながら作っていきたいなと思います。

―インスピレーション源はどういったものですか

インスピレーションは絵画や彫刻だったり、アート作品、建築物、そういうものが多いですね。

―パリを経て日本に戻って来て考え方は変わりましたか

考え方は基本的に変わっていないですね。ただデザイナーとしては今凄く成長期にあると思います。

―それは具体的にどういう部分で感じますか

素材の使い方とかはやっぱりうまくなったと思いますね。色んな素材を使えるようになったしそこは経験かなと思います。どんな素材を見てもジュエリーとして何かしらの使い方は出来ると思います。昔はなんとも思わなかった素材でもどうにかして使えるような実力はあると思います。もっと凄い人はいっぱいいますけど素材と対話することが凄く出来るようになりました。パリのポンピドゥーセンターに名前は忘れてしまったんですけど格子状になっていて砂が入っていて質感も全部違う作品があるんですけどその質感が凄く綺麗なんですよね。単なる砂なんですけど。最近聞いた話なんですけど色って一色じゃ立たない、一色だと魅力を100%引き出せない、何かの色と並ぶことで初めてその色の良さが引き出されるそうなんです。James Turrelの光の使い方もそうなんですよね。物質と物質とを組み合わせた時に全然パワーが無いものと凄くパワーがあるものがあったりそういった素材と素材の組み合わせというのは段々経験からわかってきましたね。

―Shun Okuboとして今後やりたいことはありますか

とにかくもっとたくさんの人に身に着けてもらいたいですね。あとはジュエリーだけでなくプロダクツとか洋服とかもう少し幅を広げていきたいですね。同じコンセプトの中で。ただ安心できて美しいものではなく、不安を煽ったり、挑発的だったり、アイロニカルだったり、そういうものをもっと作っていきたいですね。

Interview & text:Masaki Takida

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