“世の中に対してボネゲというブランドが一体どんな役割を果たすのかということも考えながらやらないといけない”
―ish.時代の洋服は流通させていたんですか
してないですね。
―それは最初からそういうものとして作っていたんですか
それもあったし私もその時は流通させるということまでは良くわかっていなかったんです。
―会社にとっての利益とは何だったのですか
プロモーションに使っていました。
―ブランドは存在していたけど存在していなかったということですか
メゾン的な活動はしてないですね。
―でも実際の洋服も作られていたと
実際の洋服が無いと説得力が無かったので。
―ish.時代から顔も髪の毛も表情も無いですよね。ボネゲの1stコレクションでは顔を覆っていました。それはish.から通じているものなんですか
そうですね。顔はいらないんです。情報が多いので。
―洋服が主役であって人間が主役でないということでしょうか
それもあるけど単純に要らないなって思ったんですよね。ブランドが提案する状態の時は顔の情報は要らないと思うんです。その後みんなが買ったり着たりすることでその人が既に持っているイメージやバックグラウンドと一緒に服が合体してその人なりに着こなせばいいのであって。私が例えばKate Mossとか使ってどうよというのは何か面倒くさい気がしたんです。うちの服を見せるのにKate Mossは要らないんですよね。
―雑誌側からの衣装提供の場合はどうなんですか
うちから発信する時は顔は要らないけどうちのものを使って何かやりたいと言うのであれば問題はないですね。
―だからモデルも一般人で良かったと
そうですね。凄く太った人とか、凄く痩せた人とかもっとでこぼこしていて良かったんですけど。でも実際に服を着る人達って普通の人達ですよね。だからその人達が似合わないと意味が無いんです。
―ボネゲは一般の人が着ることを想定した洋服なんですか
サイズもそうですね。普通ショーピースはモデルの体に合わせた服を作りますよね。それをあえて一切しませんでした。
―ゲリラショーの反応として「気持ち悪い」などの意見がありました。普通の服が着る洋服なのに気持ち悪いとかまじ怖いとか言われる洋服でもいいのでしょうか
最初のインパクトはそれでいいと思います。逆にそう思われることを期待していたんですよね。
―着てもらいたい洋服ですよね、そういう洋服が着たいってなるのでしょうか
でもどうでもいいものは生活の中でひっかからないですよね。
―最初のコレクションとしてインパクトを残そうという気持ちが強かったのですか
それは常にありますね。それが前回はゲリラショーだったんです。
―ブランドの名前が変わったことで変わったことはなんですか
経験する量ですかね。デザイナーとしても代表としても経験する量、幅が増えましたね。
―それは今度は自らが代表を務めるブランドになったからという意味でしょうか
それもあるし追い込まないといけないと思っています。
―CGじゃなくなったことによってデザインに制限は出ましたか
あまり関係ないと思います。結局出来上がってくる洋服が良くないと意味がないので。
―物を作る時は考えることが多いんですか
色々考えています。完全じゃないけど日常の中でちょっと気になってきたこととかそれを引きだしてきてそれだけを物凄く発展させる感じ。だから絵画見てとか、映画見てとか、音楽聴いてとかから発展させることは一切ないですね。人間が持つ面白みが好きだからそれにまつわることで自分のデザインを発展させることが多いです。
―人間観察も良くされるんですか
それはあまりしないですね。そういった部分は自分中心なんだと思います。
―例えばフラストレーションがたまっている時はそういう作品になるのですか
なりますね。
―ハッピーだったらハッピーな作品になるんですか
ハッピーだったとしてもハッピーな作品は作らないですね。面白くないから。ハッピーな物って駄目なんですよね。
―常にフラストレーションを抱えていた方が良いと
フラストレーションの無い人間なんていないと思うんですよね。微々たるものであったとしても。
―独立して一番変わったことってなんですか
人と接する時の感覚とか管理する感覚とか服に対する感覚とかが劇的に変わった気がします。やっと地に足が着きそうな感じ。今まではふわふわっと「デザイン楽しいや」って。それって凄い重要なことなんですけど。でもこのブランドを凄く長く続けたいんです。何年でも続けられたらって。その為には何が重要かと考えたら管理力だと思ったんですよね。勿論デザインの力も物凄く必要だし、それが無いと駄目なんだけどそれプラス管理力が無いと駄目なんですよ。どういう風にブランドを管理していくか、どういう人達と会っていってどういう人達と繋がりをもっていって、どんな人達が買っていってくれるのかということを考えて。世の中に対してボネゲというブランドが一体どんな役割を果たすのかということも考えながらやらないといけない気がしました。
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