Interview

Sise 後篇

“パターン上で線が綺麗だと洋服になっても綺麗になるんですよ。パターンがなんかここが嫌だなっていうのって洋服にしても結局気になるので”

―今回のテーマ『東京』は東京のどこの場所がイメージになっているのですか

特定の場所はないですね。ただ文章にもあるんですけどここ(事務所、三軒茶屋)って夜になると高速の音が聞こえてくるんですよ。高速の音が都会ぽいというか繁華街はシーンとしているんですけど高速の音だけが聞こえてくるんです。そういうところから文章はきているので強いてここといえば窓から見える「首都高」かもしれないですね。東京タワーには行きましたけど。

―自分が感じる東京ってどういう場所ですか

小さいNY。頑張ればいくらでもなんとでもなるんですけどそれには良い人だけでは何もならないし、『夢と挫折がある場所』、そんな感じがします。

―今の東京に若手のデザイナーを育てる土壌、機会はあると思いますか

無いと思います。育てようという気が感じられないというか・・・。

―個人的に影響を受けたデザイナーやアーティストはいますか

元々ファッションデザイナーを目指していなかったので着るとして好きなデザイナーはいっぱいいたんですけど目指しているとか、影響を受けたのは石岡瑛子さん(The CellやDraculaなどをやっている衣装デザイナー)ですね。

―今でもこういったコスチュームなどの作品を作りたいと思いますか

思いますね、だから今でもウェディングの仕事をやっているんですよ。仕事としてではなく自分がやりたいんですよね。続けたいとは思いますけど時間的にSiseに集中しなければいけないので難しくなってきていますけど。

―ファッションに興味を持ったきっかけはなんですか

Star Warsですね。エピソード1から入ったんですよね。アミダラ女王の衣装に衝撃を受けてそこから(Star Warsの衣装をずっと)やりたいなって思ってて。それまではデザインに興味も無かったですし獣医さんになりたいと言ってるような子でしたので。

―ブランドを始めて4シーズン経ちましたが最初の頃と変わったことはありますか

忙しさですね、わからないことも多かったですし。今の方が仕事量は多いんですけどスムーズには進んでいます。少なからず取引先が増えてきてプレッシャー も増えては来ました。出した物が売れなかったらどうしようとか、次気に入らなかったらどうしようとか、考えたくないんですけど必然的に考えちゃうんです。だから展示会前は凄く嫌ですね。2人の中では「(今回のコレクション)可愛いね」って言ってるんですけど。作り手は変化を求めるんですけどバイヤーはそこには変化を求めなかったりする。でもそこは逐一変えたくてそこの部分の歩幅の調整が大変ですね。

―描いている顧客像はありますか

自分が通ってきてるところなので20歳前から30歳くらいで何か望みがあるというか、のんびり大学生とかではなくて何かやりたいことがある人を描いていますね。

―無垢と狂気という2面性をどうデザインに落とし込んでいるのですか

メンタル的なことになるんですけど洋服を着れば着るほど綺麗になっていくじゃないですか。でも人ってそんなに綺麗じゃないんだろうって部分があって、今は答えを見つけ出している途中なんですかね・・・ルックブックの写真とかを見て危なさを見出してくれたらそれは一つの成功だと思うんです。前回は特にぎりぎりな部分を目指していたので。

―コンセプトのイノセントだったり少年性というのはデザイナー自身を投影しているんですか

投影してましたね前回までは。

―09A/Wを見たときに自分の学生時代を振り返ってこうだったら良かったのになーって思い描いてデザインしたのかなって感じたのですが

「完全にインナートリップしてるね」って言われたんですけど、自分が通ってきた道、こうであったら良かったなっていう部分を理想と現実まぜまぜでやっています。だから学ランが自分の母校の学ランに似ていると言われたり、バスケ部で設定していたんですけどそれは「自分がバスケ部だったら良かったなー」って思ってた部分なんです。でも次からはいったん区切りをつけて、モデルも少年ぽい子ではないですし、今ここで夢を追いかける人、諦めようとしている人、色々いると思うんですけどそういう人達を表現できたらなって思っています。だからデザインとか柄とか色の使い方は変わっていると思います。ただバランスに関しては変わってないので統一性はあると思うんですけど。

―HPを開くと音楽が流れてくるんですけどやはりコレクションを形成する上で音楽は重要な役割をしていますか

していると思いますね。あの音楽は文章を渡して作ってもらったんです。『卒業』に関しては向こうからの提案で卒業式の部分だけ違う音楽になっているんですけど。元々は秋冬は『扉』というショートフィルムを撮りたかったんですよ。だから物語を撮るように写真を撮ったんです。

―「クオリティを追求し美しく見せるカッティングが持ち味」とのことですが

本当に細かく修正しています。1ミリ2ミリを細かく修正して。「変わるのか?」って言われたりするんですけど全然違うものなので何回も何回も線引いてます。パターン上で線が綺麗だと洋服になっても綺麗になるんですよ。パターンがなんかここが嫌だなっていうのって洋服にしても結局気になるので平面の状態でかなり綺麗な線が引けるようにしています。

―でもそのパターンの部分を今回は他の人もやっているんですよね

その代わり仮縫いは何度もするようにしています。同級生なので「ここを1センチやめたい」とかそういう細かい部分まで話し合ってやっています。

―やはり根底にあるのは自分達が着たい物ということですか

そこが中心になっています。中には奥行きも出していかないといけないのでヴァリエーション的なアイテムも出していますけど。そこはやっていて変わったことで、自分はコートを着ないんですけど「ずっとコートは作らないの?」って言われてたので作ってみようかなとか。

―パルコで期間限定ショップをやられたそうですがどうでしたか

良かったです。数字的にも良かったですしその後に展示会があったんですけどそこで買ったお客さんが来てくれたというのもありますし。

―今後どのようなブランドにしていきたいですか

自己中心的な感じで始めたブランドですがそこに賛同してくれた方が増えてきているので勿論そこに答えていきたいという想いはあります。この服を着たら「テンションが上がる服」そう思ってもらえるブランドになれればいいなって思います。

―具体的にどのようにしたいとかはありますか

やっぱりその中でショーというのが一つの手段なのかなとは思います。みんなにとってわかりやすいですし。

―でもショーになるとモデル選びが大変そうですね、毎回モデル選びに凄い時間をかけているのは伝わってきますし

難しいですね。でもショーをする時にはもしかしたら女の子のモデルが出ているかもしれないし何かしら答えが出ているんじゃないかなと思います。

―それは東京でやりたいんですか

まずは東京でやりたいですね。留学とかが選択肢にあった上で東京に残ったので東京でまずやりたいです。思い入れがあるわけではないんですけど今自分がここで東京という場所でやっているのでまず東京でやりたいですね。土台となっている部分がここにあるのでそれは無視できないですね。

HP:http://sise.jp/

Photo:Takahito Sasaki Interview & Text:Masaki Takida

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