Comme des Garcons, UNDERCOVERなどで経験を積んだ後ブランドを設立、良い意味で毎シーズン全く異なるテイストの洋服を提案し続けるブランドJUVENILE HALL ROLL CALL入江泰氏に話を聞いた。
―洋服のスカウターですか
そうなんですよ。僕は服を見たら大体、特にデザイナーズクローズであればその強度がわかるんです。
―強度ってどういう意味での強度ですか
そいつが強いか弱いかですね。単純に表面的に強いかどうかということではなく、想いがこもってるかどうか。とにかくその服が強いかどうかですね。僕は洋服 に対して”強い”、”弱い”って思うんですけど強い服には負けたくない。薄っぺらい服というのは死んでる服だと思うのでそういう服はスカウターで見ても反応しないので僕の服を隣に並べても「勝てるな」って思うんですけど。負けたくないんですよね、多分。(スカウターを)かけて「これはやばい」っていう服は気になってしょうがないです。
―ではその気になった洋服を教えてください
最初に一番最初に自分のまわりでやばいって思ったのはAnrealageの森永君ですね。マルジェラから20年経ってマルジェラを超える日本人が出たって初めて見た時に思いましたね。最近はあまりスカウターが壊れたりすることはないんですけど、一番最近で言うと「HIRO」はカスタムしたのか一から作ったのかわからないですけどMA-1みたいなやつでもの凄くチェーンとか旗とかいっぱいついてるやつがあって。最初にHIROに会ったのが3年前くらいなんです。たまたま僕とショールームが一緒だったんですね。同じショールームで合同展とかやるじゃないですか、で隣に何か物凄い強度のやつがあるんですよ。10枚くらいしかないんですけど「うわーなんじゃこりゃー」って久々に見てかなりびびって「これ作ってるの誰だろう」これは友達になっておかないと、このやばいやつは俺の敵に回しちゃいけないと思って。そうしたら全然オーラ出していないやつが横にいるんですよ。で、「こいつか」と思って話しかけたらHIRO もロンドン住んでたりしたので一日で3年分くらい喋って、仲良くなったんですね。
服作っていて他の人に負けたくないじゃないですけど、古着でも新品でもデザイナークローズでもラグジュアリーでもなんでもいいんですけど一緒に置いても らってグッとくる感じというのは常に持っておきたいのでそれで服の強度は気になるんですよ。
例えば普通のJil Sanderの服見ても強度高いと思っているんですよ。見た目薄いんですけど「何でこうするのかな?」という部分が絶対にあるので。削ってるんですけど深 さがとにかくあるんですよね。「何でここにこの箱ポケット持ってくるんだろう?」とか。だからスタッズ打ってるから強いのではなくて削ぎ落としてるもので も強い物は強いんですよね。
―今まであまりメディアに出てないと思うのですがそこは意識していたのですか
そうですね、今までは避けていた部分もあります。ただそこの部分はここ2,3年HIROといて一緒に展示会やってきてちょっと変わってきましたね。以前 までは一応僕も洋服のメーカーにいたので肩書きを見るとプロフェッショナルって見られるじゃないですか。それもありますし服のわかる大人と言ったらダサい表現ですけど服をわかる人にわかる物を作ろうみたいな自分なりの背延びがあったと思うんですよ。でもやっててつまらなかったし、もともとユースカルチャー のようなものも好きだった。30位になるとみんな服買わなくなってくるじゃないですか。あーだーこーだ言うけど買わないみたいな感じの人に何か言われるのも嫌だったしだったらやっぱり素直に「面白いかも、良いかも」と言って買ってくれる子に届けたいなって気持ちがHIROと付き合う中で変わっていく自分があって、そこから少しずつ今までは服見て語るじゃないけど格好つけた感じだったんですけどあまり関係ないかなって感じにシフトしていったんですよね。ここ1,2年 HIROに助けてもらっているというか得られるものは凄くありますね。
僕は個人的にはその洋服が凄い面白ければその洋服を作っている人間がどんなに最低な人間でも好きですけどね、一方的に。
―僕は逆に人が面白ければ面白い物を作るんじゃないかなって思ってしまうんですよね。だからインタビューやる時にも面白い人紹介してくださいみたい な
視点が違うかもしれないですね。僕は結構物ありきなところがあるんですよね。
―東京に戻って来て感じたのは凄く面白い人が多かったのでこれからはもっと東京やアジアに目を向けていこうと思っています
流れ的に考えて日本がこれだけきたらやっぱりアジアにはこれから面白い人が出てくるのは間違いないですよね。
僕は若い子や専門学校の子とあまり絡みがないですが昔の専門学生っておかしい格好をしていたんですけど今はあまりおかしい格好している人っていないですよね。
―均一化はしてるかもしれないですね、やっぱりファストファッションの影響もありますし、チョイスが広がり過ぎたことで逆にチョイスが狭まったのかなとも思いますし
最近気がついたんですけどファストファッションのメンズってなんであんなにダサいのか。レディースはうちの嫁も買ってくるし結構可愛い物があるんですよ。 「幾ら?」「3900円」「まじやばいね」みたいな。でもメンズはあまり良くないですよね。なんでメンズが格好良くないのか自分なりの答えを出したんです けど、多分男ってカルチャーじゃないけど奥行きや背景とか凄い気にするじゃないですか。ファストファッションのメンズって奥行きまでは出せないのでそれで 格好良くないと思ってしまうのかなって勝手に自分の中で結論付けたんですけどね。レディースはそれ関係ないので奥行きよりもやっぱり可愛いとか形綺麗とかで良いので。正直女の子だったら羨ましいですよね。
話は変わるんですけどさとうさんの話じゃないですけど僕ギャルソンにいた時間が多分精神と時の部屋にいたと思うんですよ。で「俺かなりパワーアップしたな」って感じで辞めたんです。でもUNDERCOVER入ったらボロ負けでしたけどね。
―それはどういう意味ですか
やっぱり組織の中で遊ばせていただいて出来た気持ちになっていただけなので外に出された時にそれが使えるようになっていたかと言われたらそんなに使えるようになっていなかったんですよね。だから大変な思いは両方しているんですけど結局洋服を作るということに関してはUNDERCOVERの方が勉強になりましたね。
―両方とも携わったのはメンズですか
ギャルソンはメンズだったんですけどUNDERCOVERはあまり分けていなかったのでメンズもレディースも一緒くたでやっていましたね。
―コムデギャルソンではどのブランドをやられていたんですか
プリュスです。僕元々販売で入ったんですよ。ギャルソンの服好きで良く買っていて実家が神戸なんですけどそこの店長が「僕辞めるけど入江君そんなに(ギャ ルソン)好きならうち入る?」って言われて大学生の時にバイトとして入ったんですね。そこから社員になって販売を4年くらいやって。その後折角面白い服作っているブランドなのでアトリエ見たいなって思って、移動させてくれないかみたいな話したんですけど、「お前専門とかで勉強したの?」って言われて。でも川久保さんと面接させていただいて「来なさい」って。二言くらいしか聞かれなかったですけどね。「あなた入江君?」と「仕事はきついけど大丈夫?」、 「車の免許持ってる?」って。全ての質問に「はい」って言ったら「わかりました」って。しばらく下で待ってたら「入江、来週からこっち」って言われて「マジっすか?」みたいな。「家とか借りてるんですけどどうしたらいいんですか?」って言ったんですけど「どうにかしてやってこい」って言われてその後にアトリエに入れたんですけど面白かったですね。専門も出てなかったのでそういう服の現場を全然見たことが無かったので。現場で覚えたじゃないですけど良い経験させてもらっ たと思いますね。パリコレにも連れて行ってもらいましたし。
続く