Interview

DROP 後篇

上目線にならないでちゃんと真剣に人間としてかかわるというのが結果的にこういう風に結びついたというか支持されるようになったのかなと思います

―今のファッション、カルチャーの中心はどういうところから生まれていると思いますか

いろんなところで生まれているとは思うんですけど、僕達が捉えているシーンってファッションというカテゴリーの中でも更に限られた層じゃないですか?果た して世間にインパクトをどれだけ残せているのかわからないけど、新しい物が生まれている状況と実際にそれが成熟してカルチャーになっている状況ってあると思うんですよ。例えばCandyはメジャー化しつつあって大衆に落ちつつあるからあそこはカルチャーを持ってると思うんですよね、ムーブメントというか。ああいうちょっとアンダーグラウンドなテイストを押し出してるんだけどそれがメジャー化してるっていう、それ自体がカルチャーだと思うんです。文化学生とか、Vantanの子とか服飾学生が奇抜系というかそういうのを追い求めているのはCandy周辺のカルチャーの影響が勿論あると思うんですよね。そこは僕が言わなくてもみんな知ってることで当り前の事実だからあえて言う必要はないと思うんですけど。パーティーもマンネリ化しつつあってひどい状況になっている。最近は学生たちがみんなエレクトロパーティーとかするようになった。3年くらい経ってやっと日本の大衆に落ちたから今のCandyみたいな状況だと思うんですよ。アンダーグラウンドのエレクトロパーティーというものがメジャー化しつつあるのはひとつのカルチャーだと思いますけど。

新しい流れとしては SisterもCandyもそうだけど古着屋がセレクトショップを始めたじゃないですか。ああいう流れはこれから来るんじゃないかなと思いますね。基本若い子ってお金ないから古着で最初入るんだけどだんだんSisterで買うことに価値を見出してきてそのSsiterが打ち出すブランドなら買う、そうい う持っていきかた、セレクトショップでは買わないで自分の好きな古着屋のセレクトするブランドなら買うみたいな流れってこれから来るのかなって思ったりしていますね。

―さっきパーティーに触れていましたがDROPとしてもパーティーをオーガナイズしていますよね。それはなぜですか

今年の2月に最初にやったんです。その頃ってパーティーが超いっぱいあって1年くらい前からたくさんありふれてつまらなくなったよねっていう状況も知っていた。だからそこで敢えてパーティを自分たちがやるのは嫌だなって思っていたんだけど、でもきっと歴史を振り返った時に何かを残すというのは大事なことで、ミラーズというイベントをやってファッションフォトシューティングをやったんです。自分たちが2009年の2月にこういうフォトシューティングをしてこういうルックを撮ったんですよというのを残しておくとそれがちゃんと歴史になり実績になっていくからそういう意味で残そうと思って。2009年のこの時期はパーティーが流行っていて、それに便乗してやったんですよというのを軽いノリで便乗したというか。でもそれは歴史を振り返った時にちゃんとカルチャーとして面白い物というか「そういうカルチャーもあったね」みたいになるかなと思って。ミラーズというのは(普通のパーティーと)コンセプトも違ってただDJが回してというのではなくて今勢いのあるショップを集めてスタイリストがスタイリングをして勢いのあるサロンがヘアメイクをしてフォトシューティングをしている雰囲気を楽しんでもらうというイベントだからそれは定期的にやろうと思っています。いずれスポンサーももっと取って公式のウェブサイトも作って、ミラーズ単体で秋冬、春夏のコレクション時期に合わせて年に2回大きい感じでやれたらいいなと思っていて。だからアンダーグラウンドなままに終わらせないでメジャー化させたいなと思っていて。その為にはいろいろ考えなきゃいけないことがあるんだけどとりあえずは数重ねて、ルック集めて、実績作って、どんどん協賛作ってという感じでは考えているんですけど。

―今現在求められているファッションリーダー像とはどういうものだと思いますか

きっと僕達がかかわっている人達って私服のコーディネートが飛び抜けている人達じゃないですか。でも芸能人でいうと野宮麻貴さんかな。日常の服装がだんだんドレッシーになってきているというか以前より凄く着飾るような感じになってきている。それはDROPの人に限ってなんですけど。野宮さんも服装が奇抜だったというか私服でも凄くドレッシーな服とか着たりする。今まではそういう人達は一部の層だったんですけど逆にそういう人が増えていくのかなとは思いますね。

―若い子のパワーって凄いものがありますよね

若い子の感性って今これが流行るとか、今これが絶対来るとか大人じゃ理解できない部分て絶対あると思う。それは感覚的なものだから説得力は大人からしたら無い。でも根拠のない自信てあるからそういうのを一緒に周りが手繋いで動いた方がシーンは大きくなるし、藤原ひろしやその周辺のストリートブランドが一気に盛り上がった時も若い人たちで協力してシーン盛り上げたという話も聞くし。そういう意味でもっと色々協力できるショップオーナーさんと何かやっていけたら良いなと思いますね。だから若くてセンスの良いオーナーさんが増えればいいなと思います。

―自分が洋服を見ていても20代前半の若い世代と比べたらやはりずれが生じてきているのを感じる部分もありますし、これからどんどんその差は広がっていくだろうしそこを補っていくのには経験と若い人の感覚しかないのかなと思います。

そうですね。年を重ねるとだんだん好き嫌いも激しくなってくるから新しい物を受け入れなくなってくるようになっちゃって、それは僕もよく痛感するんですけど。こだわりを持つことや歳取ってどんどん洗練されていくこと、取捨選択能力を持つことは大事なんだけど、でもやっぱり若い人の感覚って理解できないところってホントにある。でもそこを割り切ってある程度許容していかないとDROPは基本若い層をターゲットにしているから僕の感覚だけでやっていたらてくれなくなっちゃうし、僕はカルチャーを発信したいと言ってても若い子とかはきっと興味ない。きっとスナップとかわかりやすい物が好きだからそこのバランスというのは見計らわないと駄目だと思いますよ。

―逆にでも自分たちの方が若い世代よりも客観的には見れるようになったと思うんですよ

それは確かに思いますね。

―これだけスナップサイトが氾濫している中でDROPが一番支持を受けている理由は何だと思いますか

多分一番大きいのは姿勢というか、僕たちがやりたいと思うことに共感してくれている人が多い。それは読者というよりかはどちらかといえばDROPで撮影にかかわってきた人、撮影してもらった人たちも含め、そういう人たちの信頼とか実際にDROPのことを良く言ってくれたりするからそこから派生して色んな人たちが見てくれてというのが多分なってきていると思う。僕達も写真一つ一つにこだわろうというのはたかがウェブのスナップサイトだけどそれでも雑誌に負けないくらいのクオリティのスナップ撮りたいとか、少しでも可愛く見せてあげたいとか、少しでも格好良く見せてあげたいとかこだわりを持ってやっている姿勢というのを感じ取ってくれたり、かかわる時に真摯にかかわったりとか。上目線にならないでちゃんと真剣に人間としてかかわるというのが結果的にこういう風に結びついたというか支持されるようになったのかなと思います。一般大衆の目からすれば更新頻度だったり、毎日5枚見れるだったり、サイトの見やすさやコンテンツにブログがあったりとか色々あると思いますけど一番は人と人をかかわることを大事にしている、そこはスタッフの人にもちゃんとするようにしてますけど。

―現在の東京のファッションシーンについてはどう思いますか

東京のファッションシーンが世界から注目されているというのはもう何年も前から言われていることで当り前のことだけど、それを実際にメディアがちゃんと捉えられているかと考えたときにTune, Fruitsとかは海外の人たちもきっと面白いと思っている。それはきっと日本らしい良いところがあるから。だから僕はTune, Fruitsは凄いと思う。日本の傾向としてカジュアル系のファッションが多いじゃないですか。DROPもそうだけどそういうところが日本らしいファッションを取り上げるようになって日本らしい面白いファッションってこういうところだっていうのが徐々に確立されてきていて、日本人も徐々にわかってきている感というのもあるような気がしていて。だから以前よりちょっとずつ洗練されたファッションというか、日本人らしい独特の着こなしプラス洗練された、ロンドンとかから影響を受けたファッションというのが増えてきている。で日本人独特の着こなしも増えてきているので徐々に洗練されてきているのかなと思います ね。

―そこは自分達の影響もあると思いますか

まだそこまでは感じていないというか、勿論そういう人達を発信して日本のファッションを見れる環境は作れていると思うけどまだそこまでは行ってないです。 実際DROPが撮っているようなお洒落な人達って色々海外の雑誌を見てコレクションも自分達でチェックした上でそういう着こなしをしているからDROPを見て着こなしをしているとは思えないですね。

―日本らしいファッションという部分についてもう少し詳しく教えてください

日本ってやっぱりレイヤーは発達していると思うんです。海外のコレクションに来ている関係者とかを見ると海外って基本的にロンドンでもそうだけどシンプルに着るというかあまり着込んだりとかっていうイメージってないんですよね。厳密に言うとそうではないかもしれないけど一枚さらっと着てハイヒール履いているイメージが強いですね。でも日本人はそうじゃなくて日本人らしいものってあるような気がするんですよね。それは元々中身が日本人だからというのもあると思うんですけど。柄物も海外の人とか見てると好きな人は勿論いて、着てる人もいるんだけど日本ほど柄物を使ったコーディネートをしている人はあまりいないと思うし。

―以前ロンドンスナップもやられていましたが今のところ東京のスナップが中心になっています。これからも東京にこだわろうと考えていますか、それとも海外のスナップなども増やそうと考えていますか

この前うちの子が大阪に行って撮影してきたんだけどやっぱり東京との差は出てきてるという話をしていて、だからとりあえずないですね。とりあえず東京ですね。いずれは(海外も)やりたいという気持ちはありますけどそういうキャパも今はないのでもうちょっと色々体制が整ったらやれたらいいけどまだ東京だけですね。

―雑誌Lassie Paperを作ろうと思ったのはなぜですか

Lassie Paperは2年半くらいDROPをやっていてストリートで格好良い物も格好悪い物もいっぱい見てきた。その中から自分達が格好良いと思える人だったりカルチャーだったりをうまく形に出来ないのかなって。ウェブには持っていない魅力、紙でしか残せない感じというのはあると思っていて。もともと僕もウェブとかあまり好きじゃなかったし、雑誌の方が大好きだったし、今でも雑誌をよく買うしそういう価値が雑誌にはやっぱりあって、今見つけた良い物というのを誌面に落としたかった。やっぱり日本の雑誌ってハイモード誌になるとなかなかストリートのリアルなコンテンツを扱いにくくなってくる、ページがあるとしても少ししか割かない。でもそれってどうなんだろうって思っていて、結局リアルな感じがしないというか。僕はもともとファッションの業界に生きてきた人間ではなかったという部分もあるからモードの面白い部分もあると思うし、エディトリアルもよく見る。だけどストリートの面白さもDROPでわかって、その中で格好良い人達や面白いカルチャーもわかったからそういうものも好きだし逆に音楽、映画も好きだからそういうコンテンツも入れたかったし、アートも好きだし紹介したかったからどれに特化することなく色んな要素、良い物を凝縮したかったというか自分のやりたい物をやったという感じですね。やっぱり DROPの読者に買ってもらわないと売れないと思ったのでDROPの読者が響きそうなネタは勿論用意していてスナップとかわかりやすい物はいれていますけ ど。

―リアルな部分と言って表紙に出ているラインアップを見てみると割とストリートで支持されているものとは違うのかなとも感じました

確かにそうですね。でも共通しているのが全部のブランドがストリートに興味を持ってくれている。BernhardもそうだしMarjanもそうだし、 writtenafterwardsもそうだし。東京のストリートシーンにちゃんと面白みを感じてくれているというそういう部分でちゃんと共通していて。だから逆を言うと(ストリートに)理解があるブランドというか。コレクションブランドを扱うのってDROPしかメディアがない自分達としてはなかなか難しかったりするんですよね。例えば大きい雑誌社からモード誌が創刊されるというのであれば出たいブランドはいっぱいあると思うんですけど、あまり実績もないからそこで理解してくれるところというのは本当に貴重な存在だと思うので僕たちは取り上げたいと思ったんです。

―中身を見ずに表紙を見ただけでの感想で言うとDROPじゃないなって思ったんですね。というのは表紙の写真がお洒落過ぎると思ったんです。

DROPが出すストリートの雑誌、例えば読モを表紙に使ってストリートスナップを出しても結局同じじゃないですか、ウェブで見れるという話で。でもウェブじゃなくて雑誌で出すから雑誌でしか味わえない価値というのをもうちょっと入れたかったというか、DROPとは若干スタンスを変えたかったんですね。『DROPの読者が一歩背伸びをして読める雑誌』そういう雑誌にしたかったんですね。

―この雑誌から新しいカルチャーを生み出したい、そういう気持ちもありますか

新しいコンセプトの雑誌とは思いますね。日本の雑誌だとやっぱりカタログ雑誌が多いじゃないですか。基本は商品を紹介してみたいな。そういうのではなく基本ビジュアルで世界観を表現したり、そういうものが出来て尚且つモードの要素も入りつつ、ストリートの要素も入りつつ、アートやヘアカタも紹介しつつ。僕が知っている中ではこういう雑誌は今まで無かったなと思うんですよ。そういう意味では新しい雑誌になったと思います。

Interview, Text/Masaki Takida

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