先日のトークイベントにお越し下さった皆さまありがとうございました。
椹木野衣さんが『シュミレーショニズム』(洋泉社1991)のなかで総括しているように、80年代に登場した「カットアップ、サンプリング、リミックス」という手法は、90年代前半にはファッションデザインにおいても多用されるようになりました。
平たく言えば、デザインにおける「編集」という方法論です。
90年代にセレクトショップやスタイリストが注目されるようになるのもここに関係しているかなと思います。
ア・ベイシング・エイプ®の仕事は、NIGO®のモノマニア的な視点=編集者としてのセンスから、アメリカン・カルチャーを次々とサンプリングし、それらを東京的な感覚でリミックスすることで、無数のバリエーションを作り出していくことにあったと僕は考えます。
例えば、ブランド開始初期に見られるオネイタ、キャンバー、チャンピオンのTシャツやスウェットをボディに使用し、それらにプリントしていく服作り。
あるいは、リーバイス、リー、ラングラー、ブルックス・ブラザーズなどのオリジナルタグをモチーフに、パロディ的なエイプタグを次々とデザインしていった行為。
それから、カーハート、ステューシー、エクストラ・ラージに始まり、リーガル、ソレル、モダニカ、ハミルトンといったアメリカのストリートブランドやプロダクツブランドとのコラボレーションなどなど。
それは、アンディ・ウォーホルのポップアートとも、グラフィティアートのマーキングとも、ヒップホップのマッシュアップとも通じるような仕事だったと思うのです。
「エイプカモ」や「ベイプスタ」に見られるバリエーションの豊富さはその代表例ですね。
「リミックス」というデザイン手法は、今日しばしば取り上げられる複製問題や著作権問題とも関わってくることなので、これからも考えていきたいなと思っています。
(続く)