Interview

Jenny Fax 2014 S/S Collection “綺麗な山 綺麗な水” 1/2

台湾生まれのデザイナーシュエ・ジェンファン氏が手掛けるJenny Fax。
小さい頃にはじめて見た景色、感じた香り。少女時代に見たブラウン管の奥にひろがるキラキラした世界。
とてもきれいなわけでもないし、とてもブスだったわけでもない、いわゆる普通の女の子。女の子ならば経験したかもしれない感覚。
そんな儚い記憶の断片、頭からずっと離れない大切な思い出を、大人になった女性が纏う洋服に蘇らせたい。
とてもパーソナルな思い出が、未来の自分をつくっていくという可能性を「Jenny Fax」を通して、普通の女の子が踏み出す新しい一歩に変えていく。

―今回のコレクションのテーマはなんだったのでしょうか?

綺麗な山、綺麗な水です。それを漢字で書いていました。
小さい頃に私の妹がサマーキャンプに行きました。その時のタイトルが“綺麗な山、綺麗な水”でした。ただその漢字の感じが好きなだけでテーマには特に意味はありません。

―ショー後の囲みインタビューでは自身は台湾を離れて14年も経ち今自分がどこにいるかわからない。そのどこにいるかわからない気持ちが今回やりたかったこと。ストーリーはなく、根本にリピートがあり元に戻るとか繰り返すがテーマだったので2つのショーの音楽は同じにし、1回目のショーはファッションショーで2回目は自分に近い。モデルの顔が汚れていたのは自分が小さいころにいつも泥まみれだったと語っていました。

小さい頃汚れていたからモデルの顔が汚れていたというのは嘘です。嘘ついてしまいました。

―え、嘘だったんですか?なんで嘘ついたんですか?

早く答えを欲しがっていると思ったので。なんとなく急いで喋ったら嘘をついてしまいました。

―14年間の話に関しても嘘だったんですか?

いそれは本当です。私は台湾を離れて色んな国で生活しましたがそれぞれの国によって文化は違います。例えば日本人は電車の中ではそんなに大きな声で話はしません。でも台湾では大きな声で話をしたりするのは普通だったりする。日本で電車に乗っていて時々台湾人や中国人が大きな声で喋っているのを見ると私は台湾人ですが凄く不快に感じてしまったりしていました。それはきっと自分が日本に住むことによって日本の文化に慣れてしまっていた。ちょっと日本人っぽいって思ってそんな自分が嫌でした。海外に住んだ経験がある人ならわかると思いますがその国に住むことによって知らず知らずのうちにその国の文化に溶け込んでしまっていたりします。自分にも日本人っぽい部分があった。そんな自分は凄く調子にのっているなって思っていたんです。
コレクションの後など今でも休みがあれば年に2度ほどは台湾に帰ります。久しぶりに帰ったからお父さんお母さん、家族がみんな私と話をしたい。でも14年間も住んでいなかったら変わってしまう。場所もそうだし感覚もそう。昔の友達も全員仕事しているし、台湾に戻っても友達もいないんです。でも台湾に帰ってもあまり落ち着かない、リラックスできない自分がいてその理由がわからなかった。実家に戻るのに全然実家に帰ってる感じがなかったんです。
だから前回のショーが終わった後台湾ではなくカンボジアに旅行に行きました。カンボジアを選んだ理由は街を歩いていても誰にも会わないからです。台湾に行っても、東京にいても、パリに行ってもどこかしらで知り合いに会ってしまいます。でもカンボジアでは知り合いに会いません。だから行こうと思ったんです。正直そんなに興味があったわけではないけど行ったことない場所に行きたい。だからカンボジアに逃げるような感覚で行ったんです。

行ってみたらカンボジアは20,30年前の台湾、自分が小さかった頃の台湾のような感覚でした。まだ電気を使ってる家も少ない。裕福でもないし、道も未完成、ゴミも多い。バイクと自転車ばかりで車があまりない。凄く台湾っぽいって思ったんです。私が小さい頃もお父さんがバイクを運転してその後ろに子供とお母さんを乗せて6人くらいで観光したりしていました。
カンボジアにはワニが見れることで有名な川があります。でもそれを見に行くには凄く遠くてタクシーみたいなバイクで料金を交渉して行くんです。タクシーの人も私たちが日本人と分っているので出来るだけ高い料金で交渉してきます。でも私は自分で働いてお金を稼いでいるから物価は安いし、交渉しても日本円にしたら対して変わらないかもしれないけど日本人だからと思ってたかられるのが嫌だったので粘り強く凄く交渉したんです。私は私たちが日本人だからといって普通よりお金を払うのが我慢できない。だからディスカウントしてくれって言ったんです。でも(坂部)三樹郎さんは1ドルくらいで喧嘩しないでくれって言っていました。バイクでワニが見れる川まで行くのには1時間くらいかかります。長く座っていて、後ろから眺めていたら嫌だと思っていた運転手がだんだんうちのお父さんに見えてきたんです。お父さんはいつもバイクに乗っていた。大雨でも暑い時でも。
最初は私あの運転手超嫌だと思いながら乗っていました。でもどんどんお父さんに見えてくる。いつもお父さんの後ろで座っていた自分を思い出した。カンボジアに行ったけど20年前の自分や住んでいた場所と似ていた。なんだか自分が今まで悪いことをやっていた気がしたんです。台湾帰るの嫌だ。台湾帰るの嫌だって言ってカンボジアに行ったのに結局台湾を思い出してしまった。自分は調子に乗っていたんです。
本当は旅行に行く前にやりたいことや使いたい生地も色々決まっていたんです。でも旅行から帰ってきてからやりたいことが変わった。今回のコレクションは一番ネガティブなコレクションになると思った。自分のことが凄く嫌いなコレクション。

―具体的に旅行前と旅行後でコレクションはどう変化したのでしょうか?

カンボジアに旅行へ行く前は自分自身調子に乗っていたと思います。Jenny Faxというブランドに対してのみんなのイメージは可愛いものを作っているというイメージだと思います。だからそれに対してみんなが望むような可愛いものを作ればいい、作らなきゃいけないという部分がどこかにあった。凄く調子に乗っていたんだと思います。可愛いものをファンの人たちが望んでいるから作っているというか。勿論その部分も自分のテーストでもあったのですが、周りのイメージに自分のコレクションをあわせないといけないという気持ちもあったんです。

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