Interview

Jenny Fax SS2013 “LOVE” 1/2

今年10月、宮下公園にてショーを開催したJenny Fax。「LOVE」をテーマに90年代トレンディードラマから切り取った要素を盛り込んだ独自の世界観を、映像や音楽と共にブランドのフィルターに通し、最大限に引き出した。

レース、オーガンジー、ケーキ柄といった”女の子”をイメージするような素材やモチーフを扱いながらゾンビメイクなどホラー要素を融合させ、幸せだけではない愛のアンバランスさを表現したというどこか毒気のあるスタイル。3つのシーンで構成するストーリー性のある展開が印象的であった。

今回はデザイナーであるシュエ・ジェンファン氏に、コレクション発表に至るまでの「LOVE」というテーマの背景にあるエピソードを中心に話を伺った。

→Jenny Fax 2013 S/S Collection
→Jenny Fax 2013 S/S Collection Backstage Photos

―なぜ今回は”LOVE”がテーマだったのでしょうか?

前シーズンMIKIO SAKABEAW2012のことなのですがコレクション期間中凄く忙しくて私はずっと夫婦間のことに関して「この関係なんなのだろう?」って考えていました。仕事もプライベートも一緒、寝ている場所も一緒で24時間共に過ごしてはいましたが、でも傍に入るけどお互いに心が近くにない感じ、傍にいない感じがしていました。それで私がショーが終わり家に帰ってリラックスしながら東京ラブストーリーを聞いていたんです。その時にLOVEをテーマにコレクションを作ろうと決めたんです。旦那さんの帰りを待ちながら。
そして翌日、忙しかったのが全部終わり、目が覚めた瞬間に彼が自分のところに戻ってきた感じがしたんです。また普通の日常が始まり「何ご飯食べたい?」とか普通の夫婦生活に戻りました。
でも忙しいときはまた私の傍からいなくなってしまう。付き合いたての頃のように戻って欲しい。だからLoveをテーマにコレクションを作ろうと思いました。
みんな恋愛に憧れていた時期ってありますよね?私がその憧れが一番強かったのは12歳の時、東京ラブストーリーを見てた頃なんです。ドラマを見ながら「こういう恋がしたい!
そう思っていました。カンチ(織田裕二)は優柔不断でだらしない男なのですがヒロインのリカ(鈴木保奈美)恋に対して積極的に頑張っていた。自分の幸せは自分で勝ち取る、そういう風に自分もなりたいと思っていました。女の子は好きな人がいてもなかなか自分から好きとはいえず待っている人が多いと思います。でも私はそれはよくないことだと思います。自分の幸せは自分で掴まなければいけません。

―東京ラブストーリーと101回目のプロポーズはどちらが理想の恋ですか?

101回目は少し気持ち悪い、だからありえません。東京ラブストーリーの方が私にとっては理想に近いです。自分で自分の好きな人を探すから。誰かがあなたを愛するから愛するのと、自分が愛した人を愛するのでは大きな違いだと思うのです。私自身は誰かが私のことを愛してくれるから選ぶのではなく自分が愛する人に自分のことを愛してもらいたい、一緒になりたいのです。
どちらのドラマも見ましたが今見ても面白いと感じました。

―オフィス恋愛も描かれていたようですが?

私自身そういうところで働いた経験はありませんのであくまで私の想像の中でのオフィス恋愛です。
オフィスのコピー機の裏に隠れてキスをしたりだとか、隣同士の席だけど勤務中にe-mailでラブレターを送ったりだったり、自分なりのオフィス恋愛のストーリーも考えました。

―Jeny Faxのコレクションはいつも90年代というのが一つのキーワードになっているような気がします。

勿論2000年代に入ってからの記憶の方が凄く鮮明にありますが90年代のころの記憶の方が自分にとって一番大事な時、青春の時期でしたのでその時代を描いていることが多いです。
今回も自分が実際に持っている服、それを現代風にアップデートしたものも作ったりしています。
見ていた頃は子供でしたが、子供ながらに恋愛にあこがれていましたので気持ちは大人なんです。

―90年代とともにドラマからのインスピレーションも多いですよね。以前もアメリカのソープオペラから着想を得たコレクションを発表していましたし。

そうかもしれません。私はテレビが大好きで家に帰ったら絶対にテレビを見るんです。それも影響をしていると思います。
ドラマは最近はもう見ないんですけど小さいころはずっと見ていました。恋愛だけじゃなくホラーも好きです。

―テレビが好きだからテレビを使っていたのでしょうか?

そうではありません。Jenny Faxは服だけでなく全体の世界観が凄く大事なブランドです。だからテーマを決めるより先に音楽を決めました。
ファッションショーだけでもない、映像だけでもない、2つをミックスしたものがやりたかったんです。私自身シンプルなファッションショーは好きではありません。
でもいつもはもっと複雑だけど今回は自分の中では凄くミニマムだったと思います。
私はラフシモンズのようなデザイナーになりたい。シャープな感じ、そしてミニマム。だから今回の場所はフューチャーな感じにしました。勿論私自身は彼のようなコレクションは作れませんがそこに近づきたい、自分なりのラフシモンズっぽさを表現しています。

―コレクション自体にストーリーはあったのでしょうか?

実はファーストルックは私自身の子供の頃の姿を投影しています。ファーストルックは緑の服とスカートを着て手には髪の毛を持っています。
東京ラブストーリーの最終回の日、翌日から中学校が始まるので(規則が厳しいので)私は髪の毛を切りにいかなければいけませんでした。私の髪の毛は凄く長かったし、その頃の私にとって髪の毛はとても大事でした。だから最後の瞬間まで切りたくなかったんです。そうしていたらそれが東京ラブストーリーの最終回と重なってしまいしょうがなく最終回の時に髪を切りに行ったんです。でもどうしても最終回が見たかった、だから自分の髪の毛を持って走って帰ったんです。でも結局は間に合わずに見れませんでした。だから私は話の結末は知りませんでした。今回のコレクションを作る上ではじめて最終回を見たんです。

音楽は最初は“ラブストーリーは突然に”(東京ラブストーリー)で突然恋する瞬間のスピード感をイメージしています。
2曲目に使用したのはStevie Bの”Because I love you” 甘いラブを表現しています。OLをイメージしていますがランジェリー中心のルックになっています。3曲目はゾンビ映画“30weeks later”の曲を使用しています。スピード感がありますがでもすごく怖い曲でもあります。恋愛はいつも幸せではなく怖い瞬間もある、それを表現しています。夫婦生活も幸せな一面は勿論ありますが正直ネガティブな部分もあります。ポジティブな部分があればかならずネガティブな側面もあるのです。

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