Interview

SAYAKA MARUYAMA 3/4

自分たちの中では、ファッションとアートのちょうど境界にいるという立場でやりたかったので逆にパーソナル感が強かった。なのでファッションの人にもアートギャラリーの人にも見てもらってやり切った感がありました

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―「BLOOM」(2011)はキッズカンパニーの子供たちと一緒に製作していますが、どういった縁だったのですか?

VOGUEで働いていたファッションスタイリストの人が、VOGUEを辞めてキッズカンパニーで働き始めたんですね。それでこういったボランティアスタッフとして働いていたんです。
彼女がロンドンのTHE ROYAL ACADEMY OF ARTSというミュージアムでキッズカンパニー主宰のイベントをやると言い出してきて、映像をやりたいんだけどコラボレーション出来ないかということでした。
それで子供が被写体というのも新しかったし、やりたいなと思って。訳ありの家庭の子がいたり、親に問題があったりする子供たちがすごい幸せな日を過ごせるんじゃないかというのがテーマだったんですけど、ボランティアでやってみました。

―子供達から圧倒されるような影響を受けましたか?

子供ってあんまり扱ったことないし、そんなに得意じゃないんですよ。でも何か子供と接してみたいかも、そんなチャンスもないなと思ったんです。しかも20人くらいいたかな、一度に結構大量だったのでパワフルで凄かったです。
でも子供だから逆にコントロールが出来ない。つまんなかったら本当につまんなさそうな顔をするじゃないですか。大人じゃないからモデルみたいにこうしてとかも言えないので、とりあえず飽きさせないようにトランポリンやカラースプレーを持っていったり、ネタをいっぱい用意しました。そしたら本当に一日中元気でずっと飛んでて、こんなに喜んでもらえるとは思わなかったなと思いながら、トランポリンが壊れそうでハラハラしてました。

―衣装は本人たちが制作したのですか?

そうです。子供たちが自分の衣装を1人1人作っています。 ベースのチュチュみたいなのとかは多少そのスタイリストの子が仲介したり、手伝ってはいると思います。でも冠とか羽根は自分たちで作っています。

―材料はどうやって用意したのですか?

イギリスはこういうボランティア関係のイベントにすごく理解があります。ジョン・ルイスとか、日本でいう東急などの大きいデパートやユザワヤに行って「こういう布必要なんです」っていうとタダでくれるんです。好きなの持って行っていいよ、みたいな感じで。凄い高そうな生地をジョキジョキ切って使っていました。

―万華鏡みたいですね。

そうですね。万華鏡をちょっとイメージしました。グラフィックを入れています。

―加工は後から入れたのですか?

そうです。手描きのイメージを万華鏡アニメーションにしたものを重ねています。色もカラフルで目紛しい、子供っぽく、楽しそうにみたいな。基本暗めの作品が多いからこれは明るくいかないと、と思ったんです。それですごいカラフルにした方がいいかなと。

―子供たちはどういう感想でしたか?

「自分に自信が持てました」という感想があって、普段結構抱えてるのかなと思いました。みんなすごい自然体で良かったんですけど、中にはやっぱり気性が荒い子もいましたね。アップダウンが激しく、すごい喜んでるかと思ったらガン落ちしていたり。
ちょっと不安定な子もいましたけど、基本的にみんなすごい楽しんでて、自分のキャラになりきっていました。お姫様とかレインボーとか。男の子2人は兄弟でスーパーマンらしいです。5〜12歳の子供たちです。

―この後にまた大人の女性を撮る、そのスイッチの切り換えってどうしているんですか?

でも全然ものが違うかもしれないです。やっぱり被写体から発せられるエネルギーが違うから。子供といる時は子供メインというか、映像撮るとかって受け身ですよね。そんなにコントロールしてここをこうやってください、というものでもないので。
モデルにこう動いてとか、たまに言うけどあまり言わないです。適当に動いて、みたいな感じです。その人から出てくるものから力をお借りする場合はありますね。自分で言うと自分のアイディアしか出てこないから。動きとか「ちょっと動いてみて」っていう感じでやってますね。

―モデルに任せても動いてくれますか?

はい。だからロンドンにいる人ってすごいと思いました。やってと言ったら「うん」って言ってやれる。この後にロンドンファッションウィークで、この人たちが実際に動いているファッションパフォーマンス (DEJA VU) をやったんです。その時もリハーサル1回くらいで、当日現場に集まってもらって「1人1分くらいで歩いて。でも普通に歩くんじゃなくて何か表現してキャラクターになりきって。」と言ったぐらいで、あとはOKみたいにみんなやってました。1人1人違ってすごい面白かったですね。

―彼らはそのイメージをどこから得ているのでしょうか。

多分ショーをやる時には映像も出来上がっていたし、写真もあったのでそこから彼らが感じたものを表現してくれたんだと思います。
勿論、大体私達が作りたい世界観が分かっています。撮影の日ってみんな別撮りしているので他の人の動きを見ていないんです。ただ来て1人で撮って、じゃあバイバイという感じで。
それから合わさったものを1度見てもらって、それで理解してもらえたのかな。感覚的な作業が多くてあまり決めごとはないです。

―ショーは具体的にはどういうものだったのですか?

基本的にはファッションウィークにあてた、TOMIHIRO KONOが作ったヘッドピースのコレクションの発表という感じで1日だけやったんです。2010年の9月に。プレスの人やいろんなエディターに見てもらいました。 アートギャラリーの人をはじめ、ファッション関係の人が多かったですね。

―それがきっかけでファッションの分野で仕事が増えたりしましたか?

そうですね。でもこれに関してはやり切った感があったので、だんだん増えてきてはいますけど、特別これをきっかけにということでもないです。
自分たちの中では、ファッションとアートのちょうど境界にいるという立場でやりたかったので逆にパーソナル感が強かった。なのでファッションの人にもアートギャラリーの人にも見てもらってやり切った感がありました。
ただこれをいわゆるファッションに落とし込めないので、仕事が来るという面では多分違う流れがありますけどね。総合的に見て私達がやっていることが好きで、仕事が来ることはありますけど。

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