Interview

Jenny Fax “The Last Show” 2/2

記憶と言うものは一人ずつ全く違うけど深い部分でどこかで繋がっている部分もあるのではないか、そう思うんです

Jenny Fax “The Last Show” 1/2

―今回のコレクションを行う上でたくさんのブランドが3月11日の震災をキーワードにあげていましたが実際にクリエイションにおいて何か反映されたことってありますか

それはありません。
前回のショールームの時、知らないおばさんが私の服を見て「自分の若い頃に戻れたらこの服を着たい」って言ってくれたんです。それを聞いて記憶と言うものは一人ずつ全く違うけど深い部分でどこかで繋がっている部分もあるのではないか、そう思ったんです。彼女は私のことは全く知らない、勿論私も彼女のことを全く知りません。にもかかわらず彼女は私の服を見て自身の記憶を呼び戻した。どこか繋がる部分があると思いませんか?
私は昔のことを考えたら将来のことをもっと頑張りたいと思うんです。「Memory is very powerful future」 だって。

―前回のインタビューではランウェイショーはあまりやりたくない。自分のブランドにはプレゼンテーションと言う方法があっていると言っていました

今回のものは通常のランウェイショーだとは思っていません。パフォーマンス色が強いというか、プレゼンテーションと言う言葉の方がより近いと思っています。

―自分の周りでも凄く評判が良かったし、ショーは凄く面白かったという声が多かった。でもその半面「誰が着るの?」って言う声も多かったです

そういう声があるのはわかっています。今回のショーのことは坂部に凄く感謝しています。坂部から「自由にやって良い」って言われていたんです。大抵のショーではショーピースと売るモノ(売れるもの)でちゃんとバランスが取れている。でも今回のショーに関してはそういうことを考えず自分の作りたい物を作った結果、ショーピースがほとんどになってしまいました。でも私自身は自分の服をポップだとは思っていません。

―だからこそ展示会でどんな服があるんだろうと思って見たらショーで使われた服がそのまま並んでいたので驚きました

でもそれでも「買いたい」って言ってくれるバイヤーさんがいたことに私も驚きました。正直自信がなかったですし、凄く有難いなと思います。作った時は売れなくても良いとも思っていた。だから値段も考えていなかったんです。

―実際どのようなお店の人達が評価し、買い付けてくれたのでしょうか

特にアジアのバイヤーには好評でした。最初はショーピースと思い作っていた服も購入したいと言ってくれるバイヤーさんがいました。
日本の店舗に加え、ロシア、中国、香港、台湾、ベルギーのお店が今回の商品を買いつけてくれました。

―量産が難しいものも多いと思いますが

頑張って作ります(笑)ショーピースはほとんど自分達で作ったものなので。
ショーピースの中には妹の結婚式用に作ったワンピースも入っています。ショーの直前に妹の結婚式があったのでその為に作り、それをまた自分達で持ち帰り少しリメイクしたもの、それをショーにつかっています。それにもオーダーが入ったのですがそれは作るのが大変だったのでさすがに売りませんが。

―生産性って考えているんですか

それは全然考えていないですね。生地もオカダヤで買ったりしています。良いもの、使いたい物を揃えてとりあえず作る。オカダヤには良い素材がある。でもそこで買って作ってしまったら量産は難しくなりますよね。でもそこは考えないで作っている。だから生地は変わってしまう恐れもあるし、出来ないものに関しては最初から売りません。

―今後も今のイメージを継続していくのですか。それとももう少しready to wear(既製服)になっていくのでしょうか

今回のショーで私が小さい時に着たかった服を全部作ってしまったので次回はもう少し着れる服になるのかもしれません。ただ私自身まだわかりません。

Jenny Fax 2012 S/S Collection リサーチブックより

―ジェニーファックスの記憶はどのように想い出されるのでしょうか

思い出すのではなく記憶の中に存在するもの。4人兄弟だから小さい頃はいつも一緒に遊んでいた。家族みんないつも一緒だった。だから記憶を思い出すということではなく、何も見なくても覚えているんです。

―ジェンファンさん自身は幼少期どんな女の子だったんですか

私の小さい頃の夢は『ミス台湾になること』でしたし、歌手にもなりたかったです。バレリーナにも憧れたのですがそれは衣装が高かったので母親の了承が得られませんでした。私は可愛くはなかったかもしれませんがそういうものに凄く憧れがあったんだと思います。
でも小さい頃からコンプレックスはありました。先生が「ミス台湾になりたい人?」って質問に手を挙げたのは私一人だけでした。でもそれに対してみんなは笑っていた。私にはそれが理解できませんでした。

―ジェンファンさん自身はいじめられた記憶はあるんですか

ひどいいじめはありません。ただ、例えばスクールバスに乗っていて、学校のマドンナ的な女の子と同じものを使っていたりしたら「なんで同じもの使っているの?」とかそういうことは言われたことがあります。

―MIKIO SAKABEとの違いは自身ではどう捉えていますか

坂部はトレンドを読める人だと思います。今の社会の出来事や若い人が何を好きか、そういうことがコレクションに詰まっている。でも私のコレクションはもっと自分の記憶や感情から来るもの。MIKIO SAKABEの女の子バージョンと言われることも多いのですが私自身は全然違うものだと思います。
それに違うブランドなのに「似ている」ものであるのなら私が新しいブランドをやる意味はありません。でも正直自分のブランドをやるよりもMIKIO SAKABEをやる方が私はやりやすい。自分の為の服ではない方がやりやすいんです。

―Jenny Faxで表現している洋服は”普通の女の子“の為の服ですが、その普通の女の子たちに伝えたいことってありますか

「自分のやりたいことをやるべき」ということですね。

―今の服作りからはあまり想像がつかないですがメンズウェアーは考えていますか

それは出来ないと思います。

―今後もショーはやっていきたいと思いますか

頑張るけどわかりません。私は作業に取り掛かるのが遅いんです。
次回のコレクションは凄く不安です。今回のコレクションは評判が良かったのかどうかはわかりませんが自分が思っていた以上に反響があった。だから次は少なからず期待されてしまう部分がありますよね。

―次回はMIKIO SAKABEもショーをやると聞いていますが、前回(2011-12A/WCollection六本木TSUTAYA)のコレクションのように一緒の場所でやるのですか

前回のようにイベント的なものにするのであれば一緒にやることも可能だと思います。ですが次回は違う場所で違う日付でやるのではないかと思います。
MIKIO SAKABEはたくさん人を呼び、イベントとしての空気感、それも含めてのファッションを大切にする。私のブランドはMIKIO SAKABEよりファッション。だから今くらいの規模で充分だと感じています。

INterview & text:Masaki Takida

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