STOFやbedsidedramaなど、ファッションレーベルを立ち上げ、ディレクション/デザインを手がける谷田 浩氏。デビット・リンチの「エレファントマン」の衣装レプリカ製作、出版レーベル「POETRY BOOK」の立ち上げ、1000000人のキャンドルナイトへの作品提供、「流行通信」での連載、吉祥寺のセレクトショップ「四月」のディレクション、プロダクトレーベルTHOUSANDLEAVESの主宰等、衣服に留まらない振り幅の広い活動を展開。そんな彼の活動の原動力に迫るべくインタビューを行なった。
―まず経歴からお聞かせください。
出身は滋賀県です。ギリギリ実家から通える距離にあったので、名古屋モード学園に行きました。専攻がファッションビジネス学科でデザインの勉強もしましたけど、基本はMDやショップの企画/運営の勉強をしていました。
卒業後、元々DIETBUTCHER SLIM SKINやKEITA MARUYAMAなどを取り扱っていた大阪のセレクトショップを運営している会社に就職が決まったんですが、ちょっと理不尽な異動の話があって、結局そこは2週間でやめてしまいました。それが最初の挫折ですね。笑 そのあとパルやファーストリテーリングとか色々なところを転々と。主に接客/MDといった仕事をしていました。それから実現はしなかったんですが、DIETBUTCHER SLIM SKINの直営店を大阪に出すという話があって、一瞬働いていたよしみでそのブランディングをさせてもらうことになったんです。その話をきっかけに当時まだデザイナーだった民さん(DIET BUTCHER SLIM SKIN デザイナー深民尚)と知り合い、意気投合して、DIETBUTCHER SLIM SKINを運営するMETAL BURGERを設立する際に上京しました。DIET BUTCHER SLIM SKINでは主にセールスを担当していたんですけど、設立したときは3人の小さな会社で色々な仕事をする機会があったのでいい経験になりました。元々ブランドをやりたいという思いがあったのですが、METAL BURGERの中ではなかなかむつかしい状況があったので、STOFを立ち上げ、26才のときに独立しました。
―谷田さんはインタビューをあまりやられていない印象がありますがそういう取材は受けたりするのですか
何度か受けたことはあるのですが、ニュアンスが変わってしまったり、真意が伝わらなかったりするので、インタビュー自体にあまりいい印象がなくて、最近はあまり受けないようにしています。そもそもあまりしゃべるのも好きではないですから。できればアンケートっぽいものの方がいいです。
―STOF, bedsidedrama, STORAMAなど何個もブランドをやられていますが何故いくつもブランドをやられるのですか?
山があるから登る、みたいな自然な流れですね。逆になぜみんながひとつしかブランドをやらないのかがわからないんですよね。いろんなテイストのブランドをつくって、売る部分は別の誰かにお願いしたいというのが本音です。
―作りたいものが明確にあるということではないのですか?
つくりたいものが明確にあるからこそレーベルを分ける感じですね。前の話にも少し関係しますが、ブランドを分けないでいいなら分けないほうがいいと思います、しかしやはりテイストが多岐にわたるとブレたと思われてしまうので分けざるを得ない。
―ブランドがブレるとやはり駄目なものですか?
単純な話をすると売れなくなりますよね。今季が良くても次のシーズンでテイストの違うことをすれば客層も変わってしまいます。小さなブランドだと認知もあまりされていないし、そこで方向性をガラッと変えてしまうと今までいた顧客が離れ、また1からのスタートになってしまうかもしれない。そういうリスクはあると思います。その話とは真っ向からぶつかりあうのですが、例えばシーズン50型すべてに違うネームやプライスタグをつけて、すべてが違うブランドの商品であるかのように見せるというコレクションをいつかSTOFでやりたいなと思ってあたためてます。面倒だし、無駄にコストかかりそうですけどね。笑
―色々される背景には1つのテイストに飽きやすいということもあるんですか?
飽きるというよりは、流れのままにそうしているという感じですね。もちろん自分にはずっと自分らしさがあり、良くも悪くもそこからは逃れられないと思うのですが、自分らしくしていると結果、人からはいろいろしているように見えるんだと思います。個人的にはすべてひとつのことという認識ですね。
―作りたいものを作っているのではないですか?あとは美しいものを作りたいという欲望であるとか。逆に谷田さんは何に喜びを見出すのですか?
すごく忠実につくりたいものをつくっているタイプだと自己分析しています。いろいろ考えているだけで楽しいですね。正直な話、つくることが好きすぎて、展示会のときには少しテンションも落ちてます。売上も、リアクションもそんなに気にするタイプではないので。
―抽象的なことを考えていることが楽しいということですか?
抽象的なことも具象的なことも考えていること自体が楽しいですね。特にSTOFはシーズンテーマを設けているので、それを考えているときが一番楽しいです。
―テーマを決める理由は何ですか?
乱暴に言えば、そのほうが面白いからやっています。
―作っていて面白いということですか?
もちろんそれもありますが、着陸地点側の人たちにとってもテーマがあったほうが伝わりやすいのではないかと思います。わかり易いテーマはやはり受け入れられやすいという傾向もありますし。
―そんなものなのですか?
そうですね。あらかじめテーマで売れるか/売れないか、ある程度読める部分はあると思います。
―例えばどういうテーマのモノが売れやすいのですか?
ミリタリー関係のものは受け入れられやすいと思います。あと音楽系のものであったり。
―逆に売れないテーマはどういうものがありましたか?
宗教をテーマにしたときはダメでしたね。思想的なものが強すぎるとビジネスとしては難しいかもしれません。
―その現状にどう思いますか?
それでいいと思ってます。すこやかな世界なんじゃないでしょうか。
―つまりそれはファッションが社会性を謳ってテーマを掲げたとしても市場は求めていないということですか?
難しいでしょうね。 市場に求められたいのに、社会性を謳うなんて欲張りだなと思います。