今や日本のお家芸ともなったアニメやハローキティに代表される「かわいい」というカルチャー。しかしもともとはウォルター・イライアス・ディズニー、通称ウォルト・ディズニーが作ったミッキーマウスがことの始まりだ。故に「かわいい」というカルチャーの系譜がアメリカにあるのは当然と言えば当然なのだが、アメリカでのファッション界においては一際マイノリティーなジャンルだと思っている方も多い。しかし今回のインタビューのお相手Erika Waltonの「Alter Ego」はアメコミのキャラクターや、ミニカーで作ったブレスレットやネックレスを制作しているブランドで、今やアメリカや日本だけでなく、世界10カ国、150店舗で取り扱われ人気ブランドだ。またワーナー・ブラザーズと正式にライセンス契約をするなど、起業家としても注目されている。そんな世界が注目し、「かわいい」の本流とも言えるアメリカ出身のERIKAに色々と伺った。
―ブランドが出来るまでの経緯を教えてください。
始まりは15歳のときに赤ちゃんの子守をしている最中に使わなくなった玩具で装飾品を作ったことから。そしていくつか試作品を重ねてできたのがカー・ブレスレットです。これがユニークだったらしく、評判が良くて。それを売ればお金が稼げて好きな服やアクセサリーがたくさん買える、こんな楽しいことはないと思ってすぐ実家のガレージで量産を開始しました。
―ALTER EGOというブランド名の由来を教えてください。
実は15歳のときにはどういう意味か分からなかったんですけど、何となく響きが良かったので付けました。それである時Billabongというサーフ系のアイテムを扱うお店に持っていったときに、「何でその名前にしたんだ。」と言われあわてて家に帰って辞書を引いて調べてみると、意外とぴったりなブランド名だと気付きました。Alter Egoというのは別の自分という意味ですけど、それはアメリカのアニメではよくあるセッティングですよね。スーパーマンも、スパイダーマンもそういう別の側面を持っていて、このブランドが作るアイテムもそういった所があると。つまりミニカーや玩具というのは子供のころに遊んだもので、そのころの記憶は本当に楽しくて幸せな思い出しかないじゃないですか。そうした楽しかった思い出を呼び戻すというか、過去の側面を今感じるアイテムというのはAlter Egoという言葉と同じ意味だと思ったんです。大人はみんな子供のころに戻りたいと思うけれど、それは楽しい思い出があるということで非常に良いことです。ですからタイムマシーンは作れないけど、こうしたアイテムを通してノスタルジックな思いに浸ってもらえたら嬉しいです。
―ブランドを2つ持っていますがそれぞれの違いについて教えてください。
Erika Walton Jewelryは大量生産のもので手頃に購入できるラインで、Alter Ego By Erika Waltonは50年代~90年代のヴィンテージのオモチャ、ストーン、ビーズ、チャームを使用している一点物のエクスクルーシブラインです。やはりAlter Ego By Erika Waltonのほうが自分の自由度は大きいし作っていて楽しいです。
―昔からアメリカのアニメを見ていましたか?
ええ、すごく好きでした。今は商品研究のために見ていますが。グリーンランタンのアイテムを最近作ったのですがそれもしっかり研究して、どうしたらリアルに表現できるかストーリーだけでなく、服がどう風によってたなびくかなどディティールには細心の注意を払いました。ただそれ以上に子供の頃は車が大好きで、たくさんミニカーも集めました。
―日本のアニメはご存知ですか?
もちろん。トトロに魔女の宅急便にポニョ、ドラえもん、キキララ、アンパンマン。大好きなものでいっぱいです。
―ディズニーシリーズは作らないのですか?
なぜ作らないかと言われれば、作らないのではなくライセンスの問題で作れないというのが実態です。私はダンボが大好きでピーターパンも好きですし。ただライセンスも将来的には獲得するつもりですし、日本のアニメのキャラクターについても同じように計画しています。
―コンサルティングもされているという話を聞きましたが、どういったことをアドバイスしているのですか?
ファッションビジネスのアドバイスです。ビーズの原価がこうだから上代はこの値段でというような基本的なことで、お金をもらってということではありません。若い人たちに今まで自分が経験したことを伝えているだけです。
―モノ作りで大切にしていることはありますか?
先ほども少し触れましたが、玩具やアニメというのは子供の頃を想起させるコンテンツだと思います。このコンテンツを通して人は幸せになれるし、ハッピーになれる。私はみんなを幸せにしたいし、楽しい世の中がいい。そのために何ができるかを考え実行することが大事だと思います。
今回のインタビューで1つ思ったことがある。彼女のアニメや玩具に対する愛情の根底には過去の遺産、すなわち子供のころの楽しい思い出を大人になってときどき思い出したいという欲望があるということだ。もちろんこの意見をアメリカ人全般の意見ととられることはあまりに乱暴ではあるが、ここに日本人との違いを見ることができるのではないか。つまり彼女は大人の立場から玩具やアニメを俯瞰してみており、過去のものとして完全に分離している。一方われわれ日本人の多くは完全に今として消費している。戦後日本のアメリカにおんぶに抱っこで何も自分たちで解決しようとしない未熟さの文化と捉える言説で理解することはあまりにベタすぎるが、しかし今回のインタビューではそう感じたことは事実である。クールジャパンと謳って日本の文化を世界に売っていくことは別に構わないが、こうした認識の違いがプラスに働くのかどうなのか。その中でErikaがなぜ人気なのか。私は俯瞰し、切り離して「かわいい」をみていたことによるローコンテクスト化が要因だと今回のインタビューで感じた。
Interview & Text:Fumiya Yoshinouchi Photo:Tomohiro Horiuchi
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Alter Ego by Erika Walton
2003年、当時15歳だったErikaが赤ちゃんの子守りをしている時に、使わなくなったミニカーを使ってユニークなブレスレットを作ったのがブランドのはじまり。ビンテージのおもちゃやビーズを使ってジュエリーを作る事で「エコ」の気持ちを表し、自分達の小さい頃を思い出すツールとしてのジュエリーを提案。全てのジュエリーはLAのアトリエで一つ一つ手作りされている。現在、世界10カ国、150以上のショップで扱われている。
HP:http://alteregojewelry.com/