Interview

Tramando / Martin Churba

Rooms23ではアルゼンチンブランドの特設ブースが設けられ、大きな反響を呼んだ。その中でもパイオニア的な存在にあたるTramandoのデザイナーであるMartin Churba。日本では既に有名になったブランドではあるが、あまり知られてない彼の素顔に迫るべくインタビュー形式で色々伺った。

―では早速始めたいと思います。Martinさんはファインアートやグラフィックを勉強されていたようですが、そもそもファッションに興味を持った理由は何ですか。

大昔のことですね(笑)。やはり家庭の影響があると思います。僕の祖父はファッションデザイナーでもう片方の祖父もテキスタイルデザイナーでした。そして両親もファッション関係の仕事をしていました。またこのエピソードが今の僕を作っていると言っても過言ではないのですが、子供のときに親が仕事で僕が預けられたのは洋裁机の上だったんです。そこで僕は残布や糸で遊んだり、生地を切って遊んだり、そういう環境で育ってきました。ですのでブランドを始めるに至ったときでも、遊びの延長からというか、もうすでにたくさんの知識を習得していましたし、環境にも恵まれていたので、本当に自然と作り始め、気付けば今に至るといった感じなんです。

―テキスタイルのデザインから仕事は始まったと聞いてますが。

ええそうです。幼少からの経験でテキスタイルが服の基礎であり、核となるものと考えていましたから、僕は得意の遊び感覚で実験を繰り返しては繰り返し、テキスタイル制作を続けてきました。ただアルゼンチンは経済面が深刻な状態でしたので若い間は進路についてはすごく悩みました。それで大学でアートやグラフィックを学んだ後に、親戚が経営しているプリントのワークショップで仕事を開始しました。そこでシルクスクリーンでものを作っているうちにテキスタイルの可能性に魅せられてこの世界に飛び込んだといった感じです。

―今回のrooms23で展示されていた2012S/S Collectionのテーマを教えてください。

テーマは「fashion now」です。今世界のファッション界にはリーダーと呼ばれる人たちがいます。そしてその基にシステムがあり、そのシステムを作動させることでこの業界は動いていると思います。その構造についての研究をしたいと思いこのテーマにしました。デザイナーは今そうしたリーダー達から搾取され、疲弊してきていると思います。リーダーが自社の商品のインスピレーションを様々なデザイナーに追い求めた結果、システムが硬直化してしまっているこの現状を探り、そして分析を通しみなさんに何か伝わるものがあればと思っています。


Tramando 2012 S/S Collection at rooms 23 特設ブース


―テキスタイルに動きがあるのが特徴的ですね。制作過程から意識しているのですか

もちろんです。ファッションは動くものであるわけだし、当然意識しています。いかに止まっている状態でなく動いている状態を想像しながら制作できるか。この視点はファッションデザイナーにとって非常に重要だと思います。

―ファッション以外にもホテルの内装やインテリアなども手がけていますね。

こういう家庭環境で育ったためかファッションが好きになりましたが、何より僕は生地の質感や風合いが大好きなんです。僕の中での意識はインテリアも服も僕の仕事は全てdress、つまり飾るということだと思っています。ですから仕事に違いがあるという認識はありませんし、境界線があるとも思ったことはないです。

―糸を使わず作るということもTramandoの特徴のひとつだそうですがそういった発想はどこからきているのですか

それは戦略的な問題です。Tramandoというブランドを作るうえで芯となる部分をどうしても考える必要があった。そして他社との違いも出す必要があった。そこからステッチのように必要なものを使わない、さらに進んで色も染めないなど様々な発想が生まれました。そうした服を作る上で必要なことを必要としないで、いかに作れるかをずっと考えてきました。そしてこの発想は今でも大事にしているし継続して行なっています。

―社会救助活動という社会にも働きかける活動を行なっていますね。

よくご存知ですね。社会とはまさに生地のように織重なっています。私の活動は様々な人に支えられ、一方で影響も与えていると思います。相互的な関係を持続していくことが何より大切ですし、そこには力を注ぎたいと思います。具体的には、経済的に豊かでない地方の人たちが作るラマの毛使用の服とコラボレーションなどです。加えてそういう社会貢献だけでなく、こうした活動がそのまま制作のインスピレーションになってもいます。

―最後に若いひとたちにメッセージをお願いします。

夢を信じることです。夢は自分の中にあります。それを信じて突き進んでほしいと思います。

Interview & Text:Fumiya Yoshinouchi

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Tramando(トラマンド)
アルゼンチンのファッションに革命を起こし続けるデザイナーのMartin Churba(マルティン・チュルバ)が2003年にスタートさせたブランド。
オリジナルプリントや独創的な加工が目を引くコレクションは、パンキッシュでフェミニンなスタイルが特徴で、Trama à Porterと呼ばれるプレタポルテとArt Coutureと呼ばれるオートクチュールで構成されている。

Martin Churba(マルティン・チュルバ)

マルティン・チュルバは、生地にゴムやビーズを圧着させて、糸を使わず服をつくるのが特徴の ブエノスアイレスのデザイナーである。
アルゼンチン・ブエノスアイレス出身、在住のアーティスト(プロダクト・テキスタイルデザイナー) Martin Churba (マルティン チュルバ)率いるTramandoは、FASHION BUENOS AIRESにて2004年 Auteam&Winter collectionからスタート。これ以前より、Maritin Churubaは、テキスタイルデザイナーとしてのキャリアを確立しており、彼の開発したテキスタイルはMOSCHINOやRomeo Gigliなど様々なデザイナーに購入されている。現在Tramandoは、身の回りのもの全てがオシャレであるようにと、洋服に限らず、DECOもののデザイン、製作にも意欲的に取り組んでいる。

HP:http://www.tramando.com/

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