Interview

西山高士×山縣良和×坂部三樹郎 3/6

「みんなが中間試験の後にテンションが下がっている中彼はクリエイションを止めなかった」

―ここ4年でアジア人が3度(ITS#6 EK THONGPRASERT, ITS#8 Mason Jung)Collection of The Yaerを受賞しています、なぜか理由があるのでしょうか

山縣:傾向としてはあると思います。それも日本人ではない、例えば韓国人のレベルが間違いなく上がって来ている。

―そこからアジア人のレベルの高さを証明することも出来ますか

坂部:レベルは間違いなく上がっている。アジア人だからヨーロッパに負けているイメージはなくフラットになって来ている。ただ学校が関係無いかと言ったらそこはまた難しい問題です。4年前のEKはアントワープだし、昨年のMasonにしてもRCAでやっぱり学校の強さは関係ある気がする。

山縣:国の強さはないけど学校の強さはある。あれだけの規模のコンペでも大体4,5校に絞られてしまう。

―ここのがっこうでも西山君以外に何人か作品を提出しました。なぜ他の人達は選ばれなかったのだと思いますか

坂部:それは結果でしかない。誰かは通って欲しいとは思っていましたが。

山縣:通るのであれば西山が一番有力かと僕は思いました。ただここのがっこうの審査でも他の生徒を押していた人がいたのも事実です。

―賞を獲れると思っていましたか

坂部:獲って欲しいと思っていましたがそこは正直そんなに期待していませんでした。

山縣:獲れてもSpecial Prizeかなと。Special Prizeの選考理由は”Pure Creation”なのでそこには当てはまるかなと。

西山:僕もSpecial Prizeを狙っていました。

山縣:僕自身もSpecial Prizeを獲っていて大賞は獲れなかった。3つ賞をもらったのに狙っていた大賞はDemna(Antwerp)が獲得した。でも僕自身欠けてる部分というのは理解していてやっぱり重要な部分が欠けていたんです。僕はその部分以外は伝える事は出来ると思っているし、坂部君や西山本人はそこの軸というのは持っているので、その部分が足されて大賞になったのかなって。

―数々の受賞者がいるにもかかわらずなぜ今まで日本人はCollection of the Yearを獲れなかったのでしょうか

坂部:日本人はというだけではないと思う。色んなタイミングがあるから一つの理由だけではないんです。

山縣:その年の審査員と傾向が関わってくるから難しいですよね。

坂部:仮に誰かが凄く推したとしても結局多数決だから日本人というのは異色な部分であるというのは間違いないと思う。だからアジア人全体的にSpecial Prizeの方が狙いやすいとは思います。平均的にレベルの高いものを作るには日本人はアヴァンギャルドから入るから難しかったのかなとも思います。だけど彼の場合は凄く色んなタイミングが揃った。

山縣:大賞は狙って獲れるものじゃない。

―その年のベストなデザイナーが必ずしも選ばれるものではないのでしょうか

坂部:それに近いものであることは間違いないと思います。

山縣:今回V&Rが来たからといっても彼らは20人の中の2人だし彼らの意見を優先させるというような審査方法ではないのでそういう意味では今の時代感、ある程度ヨーロッパとかで活躍している人達を色んなところから集めてきて、今の平均的な感覚で大賞が選ばれているとは思います。かといってV&Rが審査員ということが関係あるかないかと言われれば関係はあると思う。審査員の方が言ってたのが招待デザイナーが過去のデザイナーと違うのはV&Rが2人でそれぞれが1票ずつを持っている。そういう意味でいえば彼らが審査に関わってくる部分は少なくはないと思う。
 審査が終わった後や始まる前に色んな人と話す機会があったんですがRCAやセントマとかの学校の人が「ここのがっこうって何?」って聞いてくるんです。凄い興味を持ってくれて「どうやってるの?」って。それで若いデザイナー達が集まって週に一回で4ヶ月くらいでやってるといったらみんなびっくりして。他の学校は何年間かやって、やっと辿りつくところをそういう形でやっているから教育の部分で言っても「何だこれ」って。そういうのが出てきたというのがちょっとした影響は出るのかなって思います。

―時間じゃないというのは証明されましたよね。勿論西山君はその前に学校を卒業しているというのはありますけど

山縣:そうですね。

―ここのがっこうに行ってから自分の作品はどのように変わったと思いますか

西山:以前は三木さんという憧れがあってそこをずっと追い続けていたんですけど、自分のクリエイションがしたかったのでここのがっこうに行こうと思いました。writtenafterwardsのごみコレクションを見て「面白そうだな」って。専門学校のクラスに既にここのがっこうに行っている人がいたので体験入学に行ったら楽しかったので入りました。(アドバンスドコースを受講したのは)プライマリーコースを受講した後に「ITSがやりたい」って思ったからです。その時にITSを目指すアドバンスドコースが出来たので行こうと思いました。ただその前からITSに出す為に作品作りは始めていました。

山縣:僕らがこれだけ言っても学校はちゃんとした学校じゃないし信用があるかといえば無いに等しい。だからその空気感作りが難しかった。みんな「本当に獲れるのかよ」って半信半疑でしたので。

坂部:ただ彼は一番頑張っていた。みんなが中間試験の後にテンションが下がっている中クリエイションを止めなかった。

山縣:中間試験に僕ら以外にも受賞経験のある太郎(堀内)君や唯馬(中里)君などが来てくれたのですがあの時の空気が僕は好きでテンションが上がっていた。けど次の週みんなのテンションが一気に下がってしまった。(生徒達が全然来なかった)

坂部:その週に一番言われたことが「ITSを目指すこと自体がどうでもよくなった」でした。

―そもそもなぜITSを目指すことにしたんですか

山縣:それはたまたまです。イエールでも良かったんですけど時期的にはITSかなと。やっぱり目指すところがあった方がいいから日本ではなく僕らが持っているノウハウを伝える事が出来るというところでITSだったんです。

―ITSとイエールの違いというのはどんなところですか

坂部:傾向的にはフェミニンですね。

西山:だから僕にはどっちにしろイエールは無理でした。

―今回メンズだけでしたがメンズだけをやりたいのですか

西山:レディースもやりたいと思っています。

―坂部、山縣両先生は優しかったですか

西山:僕にとっては凄くやりやすかったです。

―今後の予定はありますか。ブランドを立ち上げたいのですか

西山:ブランドを立ち上げるということは最終的に一番やりたいことです。

―どんなブランドにしたいんですか。普通に人が着れる洋服にしたいのですか

西山:そうですね。ファッションショーもやりたいです。最終的にはそういうこと(ファッションショー)をするのがデザイナーだと思っているので。

坂部:そういう意味ではITS#10でショーをやるということは彼にとって最高の機会だと思います。

続く

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