Interview

Obscur

2008年に自らのブランドObscurを起ち上げたRichard Söderberg。ブランド設立からわずか2年にして既に世界10カ国のショップで販売されることからも、その注目度の高さが窺われる。服作りにおいて雰囲気や技術を大事にする彼は、母国スウェーデンの風景を喚起させるダークな世界観を衣服で表現する。

―ブランドとデザイナーの経歴について聞かせてください

Obscurは今のところ、基本的に一人で活動しています。デザイン全般をはじめ、一人のデザイナーがすべてを担当しているのですが、アシスタントも常にいます。
スウェーデン人デザイナーのリカルド・スーデルベリイが2008年にObscurを起ち上げました。パリと東京でコレクションを発表し、現在10カ国のショップで販売されています。このブランドのアイテムは主に化学処理を施したレザーと、しだれるような天然素材の生地と自然色を基調としています。

―ブランド設立の経緯を教えてください

このブランドは力強いインスピレーション源と熱意によって作られました。最初は服を売るつもりもなく、作品は何かを創りたいというリチャードの強い衝動の結果生まれたものでした。その後しばらくして、初期のコレクションの一部がインターネット上に出ることになり、噂が広がりました。その結果、セールス・アシスタントや広報を含めたチームによる、それまでよりも真剣なアプローチをすることになったのです。いまやObscurは絶え間なく変化する世界の一部です。

―あなたのファッション・デザインのインスピレーション源は何ですか

私がインスピレーションを得るのは映画や音楽、そして生活の中での様々な気分や環境からで、それらがエネルギーを与えてくれます。私たちが人間として発展することで、私たちの趣味やスタイルが進化するのです。

―どうやって各シーズンのテーマを見つけたり、決めたりしていますか

全体的なテーマは成り行きで生まれます。コレクションの方向性は、あらかじめ決めるのではなく、本能的なものから引き出されるのです。時間がたつにつれて具体的なものや感情にいきあたることになります。そうした様々な要素のなかに、目に焼き付くものがあって、そこからコレクションを展開していきます。

―どうしてファッションの世界に入ろうと思ったのですか

実はいわゆる「ファッション」のお祭り騒ぎにはそれほど興味がありません。むしろ雰囲気や感情を創り出すことと、職人技術に惹かれます。服作りはこの二つがうまく結びつくべきものです。おそらく私にとっては家具や美術工芸でもよかったのですが、たまたま衣服からスタートすることになったのです。

―ファッション・デザインにおいてもっとも重視することは何ですか

たいていの場合、素材と、素材を適切な形に落とし込む技術です。今後は、いま私が実験している衣服の最終処理も重要になると思います。ですが、生産力の限られた小規模の会社にとって、望んだ通りに素材を仕上げることはいつも難しい課題です。

―作品へのアプローチにおいて、もっとも重要な要素は何ですか

Obscurの作品は完全性、インスピレーション、そして私たちを取り巻く世界から出発しています。私たちはエネルギーを引き寄せ、運び、そして不変性、素材、空間の展開へと注ぎ込みたいのです。

―スウェーデンのファッションについて何か意見はありますか

いまのところ、スウェーデンのファッションはちょっと退屈で、勢いがありません。シーズン毎の変化も少なく、相変わらず清潔で堅苦しいのです。個人的には、自分を最大限に表現することを恐れるスウェーデンのファッションはあまり好きではありません。

―なぜデザイナーになろうと思ったのですか

面白い質問ですね。私はこれまでもこの職業について考えてきたのですが、なぜ今の自分があるのか、今の自分が何なのか、まだ確信がないのです。すでに説明したことですが、最初からデザイナーになるつもりだったのではありません。私が思うに、人間には何かを創りたいという衝動を持って生まれ育つ者がいます。その渇きを癒すためには、デザイナーとして働くことが不可欠なのだと思います。

―あなたのキャリアに強く影響を与えたアーティストやデザイナーはいますか

職人的な技術と、衣服以外の要素から実際の衣服を作り上げる解釈に優れたキャロル・クリスチャン・ポエルでしょうか。彼のデザインへのアプローチは、とても印象的で、強度を持ったクリエーションの連鎖を見せてくれます。他に思いつくのは本物のアイスランド人デザイナー、スルリ・レヒトです。彼の情熱と熱意、そして特徴的な作品は賞賛に値します。

―他の人々とはここが違うという、あなたの特徴的なスタイルについて聞かせてください

正直に言って、私は制作する際に他のデザイナーのことをまったく考えません。とはいえ、私を取り巻くものについては意識しています。これからは、私はすでに開発されてしまった領域に近づきすぎないようにするつもりです。私が作っているのは自分自身が着たい服で、アイデンティティというものは年月をかけて培われるものだと信じています。年月がObscurを作り上げ、特徴づけるのです。もっと多くの人と働くことになれば、私たちが成し遂げることを強く印象づけることができるでしょう。いまの私はまだ探求の途上にありますが、さらに重要なことには、自分のヴィジョンとデザインを完成させているところなのです。

―あなたの顧客について教えてください

私は人々を特定の方向へ導いたり感化したりしたいわけではありません。全体的に見れば、私の顧客は構造、観点、生地や概念といったものに魅力を感じているのだと思います。Obscurは職人技術、完全性、イデオロギー、独自性のすべてが合わさったものを見つけられるブランドなのです。

―今後数年間の展望を教えてください

私が信頼できる人、私を理解してくれる人、そして私がObscurの哲学を説明できる人をもっと巻き込み、さらに発展させたいと思っています。さらに私が目標としているのは、どこにあろうと、自分たちがすることに情熱を持ったショップと協力し続けることです。また、新しい自己表現の方法を色々見つけてもらうことができるよう、もっと多くの人々に訴えかけたいです。

Interview:Masaki Takida Text & Translation:Hiroshi Ashida

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