Interview

Dossier Magazine

Dossier(ドシエー)とはフランス語で「ファイルする」という意味で、ライターで編集担当のキャサリンとクリエイティブディレクターで写真家のスカイを中心に2008年創刊されたNY発のビジュアルジャーナルマガジンです。主にファッションやアート、デザイン、音楽、文章を扱っており、コンテンツをより良く見せる為に毎回決まったレイアウトやページの作り方ではなく、それぞれの内容にあわせて毎号作っており、美しいビジュアルで非常にクオリティーが高いマガジンです。

5号目となる最新号のカバーはスーパーモデルのダリア・ウェーボウイ。彼女の自宅で撮られた美しいファッションストーリーです。他にも、映画監督のギャスパー・ノエやミュージシャンのデヴェンドラ・バンハート、アーティストのアン・コリエーへのインタビューの他、リチャード・カーンやジョエル・マイロウィッツによる写真も収録されています。

これまで日本では手に入りにくかったDossierですが、正式に日本でのディストリビューションが決まり、都内及び一部地域の主要な書店で入手出来るようになりました。それに際してまずはこのマガジンの紹介として、キャサリンとスカイにDossierについていくつか尋ねてみました。

―まずはDossierをつくったきっかけを教えて下さい。

Dossierを始めたきっかけは、一人のライターとして、一人のフォトグラファーとして、そしてファッションが大好きな二人として、アートとファッションと文学をつなぐ架け橋となるような雑誌を作りたかったからです。私たちは作品の背後にあるインスピレーションや実際の制作過程にとても興味があります。例えば、ペインターとライターにインスピレーションを与えるものの違いについて興味があるのですが、もしそれらのインスピレーションの源となるものに共通する点があるとすれば、私たちはアーティスティックな分野において幅広く伝えることの出来る何かを作れると思ったからです。

―Dossierで紹介するコンテンツにおいて、何を心がけていますか?

私たちの制作過程は、私たちが選んだ人たちに対してとても有機的です。自分たちが感動出来るものだけを雑誌に載せたいし、コンテンツに対してはいくぶん高い要求をし続けていきたいと考えています。
理想を言えば、読者がこの雑誌のコンテンツについて考え、消化し、そしてさらっと目を通して捨ててしまうような雑誌への反対として、また後にもう一度戻って来るようなコンテンツにしたいと思っています。
現在の印刷メディアの風潮において、私たちは、印刷された雑誌とは価値のあるものであるべきだと感じています。


―これまでの号で一番のお気に入りのページはなんですか?

キャサリン:最新号(No.5)で掲載したR.D Skillingsの短編小説です。小説雑誌においては、多くのスペースを必要とするので、より長いストーリーを掲載しているところはほとんどありません。ショートフィルムのような短編小説がほとんどです。どういうわけか、長編小説の方が多くの賞賛を得て、短編小説はあまりよく知られていないのですが、それでも私の好きな作品は、スティーブン・キングの『The Body(邦題:スタンド・バイ・ミー)』やJ.D サリンジャーの『Raise High the Roof Beam, Carpenters(邦題:大工よ、屋根の梁を高く上げよ)』などの短編小説なのです。
そういう訳で、今回Dossierで短編小説を掲載することが出来てとても嬉しかったです。あと、その短編小説を掲載した巻末の部分に、他のページとは異なった紙を使ったことも私にとってはとてもかっこいいものに思えます。

スカイ:私が好きなのは、例えば今号(No.5)で言えばアーティストのアン・コリエーの特集ページであったり、No.1で特集した有名なドラッグクィーンでありアーティストのミューズであったジョーイ・ガブリエルの人生の記録など、文章と写真が一緒になっているページです。
他にも、ファッションを思いも寄らない方法で表現出来た時のページも好きです。例えば、No.2の時にザック・ポーセンがアートディレクションをして、イヴサンローランのスタイルへのオマージュとして、ヴィンテージのイヴサンローランと、それらにインスパイアされたザック・ポーセンの洋服を使ってスタイリングした時のものが特に好きです。

―クリエィテブディレクターのスカイが写真家ということもあり、写真のセレクトやコンテンツは素晴らしいと思いますが、どのようにして雑誌で起用する写真家を選んでいますか?

スカイ:私がこの雑誌を始めた時に強く思ったことは、誰かを起用するのであれば、自分が好きな作品を撮っている写真家を起用したい、ということでした。私自身も写真家として、自分の好きな写真家と一緒にコラボレーション出来るということは非常にエキサイティングなことです。普通の状況ではあり得ないことです。
ここまでやってきて気付いたのですが、これまでにDossierで一緒に仕事をしてきた写真家の多くが女性の写真家でした。それは全くの無意識でしたが、きっとそれは私が彼女たちの美的感覚に共感してきたからなのでしょう。そして、特に男性に支配されているファッション写真の世界において、このことが私たちを他と区別させるもののひとつとなっていると思います。


―最新号の表紙はスーパーモデルのダリアですが、撮影時のエピソードなどあれば教えてください。

写真家のキャス・バードとスタイリストのターナーがこの撮影の話を持ちかけてきた時にはとても興奮しました。ダリアとキャスは長年の友人であったし、私たちはダリアをモデルというよりも一人の人間として提示することに非常に興味があったのです。ダリアとキャスとターナーは撮影の日、ダリアのアパートの部屋でたむろって遊ぶ3人の女の子として、赤ワインを飲みながらドレスアップして過ごしました。そしてその結果、とても自然体の写真が撮れました。私は、彼女たちは予期しなかった何かを作り出すゴールを達成したと思います。ダリアは私たちに「これまで撮影されてきた中で、私に対するイメージや私がこうあるべきといった解釈よりも、私自身を撮影してくれたのは初めてよ」と言っていました。

―今後の予定などあれば教えて下さい。

ちょうど次号の制作に入ったばかりなのであまり詳しくは言えませんが、いくつかお伝え出来るのは;クラッシックでアイコン的な美しさの女優ローレン・ハットンを撮影するということと、世界一のサーファーガールを撮影しにハワイに行くということです。
他にも、私たちはこの一年間アメリカの囚人たちが受ける社会復帰のための更生教育プログラムについて取材してきました。あと、一人の写真家がDossierのために占い師を起用してファッションストーリーを撮影してくれています。
こんな感じで、次号もいつも通り私たちの好きな幅広い取り合わせになっていくと思います。

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