“凄く頑張って作ったとしてもそれが時代に合って無かったり格好良くなかったらどんなに頑張っていても否定される”
―インスピレーションはどこから得ていますか
千野:インスピレーションはテーマに沿って集めています。今回はアニメから持ってきていて僕らが子供のころから好きなアニメ『ガンダム』とか『エヴァンゲリオン』とか『キャシャーン』とか近未来ロボットアニメから影響を受けています。最近凄く思うのは同世代って好きな物が凄く似てきているのかなって。僕達は“アニメ世代”なのでそれが服にもろに表れてきていると思うんです。
―“アニメ世代”なんですか?
高橋:言いきって良いのかはわからないんですけど。
千野:ただ何か創ろうと思って格好良い物を考えた時にすぐに浮かんでくるのがアニメなんですよね。今僕ら世代が好きなロボットアニメって途中でごつごつしていたものが凄くシャープになって来て例えば『エヴァンゲリオン』とか。そこからみんな好きになったんだと思います。
―アニメは重要な要素なんですか
千野:そうですね。ものを最初に創ってデザインを始める時に自分達のルーツを探るんです。そうするとアニメがかなり大きいんですよね。カルチャーとして。大体ルーツを探るとみんな洋楽とか持ってきたりすると思うんですけど僕は無音で作業するのが好きで何見るかと言ったらアニメを流して作業するんです。例えば『エヴァンゲリオン』のDVD流したりだとか。
―萌え系アニメも見てるんですか
高橋:僕は見てますね。
千野:今itunesで曲流しながら作業したりもするんですけど上位トップ5は大体アニメソングが占めていますね。
高橋:化物語とか
―アニメの魅力ってなんですか
高橋:作業に対するモチベーションとかってアニメ見て上がるんですよね。アニメにも深いアニメと浅いアニメありますけど。漫画も昔から大好きでそういうものから考え方とか影響を受けたり、モチベーションもらったりしています。
千野:漫画とかって普通のドラマより見やすくて『エヴァンゲリオン』とかそれ以降って今までの「あ、おもしろいね」って感じだったものが凄く深く掘り下げていくような話が増えてきて人生を教わったりもしました。最近のアニメはグラフィックも凝っていて構図が格好良かったりそういうところも影響受けています。
高橋:エヴァンゲリオンの『破』は映像も凄く格好良かったのでそれからデザインのインスピレーションになったりもしました。
―そういうのから影響を受けるのもわかるのですが少し間違えたらコスプレになりますよね
千野:そうですね。でもそこら辺はバランス感覚で話し合っています。そのモノすぎても意味がないと思うので自分達の考えを入れていって。
高橋:そのままやるとコスプレチックになってしまう。切り返しとかは若干『エヴァンゲリオン』から影響を受けていたりするんですけど色を統一したりすることでモードっぽく、コスプレっぽくならないように配慮しています。
千野:『エヴァンゲリオン』の良いところって完全にロボットじゃなくて少し人の体っぽい部分があるところなんです。人の体に合う曲線でそれがインスピレーションになったりしていて足にフィットしてくる曲線だったり。直接コピーしているわけではないんですけどその流れは取り入れたりしています。
―お互いにA.T Field(心の壁)を張りながら作業されているんですか
千野:もうそれはかなりとれていると思います。ずかずかとやっています。それも組んでいて良いなと思う部分でお互いにほぼA.T Field張ってないので言いたいことをどんどん言っています。
―2人で一緒に作業されることが多いんですか。それともデザインは個々人でということが多いのですか
千野:2人の方が多いですね。2人とも空いている時は2人で作業をしてデザイン画も途中で見せあい方向性を確認しています。
―中野に住まれているということですが中野ブロードウェイにインスピレーションを探しに行ったりとかは無いんですか
高橋:それはあまりないですね。
千野:基本的にはネットからの方が多いのでフィギュアとかからというのはあまりないですね。
―洋服からとかはないんですか
千野:クラシックなモノからとかはありますけど基本的にはあまり見ないようにしています。刺激として取り入れる事くらいですね。
―どういったブランドが好きなんですか
高橋:BalenciagaやGivenchyなど基本的にはレディースばかり見ていました。
千野:Chalayanとか少しアートを取り入れたみたいなものが自分は好きですね。
―今までに展示会はやられたりしたんですか
高橋:高円寺のお店でやりましたがちゃんとした形式のものはやったことないです。
千野:あまり展示会にかけるお金がないので良い話があったらやりたいと思っています。折角展示会をやるのであればしっかりとしたビジュアル作りもしてから出したいので。
―ブログをやられていますがそれはなぜですか
千野:最初mixiでコミュニティーを作ったんですけどあまり効果的ではなかったんです。だから誰でも見れるようなブログがあった方が人の目に触れやすいと思ったんです。結果結構反響はあったんです。それを見てあれが欲しいというメールも来るようになったんで。
―自分達が影響を受けたものを作品にしているということはターゲットにしても自分達の同世代ということになるのでしょうか
千野:それは大きいですね。同世代から少し下までの一番ファッションを張りきっている世代ですね。
―どんな人に着てもらいたいですか
千野:一番目立ちたいとか、一番格好良くありたいと思っているストリートの人に着てもらいたいと思っています。自分達の中から買えるものとか、実際にあるものの中から選ばなければいけないという限界はあると思うのでその中で自分達がより格好良いと思えるものとして自分達のブランドが入っていけたら可能性の提示は出来るのかなと思います。
―ブログに書かれていたんですが批判を受けたりもされるんですか
千野:「何々っぽい」とかそういうことを言われたりはします。「エヴァンゲリオン」ぽいとかそういう「ロボットそのものじゃん」みたいに言われたりとか。
―そう言われることは駄目だと思うんですか
千野:駄目じゃないんですけど批判をしてくる、色んな意見を持っている人がいるんだなって思います。どちらかといえば刺激になりますね。そういう批判があると「これは本当に自分達のオリジナルで考えているものなのか」と自分達に問い掛けてより良いものを作る為のきっかけになると思うので。
―全く新しい物はないと思っているということもブログに書かれていました
千野:やっぱり服を作っている自体で元の形というもの、例えばTシャツだったらTの字とかあるので全く新しい物を創ることは難しいのかなって思います。そこからアレンジしていって新鮮に見せる事が新しいって言われるものだと思うんです。
―どういうブランドにしていきたいんですか
千野:自分達の格好良い物を提案し続けていきたいですね。今やっている設定しているものを崩さずにやっていけたらと思っています。
―必ずしも毎回アニメがテーマになるわけではないんですか
千野:違いますね。
高橋:未来はわからないですけどその時々自分達が感じた物をテーマにして洋服に落とし込めたらと思っています。
―ただ根底には“アニメ”という存在が大きいと
高橋:そうですね。
千野:今回は具体的にアニメからインスピレーションを受けているんですけど次回からは具体的にじゃなくて自分達の創りたい物の奥底に潜んでいるくらいで関わってくるんじゃないかなと思います。今回は結構自分達の着たい物というのを強めにだしていったのでどちらかというと自分達が思っているよりかなりデイリーな仕上がりになっているのでそれにこれからもう少しスペシャルなピースを創ってより自分達の目指している方向性を表現出来たらなと思っています。
―ファッションに対するフラストレーションを自分達が表現して受け入れてくれる土壌はあると思いますか
高橋:XANADUさんとかそういうところはあるんですけど少ないとは思います。
千野:でも広げていけたらって思っています。大きくするのが目的ではないのですがそれにかけられる時間というのが今は限られているのでブランドだけで生活していける大きさ、でも大きくなりすぎてもそれをキープする為に表現が出来なくなるので自分達の表現が出来て潰れない程度にやりたいです。
―レディースはやらないんですか
千野:レディースも今後は考えています。
―それはユニセックス展開のレディースではなく完全なるレディースですか
高橋:そうですね。
千野:まだわからないですが世界観的にはメンズとリンクしてくると思います。
―学校生活で得たモノとはなんですか
高橋:いっぱいありますね。技術的な事やデザインの考え方、凄く頑張って作ったとしてもそれが時代に合って無かったり格好良くなかったらどんなに頑張っていても否定される。だから時代性、時代を見る大切さというのを凄く教わりました。技術にしても肩のライン一つにしても今っぽいラインとか古臭いラインがあるので「今」というのを教わりました。ただ引くだけでなく全部“考えて”やるという。
―スタイリストとして活動したことは今に繋がっていますか
千野:かなり繋がっていますね。イメージを色々なところから持ってきてそれを繋げて一つの作品にするということがそのままデザインに関わって来ています。僕はメリハリとかリズムというのを大事にしています。それはスタイリストをやっている時に感じたもので。だからそれがデザインにいかされています。
―2010年の目標を教えてください
千野:ブランドの認知度を上げるのと自分達の納得いく服作りをすることです。
―今はまだ納得のいく服作りは出来ていなんですか
千野:納得はずっと出来ないのかなと思っているんですけどどれだけ近づけられるかですね。
高橋:最初のコレクションは体にフィットする服というのがメインになっていたんですけどエスモードで学んだ立体が得意なので今後はもっと立体的な要素を入れれればと思っています。