インタビュー終了後、話は10A/Wのリサーチの為に再び訪れたロンドン、そして高円寺、中のブロードウェーへと話題は続く。
―(SOHOにあるセレクトショップ)Digitaria(現MACHINE-A)どうでしたか
面白かったですね。学生のような子の服がいっぱいあって。
―僕もDigitariaはびっくりしましたね
内装は全然凝ってないですよね。ただハンガーが並んでそこに若いデザイナー達の作品が並んでいるだけなんですけどなにか究極ですね。
―そこから新しいものが生まれてくるんじゃないかなと思いましたね
逆に何も内装がしてないというか何も考えてないところに服がある雰囲気。でも服にパワーがあって良くわからない感じが何か新しくて面白かったですね。それ以外にも(ロンドンには)色々面白い店あるみたいですね。僕は向こうの知り合いの学生さんに話を聞いて色々行ったんですけど僕らがいた時には無かったお店が出来ていましたね。
―ロンドンのそういうところって凄いですよね。知らない間に何か新しいものが生まれてくるというか
適当さの部分から生まれる新しさというか。ブリックレーンのSunday Up Marketに全て無料というお店があるそうなんです。ごみのなかからセレクトしたようなものが置いてあるという。僕は実際見てないんですけど面白いですよねその発想が。そこから新しいものが生まれていくというか、新しいビジネスが生まれる可能性があるかもしれない。メッセージ性強いですよね。発想的な部分は日本には無いですよね。そういう意味ではロンドンの気持ち悪い部分が高円寺は濃厚であると思うから行ってみたいですね。
―でもそれは理解できます。僕が行った時はキタコレビルでセール中だったんですけどフリーマーケットみたいに10店舗くらいのお店の物を集めて売っていたんです。けどお店ごとのタグも付いていないし値段の付け方も良くわからないし。週末しかやっていないお店もあるし、開店時間がよくわからないようなお店もある
今の若い人の考え方がそのままリアルに反映されている気がしますよね。それってやっぱりファッションだなって思いますね。
―売り上げという部分ではどうかわからないですけどカルチャーを生んでいるというか、パワーという面で考えれば物凄く力を持っている気がします
そういうのはもっとファッションとして取り上げられていったら面白いなと思いますね。
―でもやっている側は多分そこまで考えていないんですよね
考えてないからこそいいんですよ。そこが今後実際どうファッションになっていくかですよね。ロンドンぽくて面白いです。僕はマーケット回るの凄い好きなんですけどマーケット自体も変わって来ている気がします。僕が住んでいた時のマーケットっていわゆるヨーロッパの骨とう品、アンティークみたいな感じだったんですよね。色んなところに行ったんですけどAngelだけですね。相変わらずごみみたいのを売っていて。でもイーストが凄く面白くなっていてお店の名前はわからないですけど人骨とかゲテモノをテーブルに綺麗に並べずにそこら辺に適当に並べてあって。でもそういうのをDamian Hirstが買ってアートピースにする流れがあるみたいでその店は凄く格好良かったですね。僕が住んでいた時にそういうお店は無かったんですけどそこが間違いなく原点となったお店ですね。他にも剝製とか色んなお店があったんですけどやっぱりそこに比べて格好良くはないんです。それでDover Street Marketに行ったらゲテモノ系がショーケースに入れられて販売されているんですよね。ロンドンってカルチャーがすぐにファッションに取り入れられるんですよね。その流れはしっかりしているので日本もその高円寺の変な流れがあったらそれが日本のセレクトの流れになってもっと中心地に広がって販売されたら絶対面白くなってくると思いますよ。
―ああいう動きを一つのカルチャーとして時代に残さなければいけないんですよね
そうなんですよ。日本の場合はマイノリティーがマイノリティーで終わってしまうんですよね。そのローカルな部分がもっと流れとしてパイプとして一般に流れていったら絶対に面白くなるのになって思いますね。それがロンドンに行って凄く思いました。正直僕は綺麗なものが好きなんですがそういうものが時代なんだろうなって思うんです。もっとナチュラルにライフスタイルを出すことが今の流れというか。僕はまだそこの流れにちゃんと入れてないんですけど。
―直に消費者とコミュニケーションをするにはデザイナー自らが言葉を発するのが大切になって来ていると思います。
昔ほどデザイナーと消費者との距離がなくなっていますからね。
―ショーをやってるからそれでいいじゃ駄目ですよね
もっと近くなきゃいけないかもしれないですね。若手だからそういうことを出来るということもありますよね。
―高円寺以外だと最近中野ブロードウェイに行ったんですけど凄く面白かったですね
なにか秋葉原よりもある意味ディープですよね。ああいうところの方がリアルな気がしますね。下手に青山で見るよりも今っぽいというかリアルというか。流れ的には面白いですよね。ただそういうのが自分の表現と被るかと言ったらわからない。そこをユーモアとして消化して自分の中に入れなきゃいけないと思いますけど。
以前デザビレ(台東デザイナーズビレッジ)にいたじゃないですか。でも東京のイメージって青山とか表参道じゃないですか。最初に上野を歩いた時にこっちの方が時代感を感じたというかヨーロッパから戻ってきた時に一番感じたのはそこなんですよね。あの変な雰囲気ってこれからなんじゃないかなって。
今の僕らからしたら正直良くわからないアニメとかあるじゃないですか「涼宮ハルヒの憂鬱」とか。あの情報の無い感じって僕らの世代からしたらわからないじゃないですか。でも1つ下の世代の子達ってあれくらいの情報量の方が逆に感情移入出来るというのがあるんですよね。それをリアルに見ているから凄く面白くて。日本に来てずっとファッションがなんなのかわからないというか、どうなのというか、上辺的な感じがずっとしていたんですけどようやくリアルになってきたというか。ようやく東京っぽくなってきた気がするんです。
―僕らももっとどんどん若い世代と交流して新しい情報なり、意見なりを受け入れていかなければいけないなと思っていますね
僕も今ここのがっこう見ていて楽しいですよ。その子達の世代というか文脈を自分なりにひも解いていってますね。
―僕らはすでに今の若い子からしたらジェネレーションギャップですからね
そうですね。90年代のファッションは良かったと言っても過去の栄光ですからね。でも自分達の表現はそこから来ているのでそこは否定する気はないんですけどそこにしがみついていたら今の時代に合わないのですぐに消えますよね。
―古いものも理解しながら、新しい要素を取り入れなければいけないですよね
でもそもそもまた90年代きそうですよね。
―もう90ですよね。シーズン性もあまり重要じゃなくなってきている気もするんですけど
ファッションもそういう時代が来るんですかね。フィギュアとか見ていたりそれこそキン消しとかビックリマン見てたりするとひっかかるものがあるじゃないですか。「ちょっと欲しいかも」みたいな。ああいうのが普通にファッションとしてもくるんですかね。
Interview & Text:Masaki Takida
インタビュー見させていただきました。とてもおもしろかったです。ぼくはいまセントマーチンズでファンデーションをやっている学生です。でも、正直言うと、自分の選んだ道に疑いというものを大きく抱えていました。ぼくはファンデーションのなかでなんとか学科の席を取ろうと自分のクリエーションというものをあまり重視していませんでした。受けそうな物をという感じで作っていたんです。でもというべきか、だからというべきか、ぼくはなにかを作るということに関してつまらなさとプレッシャーばかりを感じて作品を放り出していたんです。そんな行為に嫌気がさして、自分はなにをしたいんだろうとGAPPRESSを開いたときにとてもおもしろいと感じた作品があって、それがアシードンクラウドでした。デザイナーの方がぼくとよく似た経歴の方なので、どんなことを考えていたんだろうと気になってネットでこのインタビューを見つけました。
このインタビューを読んだときに、ぼくはとても救われたような気がしました。玉井さんは決してマックイーンやガリアーノのような大柄なデザイナーではありません。正直いうとぼくのパーソナリティーも玉井さんのようなタイプだと思います。ぼくは正直そのようなことに引け目のようなものを感じていたような気がするんです。ですが玉井さんはいろいろな影響を受けいろいろと悩みながら(そこもぼくと共通するところです。)自分のクリエーションの居場所を模索されていることがひしひしと伝わってきました。ぼくの一番なかのいい友人にも山縣さんのようなタイプの学生がいて、その人にたいしてはっきりと称賛とねたみがあると言ってくださったのもうれしかったです。そういうのは間違った感情ではないのだとかんじました。このインタビューを最後までよんでぼくはいろいろと悩みを抱えながらでも自分のやりたいクリエーションをやっていきたいとおもいました。影響は影響としてそれを見ながらでも、自分の個性とは何か表現したい世界は何かと見つめながら作品を作り続けていこうという自信を持つことができました。ほんとうにありがとうございました。