Interview

さとうかよ 2

作品とか見て気に入ってくれて付き合えたら一番いい。美術やってたらそれがわかってる人しか近づいて来ないから

-バイクに跳ねられて芸術に目覚めたとのことですがその理由はなんですか

罪悪感とかですよ。跳ねられた時に「もっとちゃんと生きなきゃ」って。一回死んだと思ったので本当に。芸術をしようというより「恩返しをしなきゃいけないな」と思ったんですよ。生きてたから。凄い親不孝した、だから恩返ししなきゃいけないと思ってとりあえず有名にならなきゃって思ったんですよ。でも私に出来ることってあまりないなー、美術しかないなーって。だからちゃらちゃらしてないでちゃんと作ろうと思って。それまでもちゃんと やってたんですけど何やっていいかわからなくて着ぐるみ作りたいとかへらへらしたこと言ってられないなと思って。

そう思って2年生の時に着ぐるみ作ったんですよ。でも誰も教えてくれないんですよ。着ぐるみの作り方なんて。インターネットで『着ぐるみ』、『製作』っていれて調べたらうちの近所にあったんですよ、そういう着ぐるみ工房みたいのが。で「バイトさせてくだ さい!」って。お金も稼ぎつつ習おうかなと思って。豊島園で赤頭巾ちゃんのショーを昔やってて私それ大好きで見に行ってたんですけどその赤頭巾ちゃんを 作ってる劇団だったんですよ。「中に入らないか?」って言われたんですけどそこは絶対断って。結局2週間くらいバイトして私が作りたいデザインもしてこれの(着ぐるみ) 型紙も起こしてもらって材料も譲ってもらって辞めたんです。虫がバイト中に大発生してわけわかんないくらいハエが出たんですよ。それが怖くて意味もわからなかったんでそれで辞めたんですけど。
で着ぐるみ作って学校でパフォーマンスしてて一人がずっと塗ってて一人がずっと切ってるっていう2m×2m×2mの小屋を立てたんですよ。大工仕事なんで すけど。小屋を建てて切ったり塗ったりするパフォーマンスをして。うまくいかなかったんですけどそこで着ぐるみじゃないなって気づいちゃって。人生の挫折 なんですけど。無意味なんですよ学校なんて。でその頃から夢で見たもの作ってて。

-夢で見た物を作品にすることついて教えてください

先生に「お前何になりたいんだ?」って言われて「犬になりたい」って言ったんですよ。そうしたら「お前なんだ!」みたいに言われてだから「犬になり たいんですよ!」って言って。「もうちょっとわかりやすく言え」って言われたので「ちやほやされたい」って言って。そうしたら「誰だってそうだ」って怒ら れて、「怒られたー。わけわかんない、この人もちやほやされたいんだ」って思って。

で薄い犬が夢で出てきたんですよ。「薄い犬を作りたい」って言ったらなんかよくわからないけど「そうか」って言われてあと「入れ歯の猫も作りたい」っ て言ったら「そうか」って言われてなんか許されてそれ作ったんですけど。その夢が結構シュールで、よく立て替える前の家の夢を見るんですけど、上から路地 を見てたらお父さんが犬とか猫と戯れているんですよ。お父さんが「来いよ!」って言ってて行ったらお父さんもういなくて。犬とか猫とかがぽつぽついてちょっと歩いていくと雑巾みたいな犬が通るんだけど私は「犬か」って思って、でも全然犬じゃないんですよ。でも犬って認識してて夢の中の当たり前の認識と いうか全然違うのに夢の中で当然とされているルールが凄い変だなと思って、これ作ろうかなと思ったんです。

その次に猫が出て来たんですよ。猫がマンホールの上に座って「ニャー」とか言ってるんですけど、ぱっとみたら入れ歯を猫が吐き出したんですよ。何か良く わからないから手に取ってみたら「入れ歯」って思って。「気持ち悪い」って言いながら持って逃げちゃうんですよ私は。でも気持ち悪いって力入れたから端っこが 取れちゃったんです。凄い悪いことをしたと思って家で机の上にその猫の入れ歯を置いてどうしようと思ったらテレビがついてて猫の缶詰みたいなCMが流れ てて「うちの猫ちゃん歯が無いから今日はご飯食べれないんです」って言って。「わたしだーわたしのせいだ」とおもって。でもその時私歯科助手のバイトしてて先生に治してもらえばいいやって。そういう夢を見て目が覚めても「猫に悪かったー」と思うのと「あれ犬じゃなかったー」っていうそれがずっと 残ってて。だからそれを作ったんですよ。講評のときにそれを言ったんですよ。こういうのがいたんですってことを。みんな夢の話しても「はー?」って感じじゃない ですか。でも作れば聞いてくれると思って。「ねー聞いてよ」と思って。「いたの!いたの!」っていう。いたって思いを強く込めたんです、その作品に。凄い パワーを持っちゃって。しかも犬って薄かったんで自立しなくて作ったはいいけど立たなくて布団干しみたいのでつくったんですよ。ぺらっとかけて。いざ学校 に持ってたら全然立たなくて、泣いたんですよそこで。「犬立たない」って。

-犬が立つかどうか試さなかったんですか

試さないですよ。そういう力が無いので。でもいたっていうパワーは凄いあって。でもそうすると周りの人がなんとかしてくれるもので色んな先生が来て、「吊る せばいいんだよ」みたいな。結局動いてたんで「それでいいです」って。夢で見たものをその時から作り始めました。凄い色んな人から褒められたんですけど何を 褒められてるのか自分では全然わからなくて。

-それは話を聞いてなかったからですか

そうかもしれないです。でもいたっていうことを言いたいだけだからどうでもいいんですよ。褒められてても。もう満足みたいな。「お前もっと外に出ろ」って言われて「外ってどこ?」みたいな。スモールワールドの中にいたので全然外のことがわからなくて。「お前猫小脇に抱えてギャラリーに行け」って言われて「え、怖いやだ、何ギャラリーって?」みたいな。結局行かなかったんですけど。そのあと着ぐるみ作って。夢で見たそれを作ったあとに着ぐるみつくったんですけど。でもいきなり作り方もわからないうちに着ぐるみ作れなかったんでまずはこう手鳴らしというか最初に思いついて作り出したのが夢で見たもので、次に着ぐるみ作ったけどその夢が破れそのあとはわからなくなっちゃってぬいぐるみを作ってるって言われるようになったんです。

でも私はぬいぐるみつくってる気なんてさらさらなくて。凄い嫌でどうしたらいいんだろうぬいぐるみってなんだろうって思って。ぬいぐるみ好きじゃないんですよ。でもぬいぐるみってなんだろうって考えて見たらファーだったんですよ。ファーというのは衣も一緒だろうって。油で熊を揚げればいいだろうと思って揚げてみたんです。衣って立ってるじゃないですかカラっと。それがファーと似てるんじゃないかなと思って。しれにみんなぬいぐるみを「可愛い可愛い」って言うから、「熊を油で揚げても可愛いと言うのか、おい」と思ってわりと簡素な気持ちで揚げたんですよ。それで好評会に出し「ファーも衣も変わらないと思って熊揚げました」って言ったらみんなぽかーんとしてて「あいつおかしい」みたいな。色んな人が見に来てましたけどね。違う科の人とかどんどん入ってきて。凄い恥ずかしくて。
その熊を家の地下に眠らせて私はベトナムに行って。その時がはじめての海外旅行だったんですけどベトナムに行きたいと思って。帰ってきて怖い物みたさでそーっとあけてみたら凄いかびててジオラマみたいで凄い格好良いんですよ。色んな緑があって「ふさふさしてて格好良いーー」と思って写真に撮ってすぐに捨てました。肌荒れするんで。

それから途方に暮れて。ベトナムで戦争の跡地を結構見て、それがショックで。凄い細い路地とかに隠れたりするんですよベトナムの人って。それが衝撃で私も細い路地造らなきゃと思って。細い路地にぬいぐるみがわーっと吊るされているちょっと戦争っぽい感じをイメージしたのか忘れましたけどそういう空間を作って。それもぬいぐるみを作品で使いすぎてぬいぐるみっぽい夢を見るようになったんですよ。埋立地がぬいぐるみで出来てる夢を見て、クレーン車で「が ばーっ」とやって「がー」っとぬいぐるみ持ち上げてて」「それ捨てるなら頂戴よ!」と叫んでいて。吊るされている時の状態を作品で作って。それも作る気が無かったんですけど作らなきゃいけないんですよ学校って。講評会がサイクルであるので。なんだかわからないけどその状態を作ってそれを説明しろって言われても「わかんないよ、こういうの見たからつくったんですよ」くらいに言ったら「何だお前は」みたいに怒られて。「なんだお前はってなんだ」と思って 「だってわからないんだもん」って言ったら「わからないものは自分の外にあるんだ」って怒られて更にわからなくて。でも最近わかったんですよその言葉が。いい人だなと思って。わからないことは自分の外にあるんですよ。そんな修行ををうけそれで2年生が終わって3年生に上がったんですけど。3年生に上がったとき に2年生のショックが大きくて3年生何していいかわからなかったんです。

3年生の記憶が無いんですよ私。多分壁に絵を描いていましたずっと。壁に絵描くってやっちゃいけないことだからやろうと思って。3メートル×5メートルくらいの大きな壁をアトリエ内に木で。みんなで壁立てようぜ!って。でもみんな来なくて結局私の周りの人だけで作って。

その時キルト柄が気になっててアメリカンキルトとか。あの柄拡大して描いたら凄い面白いんじゃないかって拡大してずっと描いていたんです。2日間書いて3 日目で剥がすみたいな。ずっとそれをやってて滅茶苦茶体力いるんですよ。大きいから。脚立とかのって描いて出来たみたいな。布とか張るんですけどそれをはがしてまたはって、また描いてそれがなんだか楽しくて。
家ではずっと模様替えをしていて。学校に行ったらその絵を描いてはがして家に帰ったら模様替えをしてっていう生活をしていてなんかおかしかったんですよね。居所がなかったんですよね。そわそわしちゃって。ずっと模様替えしててその時は本当に模様替えをしたかったんですよ。「お前何がしたいんだ」って言われて「模様替えをしたい」って先生に。「お前いつも何してるんだ」って言われて「模様替えしてるって」言って。でもこれじゃー卒業できないと思ってどうしようかなって。その時からCLASKAでやったみたいな内装やるみたいなことをしたかったんですよ。でもずっとそんなことやっててもしょうがないからどうしようと思って。

お母さんがあの家「犬小屋に毛生えたくらいの家よ」って言ってて「犬小屋に毛が生えた!」って思って。犬小屋に毛が生えたって、あ、作ればいいんだって思って犬小屋を作ったんですよ。でも犬小屋に毛を生やしたところでどうしていいいかわからなくて犬小屋に毛は生えたけどどうしようかなと思って。なんかワンダーランドみたいなのを作りたくて。それで「お前そんなちょっと作ったってわかんないだろ!」って言われて悔しいと思って100個以上作ればいいんだって思って100個以上作ってるうちに卒業制作になったんですよ。だからぼーっとしたままそれを卒業制作で出して。でもそれ歩いたり動いたり回ったりするんですよ。中にセンサーを入れて歩くようにして、もう見た目が犬なんですよ。犬小屋毛足が長すぎてほぼ犬なんですよ。ちょっとつんつんしてるやつはそれはそれで何かに見えたりとか。なんかちょっと夢の中で見たこれは犬だって思うような当たり前の出来事が目の前で起きてるんですよ。小屋なのにみんなが「これは犬だ」って言い出すので「あ、出来た、イリュージョン効果出来た」と思って。でもなんかこうぴったり来なくて。やっぱり同じような形の物がいっぱい るとみんな嬉しいらしくて評判は良かったんですけど先生の評判は悪かったですよ。それでわけがわかんないまま卒業したんですよね。わけわからなくなっちゃったなー、どうしようかなと思って。でも就職もしたくないしアーティストにもなりたくないしなんかどうしようと思ってて。そうしたら「助手にならないか?」って言われて。お金もらえるのかと思って「じゃやる!」って言って助手になって。

助手になってもまだ何もしたくなくて普通に仕事してたんですけど、助手2年目になった時に校長に「おまえ作品作らないで何やってんだ」って言われて、「え?作ってるよ」って慌てて言って。「でも発表しなきゃ作ってることになんないんだよ」って言われて「がーん」と思って。その時私眼鏡が凄く好きで 眼鏡屋さんによく行ってたんですけど色んな眼鏡が好きで、高いんですけどいくらかけてもいいと思うくらい眼鏡が好きで。眼鏡屋さんに「いつも何やってるの」って言われたから「美術の学校の先生みたいなことやってる」って言ったら「何かうちでやってよ」って言われて校長にもう文句言われなくてすむと思っ て。そこで展示してそのあとまたグループ展みたいなのをやって先生にキュレーションをされて展示をやったんです。中古の古着屋さんからぬいぐるみをいっぱい買ったんですよ。買い物が好きだからぬいぐるみのある古着屋を知ってて、「なんでもいいので2万円か3万円分箱につめて送ってください」って言って当時の私としては凄く大人買いで。そうしたら外国のぬいぐるみなので少し甘いにおいがしてそれを組み合わせてオブジェみたいのを作ったんですけど、蟻が大発生しちゃって。多分飴がついてたんですかね。でもまー蟻がでたくらいで問題無かったんですけど。そんな展示をしてもまだ美術をやる気が無くて途方に暮れてたんですよね。

その後、学校でコンペみたいのがあって上手くいけばイギリスに行けるって言われて。ポートフォリオを学校中先生とか卒業した先生とか助手とかも色んな人が出したんですよ。で5人だけいくか3人だけいくかって言われて絶対に行きたいって思って。ファイルのまわりにふわふわとかやったら狂ってる人だと思って (コンペ)通るかなとおもったら案の定通ってそこはあざとくいかないとと思ったんですけど。

-狂ってる人だと思われたかったのですか

思われたくはないんですけどそういうところでは出さないと、コントロールしないと駄目だなと思ってやったんですよね。人とは違うことって外人好きそうだと思って。外国に行けてしかもインスタレーションなんて展示までわからないんですよどうなるか。だからずっとインスタレーションの素材を作ってて、ぬいぐるみを解体しすぎてどうやったらどう出来るってわかってきて。
私小さい頃蝶々が交尾してるのがわからなくて一匹殺したんですよ。奇形だと思って。これ二人とも死ぬ、私が助けなきゃって思って。で殺したんですけど(蝶々は)それをつけたままどこかに飛んでったんですよ。悪いことしたなって。それを思い出して蝶々をつけてるみたいにぬいぐるみを開こうとおもってそれをずっと開いていたんですよ。いっぱいぬいぐるみを買ってきて。開いた状態を布団圧縮袋に入れてぎゅーっとしてイギリスに送りつけてそれをばーっと壁に貼ったんですけどわーって。イギリスってやっぱぬいぐるみとか大事にする国で「なんでそんなことするの、可愛そう」とか「怖い」とかそんな意見ばっかりで 「違うよ私切ったりしてないじゃん」って。「ステッチをピックして取ってるだけだよ」と言ったんだけどみんな結構「Oh my god!」みたいな。それが素直な反応だと思って。だから私は気にせずどんどん貼ってて。でその蝶々の話ともう一個まつわる話があったんですけどそれは忘れちゃったんですけどその展示のことを説明したらみんなわかったみたいで。通訳がいたから通訳の人滅茶苦茶困ってたんですけど。そこで「あーアートって面白い」って思ったんですよね、やっと。ロンドンで色んな展示とか見て「あー面白いな。力があるな」って思って会話しなくてもどうにかなるなと思って。自己紹介みたいなのを展示をするだけで出来るから凄い便利だと思って。私こういうものなんですって話すの凄い大変じゃないですか。ある程度知っててもらったらわかるかなと思って。ずっと人に嫌われるかもしれない、ほんとのことを言ったら嫌われるかもしれないと思ってて。

私小学校の頃からちょっと(周りと)ずれててみんな地図帳同じ色に塗ってるのに私塗れないんですよ。なんとかの部分を黄色に塗りなさいとかそういうのを ぱっとみるとみんな違う色で塗ってて。「え?」みたいな。すぐに消しゴムで消して塗りなおしたり。意味わからないんですよ。みんなが塗ってるから塗りなおして。でもそういうのばれたくなくて小学校ってそういう感じじゃないですか。人とは違うことをしてはいけませんみたいな。だから嫌われるかもしれないと思って。思い込みから勝手なことをしてたんだと思うんですけど。だから自分のことを全部知った上で人が好きになってくれたらいいなと思って。本当のこととか全部言わないで付き合えないし。だから作品とか見て気に入ってくれて付き合えたら一番いいなと思って。やってたらそれがわかってる人しか近づいて来ないから。関係ないそういうのが嫌いな人が近寄って来ないなと思って。だから美術やってていいんだって。

で日本に帰って個展がしたいなって思ったんです。個展がしたいと言ったらそれも学校で個展が出来るショーみたいのがあって、お金かけないで出来るのならどこでもいいやってプラン出したら割と簡単に通っちゃって。結局プランとは全然違う展示したんですけど。でも望めば適うのかなーと思って。でも全然臆病だから外に出なかったんですけど。

続く

東京コンテンポラリーアートフェア2008 「ネズミたちの沈黙」

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