便利なものを今使うのが当たり前になってるからそれに対してちょっと抵抗したら良いアイデアが生まれるんじゃないのかな
-どういったところからインスピレーションを受けたりするんですか
リサーチは絶対します。前シーズンからの延長戦だったりはするけど毎シーズンテーマを決めて次回(10S/S)は「チャップリン」を調べてます。
-最初にチャップリンをテーマにやろうと思ったきっかけはなんですか
食べれる靴という子供靴の販売の機会が金沢21世紀美術館で自分の展示の時にありました。その時に靴職人の方を紹介してもらい、昔の作り方である手で縫う とか、合成接着剤を使わずにもち米でそこを仮止めして、縫うのもいのししの毛を針にして縫ったりして、光沢出すのもニスとかではなくふのり(海草)を使い ました。そういうので「これって食べれるよね」っていう話になって食べれる靴という半分ユーモアを含めてなりました。その後ブランド名をどうするかって考 えた時に「eatableでやるか」と。妻はもっと色が好きですけど、今は革はぬめで何にも染めてないものと草木染めして鉄媒染したものしかありません。 この前の展示会で革に色があったものはPeter Jensenから色物を使いたいという話があったものです。なるべく染料を使わない物作りをこころがけようとはしていますね。ただ洋服になるとどうしても 接着芯などが出てくるからそれがeatableではないなと思っていて、そこからチャップリンと向き合ってみたいです。映画で「黄金狂時代」というのがあ りその中でチャップリンは遭難して食べるものがないので靴を食べます。結局皮も肉の一種だから食べようと思えば食べれるのか?と。
-Peter Jensen(鞄とベルト)とのコラボレーションはどう実現したのですか
Peterの日本での取り扱い先さんのからの紹介でした。いつもPeter Jensenはコラボレーションをしているので「やってみませんか」という話が来て。急な話ではあったんですけどせっかくだからあるものでやってみようとなりました。
-直接会って打ち合わせをされたんですか
電話はしましたが直接は会ってないです。(コラボレーションの)話が来たのがショーの2,3ヶ月前で時間があまりなかったです。
-実際コラボレーションしてみてどうでしたか
あっち(Peter Jensen)のアイデアが良くて、Green Landの街並みの写真をくれました。そこから色を使ってみるという試みも面白くはありましたね。
-またやりたいとは思いますか
もしまたやるのであれば(途中からではなく)最初から煮詰められたらいいかなというのはありますね。
-自分の作品製作と同時進行でやられたんですよね
そうですね。だからそんなに沢山は出来ませんでした。勿論彼らの為だけではなく自分達の作品製作にもなりました。
-服作りにおいて最も大切にしている点はどこでしょう
リサーチするのは凄く重要視しています。服作りの点では機能性から考えます。最初は鞄だけでしたが、なんで服作りを始めたかというと(鞄の)ぬめ革が雨に 弱くて、それを守る為の服が必要だと思いました。鞄のための服。鞄が洋服の中にしまえたりポケットが鞄の機能性を持つということだったり、鞄に対する服と いうのが一番のこだわりかもしれないです。現在もタグは考え中で、今回はカットソーみたいなポケットの無い服はタグがポケットにしてみました。
-シーズンテーマを毎回決めてるわけですがシーズン毎に大きな変化というのはありますか
トランプというテーマを最初に立ち上げててそれをなにかしら引っ掛けています。ラックもトランプのイメージになるように作りました。前回はアントワープの (画家)ブリューゲルがテーマでした。なぜそれをテーマにしたかというと、トランプのクローバーというのが農夫を現し、ブリューゲルという人は農夫を凄く リサーチしている人だったから、それをひっぱってきました。
-バッグとか靴とかもシーズンテーマに合わせてという感じですか
鞄はシーズン関係なく、ちょっとずつ新しいものを増やしています。
-洋服に関してはシーズン性とか考えますか
シーズン性というか、自分達で前回使った生地はあまりひっぱりたくないなというのはあります。それがお店に並んだ時のことを考えるときついです。厚手のものを作るのが好きなので冬物を作るのが楽しいです。毛皮も好きです。
-洋服も全てナチュラル素材なんですよね
そうですね。それに拘っててジッパーも使わないとか。それは苦しいですけどね。
-苦しいとはどういうことでしょう
ドレスとかで綺麗なラインを出そうというときにジッパーがないと綺麗なラインが出せないからボタンだけだとどうしても難しい。だぼっとした服なら問題ない ですが。鞄もやっぱりジッパーとかあったほうが防水の面でも良いですが、自分の中でジッパーがなんなのか分かるまで使いたくないです。
-今後もしかしたら使うこともあるかもしれないということですか
使った方が便利だけど最初eatabaleを始めた時に鞄の金具が日本のものは、金メッキの嫌な感じでした。ヨーロッパだと真鍮がそのままの良い色でした けど日本はなにかしらメッキ加工をしていて、そういう金具をみてると嫌な思いになりました。だからそういう部分もなるべく自分たちで作れるのが理想です。 「接続部」というのが自分の中で一番重要なので。まだそんなにうまくはいってないですが洋服のフックとかも自分で木のパーツをつけてとめるというやり方を しています。自分個人の役割分担としてはそういったことを重要視しています。ジッパーを調べてても昔のは格好良いと思うし、そのおかげで世の中が便利に なったのも凄く分かるけどそういう便利なものを今使うのが当たり前になってるからそれに対してちょっと抵抗したら良いアイデアが生まれるんじゃないのかな という感覚があります。
-合繊素材(ナイロン・ポリエステルなど)を使わないことによって困ることはないんですか
困ることはあるので葛藤はありますね。
-でも使いたくないわけですよね
最初は接着芯も貼りたくないってスタンスがありました。テーラードに使うような馬の毛を貼ってくれって言ったのですが縫製の人にそれは難しいといわれて・・。勿論何十万もする(オートクチュールのような)服であれば良いのですが。だから洋服に関しては完全なエタブルは難しい。洋服は外注した時点でそれ が難しいというか生地とか染料もありますし。でもその工程をなるべく伝えていければいいとは考えてはいます。まだそのレベルに達してないので、ブランドと してはまだまだです。洋服や鞄もなるべく自分達で売れる方向で考えています。鞄は特に扱いが難しいのでデパートに置けるようなものではないですし、手作り のものは売る人がどれだけ伝えられるかというのがやっぱり重要だと思っています。
eatable of many orders
Eatable of many orders「注文の多いエタブル(食べれる)」 ブランドの由来は、宮沢賢治の『注文の多い料理店』です。山猫がお客を食べる為に色々と注文をするという展開ですが、私たちの商品から生まれるメッセージ やストーリーをお客様に伝えていく意味を込めてmany orders「注文の多い」を繋げました。
Eatable of many orders は商品の原材料を食べ物の品質表示のように消費者の方に伝えていくブランドです。
素材の理解、染色工程、革の鞣しなどそれぞれのモノにストーリーがあり、 食べ物と同じように原材料名と制作工程を伝えていきます。
HP – http://www.eatableofmanyorders.com/