Interview

GEGEN

着ることで気持ちに変化を与えられる「あがる服」を提案するGEGENデザイナー木村崇氏に話を聞いた。

-ブランドの特徴について教えてください

毎回テーマがあってそこから色味もパターンも広げていく感じです。うちのブランドの特徴としてはデザイン画を書かないというのがまずあります。20年代に もなるし、80年代にもなるし、サイケにもなるし、ふり幅は凄く広いけど基本的に立体裁断で作ったドレスというのが軸です。

-デザイン画を描かれない理由はなぜですか

もともとエスモードの頃からパタンナー寄りだったんです。実際に布を触ってドレーピングしていく中でしか出てこないデザインが沢山あってそれを大事にした いので、自分はデザイン画を描いてからパターンというタイプではないんです。ドレーピングしながら頭動かしてテーマをフィルターに通しながら出していくと いう感じです。

-毎回のテーマはどのように決められているんですか

特に決め方はないです。自分がそのとき感じるものということで。毎回テーマを決めてから掘り下げて、テーマも一個ではないのでいろんなものをミックスしてそれを自分の中でフィルターに通してドレーピングで作っていくという感じです。

-ドレーピングがメインということですか

そうですね。今期は平面から起こしたパターンは無いです。

-ドレーピングだけは変わらずにずっとやってきているということでしょうか

そうですね。それが一番の売りかなと思うんです。袖を通してみないと分からないというパターンが多いですね。

-ブランドを始めたきっかけというのはなんだったんですか

エスモードを卒業してからしばらく服をやらなかったんです。卒業コレクションの後に幾つかお誘いはあったんですが、色々話をするうちに自分は企業でやるタイプではないのかなと思い、それを全て断ってしまったんです。
自分でやっていこうという気持ちはありましたが、もっといろんなものを見てから、色々溜め込んでからやりたいと思ったのでその後はバイトしながらヨーロッパをメインにバックパッカーをしたり。
そこで色んなものを見るじゃないですか。自分の中に色々溜まっていって「服で昇華して出したい」って。ただ溜め込んでいくのではつまらないというのもありましたし。
それでとりあえず置く店も決まってない状態で色々作って、それをACE(代官山にあったセレクトショップ)に持っていったという感じですね。だからその時は全てが一点物でした。

-今も一点物というのはあるんですか

今は一点ものは一コレクションに一個か二個という感じですね。

-一点物と決めているものに関して理由はあるのですか

一点物に関してはパターンも残してないんです。最初から一点物として作り始めて立体でただやっているという感じなので。
だから同じような物は作れますけどまったく同じものは作れないんです。

-コレクションは全て手作りなんですか

カットソーと簡単な布帛は工場ですけどドレスは全部自分で縫っています。



-XANADUではアクセサリーをやっているようですが

はい。「ZUCKERZEIT」という全くの別ブランドを置いています。
XANADUからの「こういう物が欲しい」という提案があって、それを自分のフィルターを通して作り出すみたいな作品です。シーズンを設けていないし、何が出るかわからない。基本一点物で。
趣味的な良い意味でゆるい感じですね。

-それはどういったアクセサリーなんですか

メンズ用で着られるアクセサリーです。前掛けのようなものであったり、スカーフのようなものであったり、ネックレスもあったり、特にはっきりは決めていないですがその時のノリでこういうものを作ろうと。

-その延長線上でメンズを本格的に始めようというのはありますか

それはないです。メンズをやろうという気もなかったので。基本はアクセサリーですし。

-メンズをやる気が無かったのはなぜでしょうか

自分の理想とするメンズってかなりカッチリしたものなんですけど、テイラードのテクニックとか特に学んでいないので自分が満足いく、自分が着たいと思うメンズは出来ないかな、と。
なのでXANADU以外では出来ないですね。
XANADUの本橋君が求めているであろう物を作る。というプロセスが調度良いんです。

-XANADUでメンズを始めたきっかけについて教えてください

XANADUを始めるときにメンズのアクセサリーが欲しいという話があって。物はすべて一点物でテーマ性も特に無いですね。今期はニューウェーブというのはありますが。

-GEGENの理想とする女性像はありますか

はっきりとは設定していないですね。ミューズ的な感じではGoldfrappというバンドのヴォーカルであるAlisonです。

-インスピレーションはどういったところから受けているのですか

はっきりこれと決めているものはないですけど、もともと自分が好きなものとして20年代アールデコと、その前の流れアールヌーボーからアールデコに移るあ たりであるとか。ドイツのバウハウスもですね。あとは音楽が多いですね、ジャンルは色々で60sROCK、80sニューウェーブも入ってくるし70年代の ジャーマンロック~初期テクノも入ってくるし。あと古代エジプトとかメソポタミアとか歴史系が結構入ってくるんですね。

-新しいものに影響を受けるということはあまりないということですか

現代アートのアーティストだと好きなアーティストはたくさんいますが、そこから直接の影響というのは殆ど無いです。

-人の作品から影響を受けたりということもないのでしょうか

それもないです。ドレーピングの手法としてマドレーヌヴィオネのテクニックは参考にしますけど。

-特別影響を受けたデザイナーとかもいないのですか

特定の人はいないです。スタンスとして好きなのはChristopher Nemethとかが好きですけど。軸がぶれないという意味で。

-CandyでのHIROさんのエキシビジョンの作品のコンセプトについて教えてください

自分が好きなHIROさんの一点物のテンションというのが、衝動的というか先を考えないで作っていく感じなんですね。自分はそのテンションが凄くうらやま しくて。でも普段自分のブランドでは(衝動的な作品作り)それをやらないんですよ。ではこの機会に自分もそのテンションでやってみようかなということで即 興的な感じで何も考えずにやりました。GEGENを構成する要素をHIROさんのTシャツにどんどんぶつけていって、Tシャツをドレーピングでドレスに変 えてったという感じです。

-実際出来上がった作品を見てどうですか

満足しています。久しぶりに遊んだという感じで。何も考えずにやれて面白かったです。

-他の人たちの作品をみてどうでしたか

凄く面白いと思いますね。ジャンル問わず今の東京でやっている人たちが集まってこういった企画をやれるというのは凄く面白いなと思いました。

-他のブランドで気になった作品はありますか

翡翠さんの作品、「こういうアプローチしてくるんだ」という点で面白いなって。お会いしたことは無いんですがDressedundressedの方の作品も気になりました。あ、あとTARZANKICK!!(笑)

-色にこだわりがあるのですか

GEGENはかなり色を使いますし、重要ですね。テーマから広げていって色があるので。09S/Sは逆光というテーマなので色の3原色であるシアン、マゼンタ、イエローというのをキーカラーにしているので青、赤、黄色と入っています。

-色はテーマ性に合わせてという感じですか

そうですね。テーマに合わせると難しい色味が多いので自分で染めるという工程をやっています。

-刺繍も重要なのですか

ビーズや、天然石を使った刺繍は多いですね。

-今回09A/Wのコレクションについて教えてください

Before Sunriseで夜明け前です。映画のタイトルから取ったんですけど。前回の「逆光」の延長でその夜版みたいな。パウルクレーの絵画で彼の詩を絵の中に入 れ込んだ絵画があるんです。その辺から膨らませて前回のものと組み合わせていった感じですね。色味的には夜明け前なので黒と緑の中間など微妙な色合いを出 しています。

-ブランドタグについて教えてください

GEGENを構成する要素がミックスされている感じです。真ん中にあるのはスカラベでエジプトで太陽神の化身と呼ばれるもので再生と創造の神様。その右は アールデコ期のダリから。以前それをテーマに使った時期があって、その時のイメージですね。左上はドイツの天文学風の本から持ってきたイメージ。左の星は クラスターというジャーマンロックバンドのジャケットから。メインのロゴはプログレのYES風ですね。
なんとなく毎回太陽神みたいのって出てきちゃうんですよ。絶対的にポジティブな力というか。
最初に自分が作ったコレクションもメソポタミア文明をテーマにしていて、それとイラクとDoorsの「Waiting for the Sun」を全部掛け合わせてて「太陽を待ちながら」ということなんですけど。

-ショーをやってみたいという思いはありますか

機会があればやってみたいですが特別思い入れは無いですね。インスタレーションのほうが良く見せれる場合もありますし、その時のテーマでそれが合うのであればやるかもしれないですし。

-一番大事にしている点はどこですか

「あがる服」ということですね。着ることで気持ちに変化を与えられる服。テンションをあげられる服ですね。どちらかといえば普段着ではなく勝負服みたいなドレスが多いので。
あとはGEGENの名前の由来でもある「対峙」、布と向き合うという事です。

-着こなしの提案というのはしていますか

以前ACEの頃はしていましたが今は特にしてないです。その人その人が着こなしを楽しんでくれれば良いです。逆にお客さんのコーディネートから自分が学ぶこともありますし。

-サイズ展開はどうされているんですか

基本的に1サイズですね。理想とするシルエットがあるので自分としてもそこは譲れない部分ですね。アジャスターが中にある服は多少の調節は出来るようになっていますけど。

-今後の展開について教えてください

海外ということも今は考えていないので、一個一個のクオリティを高めて地道に広げていければいいなと思います。

Designer 木村崇
埼玉県出身。2002年ESMOD JAPON東京高総合科卒業。ESMOD卒業後はフリーのパタンナーとして活躍し、2005年一点物のドレスがメインのブランドとしてA(エース)代官山 のみの取り扱いにてスタート。2006年SO-ENニューカマー特集に掲載。2007年よりファーストラインの「GEGEN」(ゲーゲン)とカットソー中 心の量産ライン「zweiterklasse」(ツヴァイタークラッセ)の2ラインに分け本格的に活動開始
ブランド名は、独語で〔相対する~対峙、反応etc〕さまざまな物事に対する反応、感じることをデザインする。ボディ上で布と対峙、向き合うことで服を生み出したいという思いが込められている。

Interview, Text/Masaki Takida

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