人の不在。カバンを作り始めた当初からそれを強く感じていました。
自分の作る物に、自分の見ている世界には常に人がいなかった。
例えるなら廃れたテーマパークのようなもの。
無数の建物。巨大な造作物。それらの時間が止まって変わりに草や蔦の時間が始まり緩やかな曲線を描きながら自然に近づこうとする流れの中で、かつてそこに少なくない数の人間がいた気配だけが漂っている。
物質と時間と気配の世界に一対一で対峙する。
ぼくはそれが美しいと思う。
理由は分からない。分かろうとも思っていない。
結果さえ知れればそれでいいのだと思う。
ぼくにとって美しい形とは、人の不在が作るあの空気なのだ、と。
カバンを作り始めた10代の終わりに見た夢を今でも覚えています。
コントラストの無い曇り空の下に白に近い灰色の海が広がっている。
その海の真ん中にぽつんとコンクリの四角い島が一つだけある。
ボクはそこに寝そべっている。
ただそれだけの夢。
ボクはあの夢をもう一度見たいといつも思っている。
出来る事ならばあの世界を自分の手で作ってみたいとも思っている。
それの実現だけを理由に世界が回ってくれたらどんなに素敵なんだろうとか考えるけど、
もちろんそんな夢みたいな話しはあるわけがない。
仕方が無い気もします。