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SHUN OKUBO

SHUN OKUBO / 大久保 俊

エスモード東京校で学んだ後、2002年パリに渡りステュディオ・ベルソーに入学。同校卒業後ROBERT NORMAND,BALENCIAGA,HAIDER ACKERMANN等のメゾンで経験を重ねる。2007年、ジュエリーブランドSHUN OKUBO&ASSOCIATESを立ち上げる。2009年、株式会社SHUN OKUBO&ASSOCIATESを設立。

Official HP: www.shunokubo.com
Twitter: http://twitter.com/SHUN_OKUBO

a flower is not a flower

みなさま、明けましておめでとうございます。本年もなにとぞよろしくお願い申し上げます!

さて、先日はmatohuさんの展示のオープニングにお友達に誘って頂き行って来たのですが、

high fashionの西谷さん、ファッション通信の板垣さんなどなど、たくさんの方にお会いできてご挨拶ができてなんだかお正月気分で皆さんにお会いできて嬉しいひとときでした。somartaの廣川さんにもはじめてお目にかかれました!

1月の初旬というのはなんだかmatohuさんの服にもすごく会っている感じがしてよかったんじゃないかなと思ったり。

さてさて、年が明けて特に大きなイベントもなかったのですが、一昨日くらいにtwitterで中上健次について僕宛にツイートをくれた方がいました。僕のたわいのない“中上健次”という呟きに反応してくださってなんだか嬉しかったです。

中上健次だなんて、近年はあまり語られないで僕も懐かしい気分になってしまったのです。

坂本龍一さんの『a flower is not a flower』という曲があるのですが、この曲は青山真治さんが撮った中上健次についてのドキュメンタリー『路地へ』(2000年、青山真治)の挿入曲として使われています。つい最近この曲を耳にして不意に中上健次を思い出したのでした。

僕が20歳前後の頃は、浅田彰さん、柄谷行人さん、などにとても引っ張られていた時期で、そこで中上健次のことも知りました。

というか、10代の頃に坂本龍一さんのファンになって、彼の書籍やインタビュー等を漁っているうちに浅田さんや柄谷さんのことも知って、という感じで僕は本を読むようになったのでした。

EV.cafe』(村上龍、坂本龍一 著、講談社文庫)という対談や鼎談方式の本が当時あったのですが、そこに中上氏も鼎談で登場したのが彼を知るきっかけでした。

坂本さんは、中上健次の小説を映画にしたい、撮るならモノクロームの重くメタリックな質感の映像にしたい、と語っていたと記憶していますが、まさに中上健次の小説は重く、官能的で。。なんというか粘り越しがあるというかw個人的に好きだったのは『千年の愉楽』(河出文庫)という話でしたが、興味のありそうな方は是非いろいろご覧になってみてください。

ところで、今日散歩から帰ってくると坂本龍一さんのソウルで行われたライブがUSTで生放送されておりついつい観てしまいました。アンコールで MC Sniperという韓国人のラッパーとの曲を演奏したのですが、今日、北朝鮮との問題で最も政治的な都市の一つであるソウルでのライブで、この曲は素晴らしかった。非常に強く、響きました。以下、undercooledの韓国語のリリックを日本語訳したものを添付します。ファッションも含め、芸術でシュプレヒコールを掲げる、ということはその本質とは違うと僕は思います。『ゲルニカ』だって反戦の絵ではありません。ただ、時には例外もある、ラップっていうのはその出自が政治的であるからかもしれませんが、不思議と成立する場合もあるんだ、と再確認させられました。心の中で叫ぶ歌、キミの耳まで届くように、国境や壁を突きぬけてキミに届くように。

undercooled

Ryuichi Sakamoto

(Lyrics/MC sniper)

空虚な胸には銃声だけが響く

風は悲嘆にくれ、大地は揺れる
オレはまだここにいるのに、キミの姿はない
歌を忘れたカナリアと憂鬱な日々があるだけ
こぼれ落ちるキミの涙は
世の中を冷たく濡らす
人間の欲望をゆれる車輪にのせる
過ぎ去る季節と共に
限界の怒りの中で安らぎの羽を探す
そして俺は
閉ざされた窓を開けた
月光がすべてを溶かすように
色あせた夕陽で肌も信仰も焼いてしまえるように
深い悲しみを花びらに閉じ込めて
香りにして流そう 香りにして流しちゃおう

教えてくれよ、オレに  尊厳も人権も踏みにじられて
オレたちの自由はどこにあるのか、 教えてくれ

「自爆テロ」をどうやって防ぐの?
ただテロリストを殺しただけで
どんな幸せが手に入るというの?
飢餓で苦しみ、うなる老婆が運ばれてゆく
不安と危険、恐怖の中で
引きはなされてゆくオレとキミ
心の中で叫ぶ歌  キミの耳まで届くように
国境や壁を突きぬけてキミに届くように

4 Responses to “a flower is not a flower”

  1. mari takahashi より:

    blogちゃーんと拝見していますよ。
    『路地へ』観てみたくなりました。

    “柔和に貫く”
    ということを、程よくいい加減に、自然に
    やってのける力が、音楽にはあるのかもしれませんね。
    きっとファッションにも。

  2. hfatt より:

    僕もちゃんっと拝見しております。

    叫び、それは音楽の根源的な側面でもあると思います。
    韓国で演奏された昨晩のundercooledは、
    特別な意味を持っていたのでしょうね。
    現象として音を楽しむ時もあれば、
    言葉がすっと入ってきてセンチメンタリズムに浸る時も有る。
    自分は2種のモードで音楽を聴いているなと。

  3. SHUN OKUBO より:

    mariさん
    ありがとうございます!!
    柔和に貫く、ぜったいファッションにもありますね。
    それってマルタンにもあるし。
    ただミュージシャンにはいつも嫉妬しますねw

  4. SHUN OKUBO より:

    hfattくん
    なんかコメント催促してしまったみたいですみません!
    僕はほとんど音としてしか音楽を聴いてこなかったんですけど、
    年を重ねるうちに感情的なもの、情緒的なものも悪くないなあ、とだんだんそちらのほうに引き寄せられています。