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HIROSHI ASHIDA

蘆田 裕史 / Hiroshi Ashida

1978年、京都生まれ。 京都大学大学院博士課程研究指導認定退学。
ファッションの批評誌『fashionista』編集委員。
京都にある某ファッション系研究機関でキュレーター。
e-mail: ashidahiroshi ★ gmail.com(★を@に)
http://twitter.com/ihsorihadihsa

『fashionista』の情報は↓
http://fashionista-mag.blogspot.com/
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ファッションのシステム その2

前回、プレタポルテの行き着く先がファスト・ファッションとなるのは必然的だと書きましたが、今回はその続きです。

(タイムリーなことに、一昨日H&MとLANVINのコラボレーションが発表され、今テレビでは東京ガールズコレクションが放送されています。)

ファスト・ファッション隆盛の今、いわゆるハイファッションと呼ばれるブランドが取ることのできる選択肢のひとつに、「既存のシステムから降りる」ということが挙げられます。

既存のシステムとは、簡潔に言えば年2回のコレクションの発表のことです。いや、もっと正確に言うと、年2回コレクションを発表することによって、以前の作品を否定することです。

なぜファッションだけがこのようなシステムをとってしまっているのでしょうか。ひとつにはジャーナリズムが「トレンド」とか「今年の流行は〜〜」など、「現在性」を声高に叫びすぎていることが挙げられるでしょう。そうした言説が積み重ねられることによって「去年の服が格好悪い」という意識が植え付けられてきました。

もうひとつは主にショップの問題になりますが、セールのシステムです。このシステムは世界最初のデパートであるボンマルシェが、薄利多売方式において商品の回転効率が鈍ることを避けるために考案したと言われています(鹿島茂『デパートを発明した夫婦』)。つまり、このセールというシステムも、そもそもの始まりからしてファスト・ファッションに適したものなのです。

もちろん、そのことによって目先のビジネスはうまく回ってきたかもしれませんが、そこで捨てられてきたものも多いのではないでしょうか。

たとえばプロダクトデザインのことを考えてみましょう。椅子でもカトラリーでも時計でも何でもよいのですが、同じデザイナーが(不定期に)新作を発表しますし、ミラノサローネのように毎年見本市を行ったりもしています。しかし、過去の作品を否定するようなことは基本的にありません。

ファッションとプロダクトデザインは違うところも多いので、全く同じにすることはできないでしょうし、必ずしもそうする必要もありませんが、ひとつのモデルとして参考にすることもできるのではないかと思うのです(*1)。

余談ですが、最近、京都では阪急百貨店というデパートが閉店しました。
「昭和51年(1976年)の開店以来、34年の長きにわたり、当店をご愛顧くださいましたお客様に心から感謝し、御礼を申しあげます」とのメッセージがサイトに掲載されています。

京都では多くの人々の思い出に残っている場所であることは間違いありませんが、34年という年月は本当に「長い」のでしょうか。

たとえば22歳から65歳まで働いた場合、就労期間は43年。

事業を興し、それを一世代継続させることがどれだけ難しいかを改めて考えさせられました。

こんな例を出さずとも、changefashionを見る人にとっては、ヨウジ・ヤマモトのことを考えるだけでも十分かもしれません。

(*1)このあたりは、今月号の『ユリイカ』で浅子佳英さんが『visvim』について書いていたことともリンクする問題です。ただ、靴の場合は衣服よりも今回書いたようなことがやりやすいのも事実ですので(同じ服を3日連続で着るのは気が引けるけども、同じ靴を3日連続で履いてもあまり気にならない人が多いのではないでしょうか)、一気に衣服の話まで一般化するのは少し難しいとも思います。

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