“エレガンスが衰退しているということは第3者が見て綺麗な物より自分が着たいかどうかなんだと思います”
-This is Fashionのイベントに新しいデザイナーを加えたいというのはないんですか
M,W-良い人がいれば誰でもどんどん加わってもらいたいなと思っています。
‐悲観的な見方をしてみると海外卒のデザイナーだけで固められていますがその点はこだわってはいないんですか
M-こだわってないですね。今回他のブランドも候補としてあがっていたので。海外だから良いというわけでもないですし。たまたま海外卒のデザイナーだけに なってはいるけど日本にも好きなデザイナーはいますしそこはこだわってないです。
‐This is Fashionの今後の展開は考えていますか、例えばショー形式だけでなくもっと他の場所でイベントをやるとか
M-全然ショーだけではないです。ショーはやる時もあるけどショーにこだわる気もないです。地方に回るというのは売るという面でもそうですし、教育という 面でもやっていきたいなと思っています。色んなところに講演に行くかもしれないし。This is Fashionとしては教育というものは常にキーとしてあるので若い世代に伝えるというのが大きな課題の一つですね。
‐今回Fashionsnap.comを通じて初めて動画配信をされましたがそれはなぜですか
W-単純にたくさんの人達にもっと見てもらいたかったというのはありますね。
M-もしかしたらショーじゃないという可能性もあったのでもっとブログとか動画とかで発信してもいいのかなというのも一個のアイデアであったのでその雰囲 気が残ったのもありますね。ウェブで何かをやるというのは常に頭にありましたので。
‐次回も動画配信等考えていますか
M-まだわかりません。3人ともショーをやるかもまだ決まっていませんので。インスタレーションの方が本当は凄く興味があるんですけどインスタレーショ ンってなかなか理解されないし、広がらないじゃないですか。行った人しかわからないし。インスタレーションってファッション雑誌の構成上出る場所も少ない し、凄いことをやってもショーの方が先に来るのがあるのでそのシステムはおかしいなと感じます。Benrhard (Willhelm)とかHenrik (Vibskov)とかが凄く面白いことをやっていても取り上げられかたってあまり大きくないですよね。もっともっと面白いことをやっている人が取り上げ られてもいいのにとかは凄く感じます。だからインスタレーションをやりたいけどショーをやった方が取り上げられるので現実的なのかなとは思います。
‐今のファッションの流れからいってもショーをやめて、インスタレーション形式にしたら周りからはお金が厳しくなったのかなと思われるかもしれませ ん
M-そうなんですよね。面白い面白くないにかかわらずそういう見られ方はあると思います。でもインスタレーションの方が実際凄くお金はかかるしショーはお 金がかかるからみんなやらないというわけでもないと思います。一番のメインはショーという固定概念があるのは変だなって思います。ファッション雑誌も自由 に出来てないから取り上げ方も古いままなんですよ。
‐例えば自分達で雑誌を作ってとかはどうですか
M-仮に自分達がお金を持っていて雑誌を作って自分達だけでやっても意味がない。インスタレーションというものがどんなに楽しいものかみんなに広めなけれ ば意味がないからそれは他の媒体の人達と協力してやらなければいけないところなのかなと思います。結局ファッションショーが今までよりどんどん衰退してき てるのはショーのアイデアが無くなってきたというのじゃなくて買う側や、バイヤーがファッションショーってやっぱり自分で着て買うわけじゃなく見て綺麗と 思って買うというシステムから成り立っていますよね。でもそれが成り立たない服が多くて、見て綺麗、だから買うというのはパーティのドレスだったりエレガ ントなものが中心なんだけど今は物凄く色んなジャンルのファッションが出ていて、その中でただ綺麗だから買うのではなく、やっぱり自分で近くで見たりしな いと服と買い手が結び付かないからショーで第3者が見て綺麗だから買うというのは違うと思います。着る人が着たいかというのが今は中心なので。
‐それは世界中どこでもですか
M-世界中どこでも変わってきていると思います。やっぱりエレガンスが衰退しているということは第3者が見て綺麗な物より自分が着たいかどうかなんだと思 います。洋服自体の必要性としては見て楽しむではなく今は着て楽しむなので、だとするとショー形式はおかしいし、もっと面白いことをするのであればインス タレーション、売るのであれば展示会というのがしっかり見えています。
‐では今後より一層ファッションショーは衰退していくと思いますか
M-衰退していくと思います。でも雑誌媒体が変わってくれないとショーをやらざるを得ないという状況は変わらないと思います。ショーは結局プレスの為にあ るのでプレスが取り上げないのであればインスタレーションをやっても意味がないので。インスタレーションの面白さをどんどん取り上げる雑誌があればショー がなくなってもインスタレーションはどんどん伸びる時代だと思います。やっぱり受注会だけじゃつまらないけどインスタレーションをやれば新しい世界観は全 然表現出来ますし。
‐実際ショーを見てる立場からしても何かを感じるショーというのは正直どんどん少なくなってきていると思います
M-勿論John Gallianoのショーとか見たら凄いですけどお金との比率を考えてみたらわかるようにやっぱりそこで使われている労力からしたら効果は少ない時代なの かなと思います。インスタレーションで面白いことをするのであればお金は凄くかかるし大変だけど可能性はそっちの方が全然あると思います。ショーっていう 距離感が今はあまり必要ない気がします。
‐距離感という言葉がでましたが今回のMikio Sakabeのショーはお客さんとモデルの距離が凄く近かったです、それはなぜですか
M-本当はもっと近くしたかったんですがNGであの距離になってしまったんです。ショーと人との間に距離があると服との距離が出来ちゃうという時代じゃな いから一般の中で少しおしゃれな人という見せ方をしたくて。だからお客さんにも若い子達を沢山呼んでその中でちょっとした違いを見せて現実的なおしゃれな ものを見せたかったというのが大きな理由です。
‐writtenafterwardsは体育座りでショーを見るというものでした、それはなぜですか
W-あれはかしこまってみて欲しくなかったんですよね。会場が元々小学校じゃないですか。小学校の時って体育座りして体育館に座っていたし、コンセプトが ファッションの原点に戻るなのでその原点を見つめた上での最初のファッションショーをやっていたのは誰だ、神様だっていうものだったので、小学校というプ ライマルな場所で全ての椅子やかしこまってみるというのを取っ払って素直に見るという意味合いが込められていました。体育座りして神様を見上げるという演 出にしたかったというのもあります。
‐writtenafterewardsのショーを見て坂部さんはどう感じましたか
M-凄い面白かったです。神様良いなって思いましたよ。自分は立って見たので見上げてないのでその部分はちょっとわかりません。ただ東京のコレクションウ イークの最後にファッションの神様が出てくるというのは象徴的だし、シンボリックな物が今は面白いから時代感があるなと思いました。
‐逆にMikio Sakabeのショーを見て山縣さんはどう感じましたか
W-本番は見てないんですけどリハーサルとかを見させてもらっての感想は90年代初頭というイメージをはっきりと打ち出したという部分で時代を前に行こ う、前に発表しようという。今だから逃げ腰の提案ではなくちゃんと時代を読んで次の一歩を踏み出すというのが出ていてそれはなかなか出来る人はいないんじゃないかなって思います。でもはっきりと時代とマッチした提案の仕方だったと思いますし。
続く