Interview

Kenji Kawasumi 3/5

ファッションへの目覚めからロンドンまで―「ガラスでバッグをつくったらすごいですけど、もしガラスの服をつくったらもっとすごいなと。強さが違うなと思ったんです」

―次に少しけんじさんの歴史を遡ってみたいと思います。元々ファッションに興味を持ったのはいつごろですか?

中3ですかね。

―きっかけは何だったのですか?

友達と遊んでいて、Boon!とかStreet Jackといった雑誌をみていて、かっこいいなぁーって、こういうブランドの服を着たらかっこいい人になれるんだ。もてたいなぁーって。笑

―笑 初めのきっかけはやはりそうですよね。

それでSupremeとか裏原系とか恵比寿系とかの服を買いに行っていたのですが、高校生のとき、あるセレクトショップに入ったら底がコンバースのソールでできているバッグがあったんです。それが5万円くらいして、高いなぁと思って、自分でつくれるんじゃないかってふと思ったんです。300円くらいでコンバースの偽物を買ってきてつくってみたら、お金も全然浮きますし、これでいいじゃんって。ハンドメイド感もむしろプラスだと思って。そこからニットキャップとかバッグとか、自分でつくり始めました。

―そういうリメイクからけんじさんのデザイナーへの道が始まったのですね。僕もその頃そういう雑誌も見ていましたしファッションにすごく興味はあったのですが、実際なかなか自分でつくる人って少ない気がするんです。どうしてけんじさんは実際つくるまでに至ったのだと思いますか?

周りにはあまり自分でつくる人はいなかったですが、小さい頃からモノ作りは好きだったので、高校になっても続きましたね。自分でつくれば周りの女の子も「けんじくんすごーい」と言ってくれますし。笑

―笑 そのような高校時代もずっとストリート系のファッションだったのですか?

そうです。ストリートと古着で、ハイブランドは別物という感じでした。

―それで高校を卒業してからはどうされたのですか?

高校を卒業してすぐに、カナダに語学留学にいきました。僕は小さい頃から海外に行くことに関しては自然で、不安はあまりありませんでした。というのも3歳から6歳の間、教師をしている父親の仕事の関係でスリランカに住んでいたからです。そこで現地の幼稚園に通って、英語圏だったので英語で生活していました。
それから小学校上がるときに日本に帰ってきたのですが、高校卒業するときにスリランカで知り合った方がカナダに住んでいたんです。そういうツテもありましたし、広いところへ行きたいという想いもありました。
ファッションもやりたいって思っていましたが、東京の専門学校へ行っても、僕ぐらいの人なんて一杯いる気がして、皆が行くところで同じことを学ぶよりは、違う環境で勉強したいと思いました。それですごく漠然と、セントマとかFITとかアントワープなどを見てみたりしてました。
それからとりあえずツテのあるカナダに行ってみて、帰ってきてから進学のためにポートフォリオつくらなきゃということで、東京にそういうことを手伝ってくれる専門学校があったので、そこに1年行って、LCFのファウンデーションコースからロンドンに来ました。

―なるほど。でもFITやアントワープではなく、どうしてロンドンのLCFに決めたのですか?

正直アントワープはよくわからないっていうイメージで、未知すぎる気がして。東京の学校の先生とも話し合って、やっぱりアメリカはマーケティング重視だから、やりたいことやるならロンドンがいいということになりました。その時はセントマとかLCFとかよく知らなかったですし拘りもなかったです。こっちに来てから知るようになりました。
その場の勢いと流れで今までやってきましたが、両親も含め周りの皆もサポートしてくれました。

―さきほど初めロンドンに来た時は元々バッグのデザインをするつもりだったと言っておられましたが、服ではなく、バッグだけをしたかったということだったのですか?

そうなんです、アクセサリーやバッグのデザインです。でも結局、LCFに進学するときにメンズウェアを選びました。なぜかというと、色々なコースがある中で、確かにバッグだとハードなマテリアルとかも使えるし自由だなと思っていたのですが、3年間ずっとバッグだけをするのは飽きてしまうかなと思い考え直しました。

―もう少し広く、色々なことをしてみたいと思ったのですね。

そうです。ファウンデーションコースにいたときに、周りの学生達も昔のガレス・ピューのような、皆を驚かせるようなものをつくりたいという人が多かったですし。

―服でやったほうがよりインパクトを出せると。

そうです、例えばガラスでバッグをつくったらすごいですけど、もしガラスの服をつくったらもっとすごいなと。強さが違うなと思ったんです。バッグはそれでも成立しますが、ファッションは成立しずらい、だからこそ面白いなと。それで、色々な人に見てもらいたい、面白いものを作りたいという欲が出てきたんです。それでファッションを選びました。

―話を聞いていて、ファッションに興味を持ったきっかけは、雑誌をみてからという一般的なものですが、バッグつくりからデザイナーへの道が始まったり、話を聞いているとやはりけんじさんの根底にはクラフトやプロダクトデザインへの興味がずっとあるような気がします。

そうだと思います。プロダクトの仕事もやりたいですし、そういう点を将来、ファッションデザインの中でも昇華していければと思っています。

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