Interview

Kenji Kawasumi 4/5

惹かれるもの―「身の回りの、日常にあるものの方が、よく見るし、キラキラしたよりも日常の中によいものがあるのでは」

―何か趣味はありますか?

最近は友達と集まってご飯食べるくらいですかね。少し前までは自分の身の回りのちょっとした物を自分でつくるっていうのをやってました、小物入れとか、、。

―やっぱり何かを自分でつくるということがずっと好きなのですね。

ずっと製作続けていると、嫌にもなりますけどね。笑 あとロンドンに来た頃はギャラリーとか回ってましたが、今ではあまり行ってません。マーケットもよく行ってて、古いものが好きなので、ボタンとかバック一杯で3ポンドとか日本ではありえないことなんで。

―そういった昔のもの、伝統品などにも興味が強いのですね。例えば、伝統衣装には興味はないのですか?

もちろん興味はあります。ただ伝統衣装の取り入れ方は難しいなと思います。全て出来上がっているというか、伝統衣装は宗教や民族の行事でつかわれるじゃないですか。その意味合いと、その服の美しさは当人でない僕が表現するのは説得力がないと思うんです。ものすごく軽く扱うか、考えをしっかり踏まえた上だったらいいと思うのですが、僕はそこまで頭が回らないので。笑

―そういう伝統衣装よりは、おもちゃのような、伝統的なものであっても素朴な、ひょこっとそこにあってもよいものに惹かれるということですか?

そう、日常的なものに惹かれるんです。BAのときのコレクションも、日常的に使っていたものに気持ちがこもるっていうのがアイディアだったので。身の回りの、日常にあるものの方が、よく見るし、キラキラしたよりも日常の中によいものがあるのではないかっていう考えです。
日常を、日常のままどれだけ豊かにできるか、、、といったことですね。その人に合っていればよいと思いますが、僕が無理なものを取り入れて、無理をしてかっこつけても合わないと思うので。
あとはサステイナブルとかエコとかいった考えやオーガニックなものが近年さかんですが、そういったものがいずれはキラキラのダイヤと同じようなくらいまで強いものになったりするのかなって思います。

―いかにもヴィンテージとして価値があるものには興味がないのですか?

見たりリサーチしたりはしますし、服や古びた置物もマーケットで買ったりしますね。でもつくるのは大変だなと思います。やはり時間の蓄積ってつくれないですし、昔のものって無駄がないのかなとも思います。
柳宗理さんという世界でも名のあるプロダクトデザイナーの方がいて、エレファントスツールという、当時新素材だった強化プラスチックの椅子をデザインして世界中で評価され、食器や家具のデザインをしている方なのですが、それまでは「おみやげ品」だったものを、「用の美」という考えのもとに日本の「民芸」というものをつくられたんです。「実際に使われるものだからこそ美しい」といった考えで、その人によると、ざるとかお箸とか、お箸でいえば普通のおばあちゃんの家のあるようなお箸なんですが、使いやすくて無駄がなくて、無理に変につくらなくても美しいっていうものです。その考えが素敵だなと思います。

―ファッションで考えると、そういった考えのバランスが大事になってきますね。

そうなんです、あまり意識しすぎるとビジネスライクなものになってしまって面白みがなくなってしまいますし、、、

―いかにもなリアルクローズをつくれば良いのかってことになってきますもんね。

なかなか難しいですね。でも、シンプルに、日常品の美しさという点ではすごく共感します。そういうバランスを取るためにも、僕はもう一皮むけないとな、と思います。

―他に好きなブランドやデザイナーはありますか?

僕がスタイルがすごくいいなって思うのが、ベルンハルト・ウィルヘルムですね。

―それもやはりデザイナーのスタンスも含めて、ということですよね。

そうです、プレゼンテーションとかインスタレーションの仕方とかも含めて。

―僕もメンズのインスタレーションは実際に見たことがあるのですが、すごいパワーを感じました。

彼ぐらい強烈なキャラクター性がほしいですね。

―好きなことを思い切りやっている感じがしますね。

昔よく親に言われていたのが「独立独歩」って言葉なんです。「あなたは独り立ちして、全て自分でやりたがる」って。26歳になってようやく、「あーやっぱりそうなのか」って思いましたね。笑 母親によると、2、3歳のころから自分でおむつを取って投げたりしてたみたいですし。笑

―笑 でも今まで話してきた感じとか普段の感じですと、自我が強いっていうのはあまり感じませんが、、

普段はむしろ正反対だと思います。笑

―でも心の奥では、、ということですね。

ここだけは譲れないよ、みたいな。特に自分の作品とかに関しては、、ですかね。

―ベルン以外で、特にロンドンのデザイナーで誰か好きなひとはいますか?

マリー・カトランズに関しては、面白いアイディアを、すごくうまく形にしているなって思います。彼女のセントマのMAの卒業コレクションは、ジップがついたドレスに、木とゴールドのアクセサリーがついたものなんですけど、ほぼ全てのルックに実際の大きなアクセサリーかアクセサリーのプリントを施していて、むしろアクセサリーがメインなのかなってくらいだったんです。それを今はうまくコレクションに落とし込んでて、すごいなぁと思います。
あとロダルテのテキスタイルもすごいと思います。前見た時は、ニットとかレザーとか、色々な素材がハンドメイドでくっつけてあって、「これはつくるのが大変だなぁ」と思いました。僕もプリントよりは、実際に何かが付いているテクスチャーが好きなので、それをしっかりファッションにしているのがすごいなと思います。

―なるほど。やはり目がいくのは素材やテクスチャーなのですね。

そうですね。他にはピーター・ヤンセンも可愛くて好きですね。

―北欧だとヘンリック・ヴィブスコフとかも好きそうですね。

あーそうですね。卒コレの延長でコレクションをつくるとしたら、可愛くピーター・ヤンセン、ヘンリックのような感じも面白そうですね。

―いかにもエッジが効いている、みたいなものよりは、カラフルでポップで楽しくて、、というイメージですか?

そうですね。もっと柔らかい感じです。木のボタンとかアクセサリーもしたいですし、ポップさに丸みを持たせたいですね。

―確かに北欧のイメージがけんじさんのイメージと合う感じがします。僕は北欧にいったことないのですが、けんじさんは行かれたことありますか?

はい、すごくいいですよ。柵とかゴミ箱とかも無駄がなくデザインされていて、街並もいやらしくなくてきれいです。嫌みがなく、凛としてる。

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