Interview

Sise 1/2

2012年3月21日、ベルサール渋谷ファーストにて2012-13AUTUMN&WINTER Collection「非日常の中にある日常」を披露したSise。3シーズン振りのランウェイショーとなった今季、一筋の光が差し込む、何も無い広い空間で「少年性」を香らせる日常着を傍観するように見せた演出が印象的である。

ショーを終え、向かった先にある境界線の上に立ち、また新たな一歩を踏み出す。今回、徐々に変化していくブランドの姿をこれまでの軌跡を振り返りながら、デザイナー松井氏に伺った。

→Sise 2012-13 A/W Collection

―今回のコレクションは前回シネマライズで発表した2012S/Sのムービーの延長線としてのランウェイではないんですよね

そうではありません。今回も直前までムービーを撮ろうか悩みました。でもそうすることによって前回の作品と比べられてしまう。
ストーリーフォトを作ってコレクション発表しようとも思ったんですけど『非日常の中の日常』というコンセプトが固まった時点でランウェイにしようと思ったんです。
今自分達はこの場所にいるからわからなくなっていますが、“ファッションショー”って非日常的空間だと思うんです。その空間でいつものテンションを!!
今回のショーではそういう感じを出したかったんです。
前回の映像は自分でも凄く気に行っていて今でもたまに見たりするんですけどやっぱり良かったなって。次撮るのであればショートフィルムも撮ってみたいです。

―3シーズンぶりにランウェイショーをやりましたがやってみてどうでしたか。良いコレクションだったのでもう少し人が入ってくれたらもっと良かったと思いましたが

ファッションショーはやって良かったと思っています。
ただ今回はインビテーションを作るのをすっかり忘れていてそれで告知が遅くなってしまったというのもあるんですけど、もう少し来ると思ってました・・・・。オフスケジュールでroomsLINKという会場を使い、午前中という時間帯にやったのもあるかもしれませんがそんな事関係なく集客できるブランドもあるのでその点に関しては正直残念でした。(自分達で会場を探して、呼んでいた今までのコレクションでももう少し集客できていましたので。)
ただ、だれと一緒にやるか!!っという事は強制されてるわけではなく、自分で判断しているので大きな反省点の一つです。

―ランウェイの会場は敢えて作り込んでいなかった印象でしたが会場作りにはどんな意図があったんですか

今回の会場は“俯瞰して見る”ということをして欲しかったので敢えて客席を少なくし立ち見を多くしました。
ランウェイはだだっ広い空間を作り、その代わりにバックヤードは凄く狭かった。
傍観者的に見て欲しかったし、俯瞰して見て欲しかった、その為にはあの広くとった空間が必要だったんです。
光だけで服を照らし、通常のショーより服も見えづらかった、色もわかりづらかったと思うんですけどそれでも“普通の服”を客観的にみるということが凄く大事だった。今回はそうすることに意味があったんです。
ファッションって例え凄い服を近くで見ても着たいって思わないと思うんです。だから見やすさには拘らなくてもよいのかなって。空気作りを特に意識してランウェイを作りました。


Sise 2011 S/S Collection “9646″

―「9646」のコレクションの時も今回同様コンクリート打ちっぱなしの空間でした

千歳会館のショーの時は日常の中に非日常の空間を作ったんです。雑踏の中に入って、雑居ビルに入ると非日常の空間があるということが狙いだった。今回はそうではなく非日常の中に日常を作ったんです。

―音楽やスタイリングはご自分でやられたんですか。またどういった意図があったんですか

スタイリングは全て自分で考えていますし、音楽も自分で選曲しています。
当初は最後の11体と全く同じスタイリングでフィナーレでは真っ白になる予定だったんです。ただ素材が存在しなかったりという物理的な問題があって落ち着きどころを探しました。

―その音楽、今回の音楽に使ったのはTeam Meというバンドの曲ですがSiseのブログを見直してみたら1月5日のブログ記事(小さな奇跡)でそのバンドのことについても触れていましたね

毎回音楽は凄く重要なのですが、今回も音楽どうしようかと思った時に友達が「Team Meのアルバムが出たよ」って連絡をくれて、すぐ買いにいって1曲目聞いた瞬間に「これだ」って。
フィナーレを白一色にしたのも“16step”という曲を聴いていると本当にそういうイメージが浮かんできて。それを演出家に話したら演出家も一言「白用意できる?」って同じ答えが。何も言って無かったのですが意思が通じたというか共有出来てる!!っと思えた瞬間でした。
基本的にはヘアメイクにしても演出にしても細かい要望こちらからは伝えていません。

―2011 S/Sのent、2012S/Sのkyte、そして今回のTeam Meとショーに使う音楽は凄く統一感がありますね

透明感がある音にボーカルが入っている、そういう音楽が好きなんですよね。
自分のショーの後幾つかコレクションを見て周ったんですけどボーカルが入っている曲を使うことがない。それって不思議だなって。
Siseがボーカルなしの音でコレクションを考えられないということはないのですが特に今回のコレクションに関してはあの空間に“背景”が必要だった。何もない空間だからこそ意味のあるものが必要だったんです。あの空間でインストみたいなものを流しても迫力にかけるというかテンションにかけるというか。
そもそも今回はteam meの曲があったから今回のような演出になったのかもしれません。
違う曲だったら違う演出になっていたのかも、、、?
entの時はコレクションの為に作ってもらったのですがテーマだけ伝えて出来てきたのが「9646」だったんです。entはストレイテナーとは違う。同じ人が作ってるのに違う。そういう曲を作る人のああいう曲が凄く好き。どっちかだけじゃ駄目なんじゃないかって!!

entのアルバムに(Entish)ショーの曲が収録されたのは凄く嬉しかったですね。

―元々は衣装家になりたかったんですよね。以前インタビューした時は衣装やウェディング等もやったりしていると聞きましたが最近もやられているんですか

最近はそういったものはほとんどやっていません。
以前は映画を見て衣装凄いねって思いたかったというか。
そう思える事がかっこいい!!っとでも言うのか、、、でも今見てもそう思うことは無くなってしまった。
衣裳に興味が無くなってしまったのではなくファッションと真剣に向き合う覚悟ができたのかもしれません。

―そう思ったのはいつ頃からなんですか

いつからなんだろう。

―前回のインタビューではまだファッションショーすらやってなかったですね

前回のインタビューは丁度10S/Sの『東京』のコレクションの時でしたよね。
『東京』のコレクションが自分の中では最低のコレクションでした。言いたいことは凄く好きだったんですけどそれを服としてしっかりと落とし込むことが出来なかった。
毎シーズン自己完結しているのでどちらかといえば燃え尽き形で、コレクションを作って悔しいと思うことはあまりないんです。でも東京と今回のコレクションは凄く悔しかった。

―今回はなぜそんなに悔しいという想いがあったんですか

今回に関して言うと服ではなくブランドの先を見だしたということに関係しています。最近ではセールス的にも卸先でもSiseの服はちゃんと売れている、それに満足していました。
でもやっぱりランウェイという方法を取っている以上集客出来なければ意味がないと思いますし、そこに来てくれる人達の熱気ももっと必要でどっちかだけではダメだと思う。

―正直そういうことにあまり関心が無いと思っていました

今まではありませんでした。でも変わってきたんです。そう思った時に凄く悔しかった。
自分に足りないものが嫌というぐらい見えたというか。
まだまだだなって。

―ということは次回もランウェイの形式を取るのでしょうか

まだ未定です。

―Siseにとってファッションショーをやる意味ってそれほど見当たらないのですが、ご自身ではその点についてどう感じていますか

正直無いと思います。やってもやらなくても何も変わらないですし、ランウェイの形を求められてもいないと思います。それでもやっていたのはさっき少しふれたように別にいいや!!って思ってました。
でも、そうは思えなくなった。

―そう思うことによって見せ方やコレクションがどう変わってくるのでしょうか

まだわかりませんがきっと次も何かが変わるような気がします。まだ作り始めていないので具体的にどう変わるかはわからないんですけど今は明らかに過去のコレクションから一線を置きたくなってきている。特に“少年性”を強く意識した『トビラ』の頃のコレクションとか。

―他のブランドのショーを見ている姿をよく見かけますがそういう時ってどういう目線で見ているんですか。デザイナー目線で服を見ているんですか

勉強になります。自分に足りないものを気付かせてもらえますし。
でもデザイナー目線でショーを見ることはありません。服と言うよりはコンセプトがあって何を思い服にし選出、今回のショーに至ったのかという過程を勝手に想像するのが好きなんです。それには会場に行ってその場の空気が必要不可欠だと思います。それは決して写真では分からない。それに只、単純にショーの雰囲気が好きです。それも始まってからより始まる前の方が。

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