Interview

Sise 2/2

“今自分の着たい物”そうじゃないといつか見失うと思うんです。なので感覚は凄く大事にしています。じゃないと何がしたかったのかわからなくなってくる

→Sise 1/2

―Siseと言えばブランドコンセプトに“少年性”を掲げていますがそこを崩すことはないんですか

言ってよいのかわかりませんがセールスの方からはコンセプトから“少年性”という言葉をもう外しても良いのではないかと言われています。

―自分自身でもそれは外してもいいと思うんですか

わざわざ言葉にして伝えなくてもいいんじゃないかな?!っとは思ってきています。

―モデル選びを見ても伝わってきますしね

そうですね。ナイーブな感じのモデル、少年性を体現するモデルを選んでいますしね。

Sise 2012 S/S Collection “sensation – 夏の感触”

―モデル選びの拘りを教えてくれますか

勿論物凄く拘っているんですけど日本に来ている絶対数が限られていますので今回のモデルに関しても納得がいっていないモデルもいます。まずはサイズが合う事が最低条件。サンプルをモデルサイズで作ってないので。
(シーズン毎ではなく)今は一定して同じイメージで選びたいと思っています。今回ショーに出てくれたヨハンという金髪のモデルは以前もオファーしていたんですけどスケジュールが合わなくて出れなかった。
以前、お願いしたモデルの中で今回も!!っと思う子はたくさんいるんですけど全然いないんです。

―毎回日本に来るモデルが同じであれば同じモデルになるのでしょうか

結局テーマとかも考えてその時によって少しは変わってくると思いますがそれほど多くは変わらないと思います。

―以前は日本人モデルしか使っていませんでしたが今はその逆で日本人モデルを使っていませんね。それはなぜでしょうか

正直わかりません。でもその頃のコレクションって凄くプライベートなコレクションだった気がするんです。廣川と二人で「いいね」って言ってコレクションを作ってどこか完結させてた。セールスもたかが知れていたし、遊んでいたとまでは言わないけどあの頃はただただ楽しかった。でもそれを経て今はその頃のコレクションとは一線を置きたくなっています。

―廣川君が抜けて1人になって変わったことって何ですか。以前はデザイナーとして2人の名前が書かれていましたが元々デザインしていたのは松井君だけですよね。デザイン以外の雑務とかも含めてやらなければいけないことが増えたとは思うんですけど

廣川がいた頃からデザインは全て僕がやっていたのですが、廣川にある程度委ねている部分もありました。例えばファスナーとか、ボタン一つにしても興味無い部分は「選んでいいよ」とかってやっていましたし、2人で話し合ったりもしていました。でも今は彼が抜けて委ねる人がいないので、否が応にも全て自分でやらなければいけない。そういう意味ではコレクションがもっと自分のものになったと思います。

―“自分達”のコレクションから“自分”のコレクションになったと

そうだと思います。

―今ってパターンはどうしているんですか

パンツは全部自分でパターンをひいているんですけどコートなどのアウターは信頼している方に外注で頼んでいます。ですので着心地も今は凄く意識しています。パタンナーが変わって、見え方とサイズ感の調和を凄く考えてディスカッションしながら作っています。ゆったり着れるというか、楽に着れるというか。

―初期の頃と比べジャケットなどアウターのシルエットも大分緩くなって来ていると思いますがその部分って意識して変えているんですか

完全に気分です、“今着たい物”を忠実に作っているので。スタート当時もその時の“今着たい物”があのサイズ感だったんだと思います。
今の自分が着たい物をちょっとだけ早く発表する。今着たい物を作って発表し、半年後デリバリーの時にそういうテンションになってもらうのが一番の理想。 “今自分の着たい物”そうじゃないといつか見失うと思うんです。なので感覚は凄く大事にしています。じゃないと何がしたかったのかわからなくなってくるというか。
ブランドがもっともっと大きくなっていけばまた別の話しだとは思いますが、、、

―ブランドが始めてから5年経ちました。年齢を重ねたことによって精神的に何か変わった部分ってあると思いますか

物凄くあると思います。無意識なんですけどね。
ブランドで言えばああしたい、こうしたいというスタイルは変わってないんですけどブランドのこれからを考えるようになった。以前はもう少し刹那的だったように思います。「次出来なくてもいいや」とか、「なくなってもいいや」そういう少し無責任とも思える考え方だったんです。

―そういう考えになったのって自分の仕事が好きになってきたからというのも関係しているのでしょうか

好きになってきたというか、、責任感が出てきましたね。お遊びでやっていちゃいけないって。

―今でこそメンズブランドですが最初はユニセックスブランドとしてやっていましたよね

今は完全にメンズブランドですね。“ユニセックス”って言葉を使って縛ることで結局ユニセックスじゃないんじゃないか?!って。男性でも女性でも袖を通してみて着たい!欲しい!って思ってくれたらうれしい。現に今でも女性の方も好んで買ってくれています。今回のコレクションは特に女性にも好評でした。

―今でも文章からコレクション作りを始めているのでしょうか

それは変わっていませんが最近はその文章を公に発表はしていません。シーズンノートみたいなものに書きとめています。
言葉は常に探していますね。

―“ミニマム”という言葉はSiseを形容する上で“少年性”と同じくらい出てくると思いますがそのスタイルって変わることはないのでしょうか

僕自身、Siseは実際に洋服を見るとみんなが言うほどミニマムではないと思うんです。ショーについて「ミニマムすぎる」という表現をされたこともありましたが僕にはその言葉の意味自体がわかりません。今の規模で少しでもショーを意識したミニマムじゃないコレクションを作った時の事を考えたら怖いです。なので、ショーには向いてない!!っという事を自覚した上でそれでもショー形式で発表したい!!っと思った時にはこれからもしますし、そうじゃない時は別の方法で発表します。
勿論バックアップがあり、潤沢な資金がありショーピースとして作れるのであればそういうものも作ってみたい。コレクションピースを作りたいとは思わないけど例えば色のヴァリエーションを出せたり、そういうことが出来れば同じミニマムでも感じ方は変わってくるかもしれない。
でもそれが出来ないのであれば自分が好きなことをやるのがデザイナーとして真摯に向き合っていることだと思うんです。

―過去のコレクションって振り返るんですか

あまり振り返ったりしなくなりました。

―以前はHPがあったのですが今は閉じられています。新しいHPは作らないのですか

作りたいとは思っています。でもあまりに前のHPのクオリティが高かったので中途半端なものは作りたくない。コレクションをただ単に貼り付けるのは嫌ですし、やるのであればHP上で流れる音楽を作ってもらいたいと密かに思ってる人がいるんです。

―Siseの今後のビジョンを教えてください

一言でいうと「ブランドにする」。
“ブランド”にしていかなきゃいけない責任が生まれてきたんだと思います。
ブランドとしてちゃんともっていきたい場所が見えたというか。
今いる場所で満足してる場合じゃない!!
そう心から思います。

Interview & Text:Masaki Takida, Tomoka Shimogata

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