Interview

DROP 前篇


今や社会現象ともいえるストリートスナップ。その中心を担うストリートスナップサイトDROPの代表、そしてLASSIE PAPERの編集長でもある横田大介氏に様々な話を聞いてきた。

―バックグラウンドを教えてください

早稲田大学商学部に行ってたんですけど別に商学部に行きたくて行ってたわけじゃなくてなんとなく受けた中で受かったから行きました。映画とか音楽とかに興味があって中南米研究会というところに所属して、ダンスホールじゃなくてルーツなんですけどジャンベたたいたり打楽器をたたいたりとかラスタ系のカルチャーが好きで演奏してたんです。デザインも好きで自分自身もちょっとやるんですけどタイポグラフィーも好きだし、エディトリアルデザインも好きだしファッション誌でもグラフィックが美しかったり格好良い物が好きで見たりするんです。だからあまりファッションの今期のコレクションがどうでというものよりかは雑誌のデザインとか凄く好きで。音楽はルーツだったりジャズだったりボサノバだったりそういうのを聞いていてロックとかよりは民族系で邦楽でも インディーズが好きです。

―いわゆる表面的にファッションに影響を与えているようなメジャーなカルチャーを好んで取り入れたわけではないんですね

そうですね。もともとスナップのサイトを始めたころも何もファッションの知識がなくて。高校が私服だったからファッションが少し好きだっただけなんですよね。

―DROPを始めようと思ったのはなぜですか

やっぱりファッション好きというのはあってカルチャー全般が好きだったからその中でファッションも好きだったし。その頃ネットの新規でベンチャーを立ち上げる会社にインターンで働いていてそこでビジネスプランを考えていて。自分の興味のあるところで考えたいなってことでファッションだったりカルチャーだったりで考えていたんです。たまたまファッションサイトを発見してファッションスナップを配信しているサイトがあるんだってことで色々検索キーワードかけて調べたけど全部つまらなくて格好悪いしそんなもんなのかなと思ったりもしたんです。格好良いサイトで写真もこだわっているサイトというのはなくて日常レベルで楽しめるサイトがないから作っちゃおうと思ってそれで作り始めて。最初は全然ダサいんですけどどんどん洗練されていくじゃないですか。今見ると恥ずかしいんですけどスナップもクオリティは低いし。とりあえず「無いから作ろう」という発想からスタートしました。

―始めた当初とは全然違いますか

全然違いますね。僕がTuneとかFruitsとかちゃんと見たことがなくて、でもだんだんそういう感じになっていったんですよね。厳密に言うと僕たちがやっているのはTune, Fruitsとはまた違うものだと思うんですけど。

―でも見てる人からすれば同じように見えるかもしれないですね

そうですね。同じように見えると思います。でもDropはなるべくモードもボロボロしているのもパーティーボーイもミックスさせちゃって本当にリアルなものを写したいなって思っています。だからといってありきたりなものを写すのもメディアとしてあまり意味無いのかなと思っているのでどうせ発信するのであればアイデア貰えるようなファッションの方が見ていて面白いと思うので。

―ドロップがスナップをある意味メインストリームにしたことで逆にマイナスな部分も出て来たと思うんです。スナップが当たり前になり過ぎたというか、身近になりすぎたというか・・・・

それはありますね。いい意味でも悪い意味でも。今は(スナップサイトが)凄い氾濫しているからちゃんとやってるところや、ちゃんとこだわってるところ、良いものを発信しているところが残っていくと思います。でも果たしてそれを日本の読者が見る目があるかといったら服飾学生や大学生、高校生って見る目を持ってる人というのはそこまでいないと思うんですよ。色んなスナップサイトをみんな雑食で見る感じでこのスナップサイトはこだわってるから見るという人は実はあまりいなくて。発信しちゃったもんがちみたいなところがあってそれが正当に評価されていないというのが日本の現状だと思うし。上の高い知識がある層、ファッションに精通している層ではこのサイトは「ちゃんと良いものを捉えているね」というのを見てくれていると思うけど、大多数に関してはそういうのはまだ見る目というのはないと思います。

―自分で見てここのスナップサイトは面白いと思うものはありますか

実は(良いと思うものが)なくて、好みの問題というか僕自身があんまりファッションで生きてきた人間でないしどちらかというと音楽だったり映画だったりカルチャー少年でStudioVoiceとか読んでる少年だったのでFashion Newsとかも読んでないですし。だから純粋に「格好良いファッションでしょ!」と言われるものよりかはバックグラウンドを感じさせるようなファッションが好きで。だからDROPの写真も色んな人を載せてパーティーボーイも載せるしモードっぽい人も載せるんだけどSpankみたいなフェアリーな感じの子やちゃんとバックグラウンドがはっきりしてそうな子が好きでやっています。そもそも僕自身が満足するものというのはあまりなくて、僕が面白いと思えるものを単純に作っています。

―自分自身でも写真は撮っているんですか

僕も撮っていますね。ずっと自分が撮っていて最近は雑誌を作っていた関係でそっちの方に自分が力を注いじゃったんですけど。もう一人凄い頑張ってくれている子がいて彼がいま僕の代わりに撮ってくれてほぼ二人でやっているんですけどかなりイメージの共有が出来ているのでそこは信頼していますね。

―掲載する写真をセレクトしているのは誰がしているんですか

昔は僕がやっていて最近はその彼がやっているんです半年くらい前から。

―写真を撮る人は他にもいますよね

彼プラス2人います。ただ他の人は時間がある時に撮るという形なので量的にはそんなに多くないですね。

―毎日5枚アップされているのは正直凄いと思います

そうですね。(スナップを撮るのは)毎日に近いくらい撮っています。

2年半くらい前にDROPが始まったんですけどその頃とか最初は1週間に1度更新できる時にいっぱいする感じでウェブの技術、プログラミングも含め体制が整っていなかったので時間がかかったんです。(その頃は)日本であまり早く更新するみたいな習慣ってなかったじゃないですか。ブログの人とかは毎日更新するんだろうけどHPの人は毎日更新するとかあり得ないし、今他のHPが毎日更新するようになったのは確実に自分たちが5枚更新するスタンスをずっとやっててそしたら読者がついてきたのでその影響はあると思うんですよ。

―DROPの影響は確実にあると思いますね

DROPが盛り上がってきた瞬間に他のサイトも更新頻度が増えてきて全体的な底上げ見たいな部分で影響が出たんじゃないのかなと思います。というのも凄いDROPと似たものが多いですし、例えば全身の写真があってアップの写真があるという写真も多くて、そもそもそれは(DROPの)真似しないと出てこない 発想なので。

―自分達も模倣という部分では他のサイト見て感じることはあります。でも必ずしもそれが悪いとは言い切れないと思うんですよ。そこがきっかけになって良い物が生まれたらそれでいいと思うし

でも結局DROPもそうなんですけど似たような物を作ってmixiで宣伝するのは嫌だったんですよ。今は宣伝してないんですけど一年前くらいは宣伝してたんですよ。なんで(嫌)かというとDROPが作り上げたものというのがあってそれに真似したものがmixiで宣伝するわけじゃないですか。せっかく自分たちが最初にオリジナルを持っていたのにそれを抜かれて模倣したものが最初に知られるという現状があんまり良く思わなかったというか、結局最初に知られなかったら模倣したように思われるしそこは嫌だったんだけど割り切って宣伝しようと思って宣伝してたんです。だけど今はmixiの人数(約16000人)もそう ですけど最初にDROPを知って他のスナップサイトを知ってという人が増えてきたからDROPのオリジナリティは評価されてると思うんですけど、結局先に知られないと意味がないというか。例えばStyle from Tokyoのシトウレイさんは昔からスナップをやっているのを知ってるからDROPを模倣しているとは一切思わないしシトウさんは本当に良い物を捉えているんだろうなというのは思いますし。

今DROPが取り扱っているところもそうだけど普通の状態からしたらかなりアンダーグラウンドなところを攻めているけどでも服飾学生とかがCandyとかも含めてそういうところに興味を持ち始めて。でも実際ファッションに興味がある人ってスナップ見るのかなって思います。勿論カルチャーの一部としては見るだろうけど本当に興味がある人ってもっと自分の創作活動に一生懸命な気がするというか。見てる暇とかないのかなって。

―そうですね。本当にファッションを好きな人ってあまりスナップは見ないかもしれないですね

多分本当にファッション好きな人って読み物を読む気がするんですよね。

―自分自身も他のサイトでスナップを見るかと言われたらそんなには見ないし・・

僕もDROPでお腹一杯くらいスナップを見ているからまた改めて他のスナップサイトでスナップを見ようかとなったらそういう気にはなれないというか。

―写真を撮る基準としてはどこを見ていますか

普通にありふれた服装を撮るサイトはきっとあると思うから、僕達がやるのはどちらかといえば普通ではあまりしないような格好で尚且つインスピレーションもらえるようなコーディネートだったり。でもそういう人って大体決まってきちゃっていて・・・。だからDROPでも同じ人が何回も出てくるのは考えなきゃいけないなとは思っているんですけど。

―結局撮りたいと思える人って決まってきちゃうんですよね

そうですね。出来る人って本当に少ないから。だからと言って妥協をして普通の子を撮ったとしてそれ読者が喜ぶかといったらそうじゃなくて。どっちにしろ読者って文句を言うんですよ同じ人が出てるとか、ダサい奴が出てるとか。毎日5枚更新する中で妥協しなきゃいけない部分というのは勿論出てくるので「ちょっとこの人出すには普通すぎるな」とか反省はあるんですけど。

―5枚載せる上でバランスとかも考えているんですか

出来れば5枚が5枚本当に格好良い人をアップしたいんですけどそれは出来る時もあるし、出来ない時もあるので日によってですね。

―自分達もそれは凄く理解できて良い人を撮ってはいるんですけどその中でもやっぱり個人的な優劣は出てきてしまうんですよね。だからバランスをとるのは凄く難しいなって思いますね。DROPは着てるブランドを全て掲載されていますがそれはなぜですか

それは純粋にみんな知りたいのかなって。個人的には面倒臭いんですけどきっと知りたいのかなって。

―僕個人的にはそこは凄く日本的な考えだなと思っていて、DROPがやってるからというのもあるけど他のサイトもそれに続けとばかりにクレジットを掲載していますよね。逆に海外のサイトに目を向けるとスナップサイトでもクレジットは全然載せてないですよね

結局必要ない人にとってはそこは見ないと思うんですよもともと。ビジュアル見て発想力ある人というのはクレジットなんか見ないで自分でそれなりの着こなしをしちゃうけど、ブランドを追っかけている子たちはこのブランドを着ればこういう風におしゃれになるんだろうなって発想になるのだろうなと思います。

結局他のサイトがぱくってるというかそれが当たり前になっているんですよね。今日本のスナップサイトをやっている人たちが海外の雑誌にちゃんと目を通していた り、色んな雑誌を見て知識をちゃんと持ってるかといったら持ってないと思うし、きっと日本のそういうカタログ誌を読んで作っている人が多いと思うのでそれはしょうがないのかなと思いますね。自分は(他の)日本のスナップサイトから何かを得ようとは思っていないからもっと違うところからアイデアだったり格好良さだったりを見てそれをうまくDROPに生かしたいなって思ってるいます。まだそれは全然DROPには生かせてなくて自分のやりたいことの30%, 40%しか出来ていないんですが。

続く

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